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ロリの暗黒卿

 父と名乗った男と一緒に、真っ暗な通路を歩いている。シャトルは、五分前に要塞内に到着し、会わせたいモノがあると言われ、ずっと歩きっぱなしだ。


 ちなみに、流石に下着姿で歩き回る訳にもいかないので、病院の入院服があてがわれた。聞けば、私達が入院していた病院は彼らの管轄下にあるのだという。


 会わせたいモノがあるなんて言われて、気になって聞いてみたけど、「会えば分かる」それだけで、後は何も言わなかった。


 ちなみに、橙子ちゃんとはシャトルまでは一緒だったけど、到着してからD3って言うメイド幼女に引き取られた。聞けば、彼女もL2ちゃんと同じタイプの家庭用アンドロイドらしい。


 こんな暗闇の中、突如歩いてきた父親(到底認める気にはなれないけど)と二人っきりってだけで、気が滅入る事この上ない。だから、とにかく今は仮面の男、人類を滅ぼしたって言うアース相手として、話しかけよう。


「一つ、聞きたい事があるんだけどさ」

「……なんだ」

「シェリーちゃんの話じゃ、当時の人類は衰退してたんだろうけど、滅ぼしたって事は、貴方がとどめを刺したんでしょ」

「そうだ。この時代に帰った私は、元いた反乱軍に帰らず、地球唯一の国家となった帝国に潜りこんだ。そこで、二人の同士。グノーディアとシグナムと共に、上層部の屑共を抹殺。その後、残った反乱軍を鎮圧したのだ」


 アースは、誇る訳でも無く、後悔する訳でも無く、淡々と過去を語る。


 だから、恐ろしい。人類滅亡という、一人の人間の犯す罪の中で、最も重い罪を背負っている筈なのに、全く迷いが無い。というか、まるで、虫でも踏みつぶしたみたいに、気にも留めてない。


「それにな、娘よ。滅ぼしたと言っても、絶滅させたという訳では無い。ただ、追い出しただけだ。この星からな」

「追い、出した? でも、ど、どこに?」


 アースは言った。地球から、人類を追い出したと。で、でもさ。地球を追われて、人は生きられるんだろうか。他に、大気のある星でも見つけられれば、いいんだろうけど。


 アースは、呆然としている私を見て、ため息をつくなり、答えた。


「火星だ。人類は自らの業で、母なる大地を穢したというのに、責任も取らずに別の星を自らの都合のいい様に作り変えて、第二の母星とする腹積もりだったのだ。だから、望み通りにしてやったよ」


 火星……火星⁉ って事は、この時代の人類って、火星人なの⁉


「文明を忘れ、自らが地球人である事すら忘れ、食物を生産し続けている。農奴であることと共に、真の支配者すら知らずにな。どうだ。コロニーの食材は、美味かっただろう」

「⁉」


 何も、言えなくなる。理由は知らないが、彼の人間嫌いは尋常じゃあない。


「だから、幼女だけの世界を作ったんだね。人が嫌いだから、信用できないから。妹や母さんぐらいしか、信じれなかったから」

「……聞いていたのか」

「まぁね。私の耳は、幼女の悲鳴を聞くための、特別製なのよ」


 だから、彼が聞いてた穂村ちゃんとD3の会話も、バッチリと聞こえていた。アースって奴の素上も、大まかな性格も、大体わかっている。

 それを踏まえて、堂々と言ってやった。この、父を名乗る救いようのない悪人に。


「アンタが、愚痴っぽくて、他人の好意に無関心で、女の敵って事がね! さぁ、とっとと穂村ちゃんとL2ちゃん返してもらうよ! そんでもって、ティスちゃんやシェリーちゃんに二度と関わらないと、約束して貰うんだからね!」

「女の敵、か。……随分と、嫌われたものだな。ま、当然か」

「認めんなぁ!」


 ああ、腹立つ! コイツ、自覚あるよ! あって、気にも留めてないタイプだよ!


「そろそろだ。……さぁ、着いたぞ。私だ、開けてもらおうか」


 そう言って、廊下の突き当りにある扉に着くと、自動で扉が開いた。そのまま、中に入っていく。


 中は、一言で言えば奇妙な部屋だった。


 面積は、広い、途方も無く。中で、野球とか出来そうなぐらい。ドーム二、三個分はありそうだ。

 壁や天井は、ガラス張りで覆われ、外の宇宙が丸見えだ。正面には、地球が悠然と輝いている。


 だが、最も奇妙なのは、そんな広い部屋なのに、ほとんど何もないという事だ。あるとすれば、中央の台座に、とてつもなく大きな宝石が輝いているという事ぐらいだ。


 その宝石に向けて、歩いていく。傍に近づいた瞬間、宝石が喋りだした。


「貴方が、アースの娘さん? ……ふーん。彼の娘にしちゃ、中々可愛い顔してるじゃない。あ、目元とかソックリね」

「グノーディアはともかく、シグナムにすら勝ったんでしょ。初めてなのに、凄いなぁ。シグナムは、神武戦争の頃から、世界で五本の指に入る使い手だったのに」

「故に、危険過ぎると思いますヨ。仲間に入れるなど、もっての他デス!」


 複数の声が、一気になり響く。私の外見を評価したり、褒めたり警戒したり、誰もいないはずなのに、何人もの人に話しかけられているみたいだ。


「話しかける時は、人格を統合しろと、いつも言っているだろうが」

「ああ、済まんな。なんせ、ココで他人と話すのは数百年ぶりなのだ。皆、面白がっている」


 アースが諫めると、他の声が聞こえなくなって、威厳のある老人の様な声だけが、聞こえるようになった。


「説明しよう。人類が生み出した最大の神武にして、アールヴを作り出した、神武ユグドラシルだ。複数の人格を持ち、地球の全てを取り仕切っていると言っても過言でない存在でな。主人格は特に、お前に会いたがっていたぞ」


 アースが説明してくれたおかげで、ようやく会わせたいモノの意味が分かった。どうやら、この神武そのものが生きているのだ。まぁ、AIが当たり前の世界なんだし、感情持ちの神武があってもおかしくも無いのだが。


 私に会いたがっていたというユグドラシルの主人格は、挨拶もせずに、とんでもないことを言ってのけた。


「ソレが、お前の娘であり、後継者か」

「左様。私もこの身体であるが、不老不死とはいかぬのでな。後を継ぐ者が必要だ」

「ちょ、ちょっと! 何勝手に、話進めてんのよ!」


 ふざけんじゃないわよ!なんで私が、後を継がなきゃなんないのよ! 親でもなんでもないアンタのさぁ!



 不満タラタラの顔とか態度を見たのだろうか、ユグドラシルがアースに苦言を申した。

「にしては、随分と気が進んでおらぬな。それに、少々口ウルサイ。礼儀もなっておらんな。本当に、彼女でいいのか?」


 おうおう、言ってやれユグドラシル! 言い方はむかつくけど、コイツに文句、どんどん言っちゃって!


 だが、アースは平然と言い放つ。


「心配ない。実力も、申し分ないし、なんせ彼女はロリコンだ。それも、我らと互角か、それ以上の、な」

「ほぉう……ならば、問題無いな」

「納得すんなぁ!」


 いや、ふざけんじゃあないわよ! ロリコンこじらせて人類滅ぼしたバカと同類にされただけでも、イラッとくるのに、それであっさり納得するなんて、どういう事だよ!


 さては、コイツもロリコンだな。絶対そうだ。じゃなきゃ、永遠の幼女なんて作る訳が無い。


 そんな私をほっといて、二人? でなにやら、話し込んでいた。


「ロリコンであるのは分かったのだが、お前の後を継げる実力があるのかは、疑問だな」

「何故、そう思うのだ?」

「決まっている。お前が、限りなく人類の高みに立った神武使いだからだ。シグナムなど、比べるまでもない程にな」

「昔の話だ。神武は、人間固有の力によって、エネルギーを引き出す。機械と融合したこの姿では、アナベルにはもう敵わぬだろうな」

「そうか? 限りなく、我に近い作りをしてやったのだがな。それでも不満と申すなら、我が与えたその体、今ここで試してみるがいい」

「……いいだろう。それに、私は不器用でな。拳を交えなければ、娘とも分かり合えそうにない」

「だろうな。幾人もの人間を見てきたが、お前程不器用な奴を私は知らない」


 ん? なんだこの話の流れは。まるで今から、アースが戦うみたいな。


 私の予想通り、アースが何かブレスレットの様なモノを投げつけてきた。その形状は、まさしく……。


「雷桜⁉」

「ああ。元々半壊していた上、シグナム戦で随分無茶な扱いをしていたからな。メンテナンスさせて貰ったよ。さぁ、アナベルの後継者よ。雷桜を身に纏い、戦え」


 嘘をついているとも思えない。雷桜は、骨董品同然だった前とは違い、まるで新品同然に光り輝いていた。しかも、身に付けて感じるエネルギーが、前より強くなっている気がする。


 そんなモノを私に渡したって事は、よっぽど自信があるのか、唯のバカなのかは知らないけどさ。


「雷桜、アクセラレーションッ!」


 全力で、ぶっ飛ばしてやるよ。ボッコボコにね。そんでもって、引きずってでもママの墓に連れてきて、何度でも何度でも謝らせてやるんだから。そんでもって、16年分の小遣いぶんどってやる!


「やはり、よく似ている。フフッ、アナベルが帰って来たみたいだな」


 私の変身を見たアースは、誰か(多分雷桜の前の装者で、コイツの妹)を思い出したんだろう。懐かしそうな、どこか寂しげな声で呟いた。


「だったら、妹の分まで説教あげるから、覚悟しなさい!」


 拳を構え、戦闘態勢に入る。シグナムの比じゃないって事は、アースは私が戦ってきた中で、間違いなく最強。……これももう何度目か分かんないけど、最強だ。最強記録、随時更新なんて、ハードなタイムスリップだなぁ、ははは。


 だがアースは、緊張している私とは対照的に、悠々と雷桜について語り始めた。


「怜奈、我が娘よ。お前の纏う雷桜が、何故神武の中でとびぬけているのか分かるか。理由はな、限りなく人体の構造を無視した量のゼストリウムが、四肢に埋め込まれているからなのだよ。常人が身に付ければ莫大なエネルギーを制御できず、オーバーヒートを起こして自滅するだろうな。私の娘だから、可能なのだ」

「それがどうした! 恩でも、売ろうっての!」

「違うな。故に素人のお前では、私には敵わぬという事だよ!」


 次の瞬間、アースの体が光り輝いた。燃え盛る炎の様な赤の光が、彼の体、胸の部分からほとばしる。


 そして、叫んだ。L2ちゃんが教えてくれたのと同じ、あのキーワードを。


「鳳凰、アクセラレーションッ!」

800PV達成しました。読んでくださった皆様のおかげです。誠に、ありがとうございました。

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