ロリの病院 ②
「いやぁ、美味い! 特にこのハンバーグ! 最っ高だよ!」
「それは良かったです。わざわざ、農業コロニーから取り寄せた、天然牛肉100%ですからね。おかわり、沢山ありますよ」
「あ、じゃあお願いします。気絶してたとはいえ、三日ぶりのご飯で、お腹ペコペコで」
「だからって、どんだけ食べるのよ……もう五人前は食べてるわよ。人間って、こんなに食べるもんなの……」
「いや、私達よりは多いですけど、怜奈さんは特別だと思います」
説教の後、私達は皆で一緒にご飯を食べる事になった。ナースさんも、ちょうどお昼休みだったので、彼女も一緒だ。
「いやぁ、凄いですね、ココの食堂。ご飯も美味しいし、内装もまるでレストランみたいですよ」
「ええ。ウチの組織は、表向きは病院も兼ねていますからね。患者にとっては、食べる事が最大の楽しみですから。首領……ここじゃあ院長の方針で、料理には人一倍力を入れているんですよ」
どうやら、料理はここの自慢みたいだ。ナースさん、料理の話をしたら、見るからに上機嫌になったし。怒られた時は、嫌われちゃったかと思ったけど、機嫌直してくれて良かったよ。
「いやぁ、美味しいねティスちゃん。ここ最近合成タンパクとか、人工野菜ばかりで、天然ものなんて、半年ぶりだよ」
「……そうね。コロニーの食材なんて、もうずっと食べてなかったもんね」
二人も、ここのご飯に大満足みたいだ。シェリーちゃんは元気を取り戻したし、ティスちゃんも機嫌直してくれたみたいだし、良かったよ。
ま、ご飯を頬一杯頬張るシェリーーちゃんでニヤニヤしてたら、すっごい表情で睨まれたけどさ。彼女は、まだまだ心の壁が厚いみたいだなぁ。
「そういやさ、農業コロニーって何の事? まさか、スペースコロニーって訳じゃあ、無いよね。いくらなんでも、さ」
とりあえず、簡単なお話から。ティスちゃんまだまだ気難しいけど、私は諦めないよ。絶対仲良くなってみせるから。
「そのまさかよ。この時代じゃあ、先の戦争で自然環境が結構壊れちゃってるからね。世界規模で、地球の自然を元に戻そうとしているの。だから、環境に考慮して、食べ物は工場での人工物か、コロニーの農場で作るしかないのよ。そんな訳でコロニー産の食材は、高級食材」
な、なんとまぁ。流石は未来世界。スペースコロニーもバッチリですかぁ、ははは。
「ほぇ~なんか、すっごいねぇ。宇宙で作るご飯なんて、想像もつかないよ」
「いや、むしろアンタの方が詳しいと思うわよ。あそこって、無添加無農薬、遺伝子組み換え一切なしの、昔ながらの製法で生産しているって聞くしさ」
昔ながらの製法……。って事は、実際に土を耕したり、牧場で家畜を飼ってたりするのだろうか。
「聞くって、実際に行った事は無いの?」
「……どういう訳か、やたら情報統制がキツイのよ、あそこ。コロニーの情報は、シェリーのハッキングでも入り込めない所にあったみたいだし。場所すらひた隠しにしているから、いろんな噂があるのよ。遺伝子操作された生物がうようよいるとか、剣と魔法の世界だとか……そんな、馬鹿な噂がね」
ティスちゃんは呆れているけど、火のない所に煙は立たない。コロニーには、面白そうな謎がいっぱいありそうだ。剣と魔法の世界なんて、夢があって楽しそうじゃない。
「エルフ幼女は、皆の夢だよねぇ。ぜひ、行ってみたいなぁ」
「キモっ。なにまたニヤニヤしてんのよ」
これは手厳しい。いいじゃない、妄想したって。妄想は、ロリコンが生きるための、大切な力なんだよ。だって触れないし。
「触ったら、犯罪者扱いだし、コレはもう、ヒーローになるしかないじゃない」
「……なに訳わかんない事言ってんのよ。ま、いいわ。二人っきりで話があるから、ちょっと付き合ってもらうわよ」
「え……二人っきりって、もしかして、デート?」
「違うっ! アンタに、言っときたい事があるのよ!」
酷いなぁ。そんな、全力で否定しなくてもいいじゃない。
「アレ? だったらここで言っちゃえばいいじゃない。わざわざ――」
「ここじゃダメなの! いいから、ついてきなさい!」
「わ、わ、わ。まだ、食べ終えてないのに~」
「後でいいでしょ!」
未練たらしい私を引きずって、ティスちゃんに手を引っ張られる。手をつなぐなんて、本来はロマンチックなんだけどなぁ。物凄い力で腕を引っ張られているせいで、全然心がときめかないよ。
連れ出されたのは、誰もいない病院の裏庭だった。そこで、秘密のお話があるみたい。
でも、なんなんだろう。愛の告白って訳じゃあ無さそうだしさ。恨みを買った訳でも無いから、決闘するって雰囲気でも無い。
「それで、話ってなんなのさ。二人っきりって事は、シェリーちゃんには聞かせたくないんだろうけど」
「ええ、そうよ。こんなの、アンタ以外に言える訳無いじゃない」
「こんなの?」
ティスちゃんは、その後何度か恥ずかしがって、ためらってたけど、やがて意を決して告白した。
「私から、シェリーを取らないでっ!」
「え……?」
ティスちゃんは、目に涙を浮かべながら、告白した。シェリーちゃんを、取らないでと。
「ちょ、ちょっと待ってよ。取るって言っても、そもそもシェリーちゃん、まだそんなに私の事好きじゃあないんじゃ……」
「好きなのよ、アイツは! ここ最近、話をしてもアンタの事ばっかだし。さっきも、素敵だとか、カッコイイとかばっかだしさ! あまつさえ、泣きついちゃうし! そりゃあ、アンタには感謝してるけどさ。これとそれとは、話は別なのよ!」
え、そうなの? 知らない内に、シェリーちゃんフラグ立ってた?
「あの子のヒーローは私なのよ! この斬花をもらった時に、そう誓ったんだから! なのに、なにぃぃ」
え、もしかしてティスちゃん。私に嫉妬してるんじゃ……。
「結婚するって約束したんだから、と、取らないでよぉぉぉぉぉ!」
「わ、わわわ。泣かないでよぉ」
「う、うるさぁい。このバカ、変態。変態の癖にぃぃぃ」
あーあ、泣き出しちゃったよ。まぁ、気持ちは分からなくも無いけどさ。
そりゃあ、ずっと大好きな人に、他の人の話ばっかされたら、嫉妬しちゃうよね。
それもティスちゃん。幼馴染のシェリーちゃんの事、小さい時からずっと大好きだったみたいだし。
「ティスちゃん。その点なら大丈夫だと思うよ」
「な、なんでそう言い切れるのよ」
幼馴染を取られちゃうという事は、彼女にとっては、すっごい不安だろうけど、私には、そんなことありえないという確信があった。
「だって、何年も一緒だったんでしょ。それだけ、思い出もいっぱいあるよね。それだけ強い絆に、出会って三日の私が太刀打ち出来ると思う?」
「なわけないでしょ! 五歳の時、家に養子に来てから、何をするのも一緒だったんだから!」
「そうそう。だから、大丈夫だよ。それに、シェリーーちゃんだって、ティスちゃんの事大好きだと思うよ。私の話をするのは、単に物珍しいだけでしょ。この世界、人間なんて私ぐらいしか、いないんだしさ」
正直に言って、会って三日程度の私が、大切な幼馴染以上の存在になれるわけ無いんだけどね。多分ティスちゃんも頭では色々分かっているんだろうけど、それでも嫉妬が抑えられなかった。ま、恋ってのは理屈じゃあ無いからねぇ。こればっかりは、仕方が無い事だよ。
ま、私恋愛経験無いんだけどね。いいもん、仕方が無いもん。ロリコンの宿命、手を出したら、犯罪者だもん。だから、常に片思いを強いられるんだから、さ。
「……さっきから、なに世界の終わりみたいな顔してんのよ」
「あ、ゴメンゴメン。つい、自分を見つめ直してただけだよ」
「それであの表情って、アンタどんな内面してんのよ……」
おお、ティスちゃん特有の、その軽蔑の顔。いいねぇ、君みたいな幼女の侮蔑の視線、ゾクゾクするよ。
「こんな変態相手に、ティスちゃんが負けると思う?」
「私は、アイツのヒーローなのよ! アンタみたいな奴に、敗けてたまるもんですか!」
おお、ティスちゃん、いつもの調子が戻ったね、良かった良かった。
よし、これなら色々聞けそうだし、ついでにちょっと質問してみよう。
「それでさ、気になったんだけど、さっき養子って言ってたよね。って事は、ティスちゃん、シェリーちゃんのお姉ちゃんだったりするの?」
「ま、戸籍上はね。五歳の時に、アイツの両親が事故で死んじゃってさ。親友だったパパが養子として引き取ったのよ。いきなり同い年の妹ができるなんて言われて、変な感じだったの今でも覚えてるわ。だから、最初は中々打ち解けられなかったのよね」
まぁ、そうだろうねぇ。いきなり妹ですって言われても、中々納得できないだろうしさ。
「アイツもそうだったみたいで、一日中面識のあるパパとばっか遊んでたわ。それでさ、親が取られちゃうんじゃないかって子供心に嫉妬して、意地悪して怒られて。毎日、それの繰り返しよ。過去に戻れたら、説教してやりたいわね」
当人にとっても、あんまり思い出したくもない記憶なのか、ちょっと恥ずかしそう。
それに……今はあんなに仲いいのに、最初は随分と陰険な関係だったんだ。まぁ、当時五歳だし、子供の世界は親が全てだから、当然そうなっちゃうよね。
「ん……ちょっと待って、一日中? パパさん、まさか毎日家にいたの? 小説家か何か?」
「違うわよ、パパは軍人さん。前にも言ったけど、この世界にも一応は軍隊ってのがあんのよ。ま、敵とかいないし、誰も実戦経験無いから、ほとんど雇用対策みたいなもんなんだけどね」
ああ、なんか分かる気がするよ。M3君達も、実戦経験無かったせいで、エリートでもてんで弱かったしね。
「パパも、一度も実戦する事無く退役したわ。手柄といえば、どっかの船団の事故の時に、手腕を発揮して
被害を最小限に抑えた位。ま、それでもここじゃ英雄になれるんだけどね。それで、一気に昇進して少将になって、給料が上がったから32歳で退役。物心ついた時から、毎日家でぐーたらしてたわよ」
そりゃあ、お気楽な……ティスちゃんが呆れるのも、分かる気がするなぁ。そういや、L2ちゃんも、アールヴは40で定年って言ってたっけ。それだけでも速すぎるのに、さらに八年も早く合法ニート生活。年金の為に働く日本中のお父さんが聞いたら、怒りで発狂しそうだよ。
「そんで、パパは家に籠ってずっと歴史小説書いてた。元々、歴史好きだったみたいで、「軍隊なんて、働いて金をもらうだけの所だ。もう自分は一生分働いたんだ」って、よく言ってたわ。だから、シェリーも歴史に興味を持ったってわけ」
「あ、だからタイムマシン開発に、あんなに熱心だったんだね」
「そうよ。この時代は、過去の事を調べるのはタブーだから、あんまり資料が無いのよね。だからパパも……まぁ元々才能無かったんだろうけど、二流の歴史家だったわ。でも、アイツは違った。科学者として一流の才能を持ってたから、タイムマシンで過去に行こうとしてんのよ。歴史の真実を知るためにね」
ティスちゃん、ノリノリだ。ま、そりゃ大好きな人を自慢する時は、つい嬉しくなっちゃうよね。
それだけ、大切に思われてるんだろうなぁ。
「シェリーちゃん、幸せ者だね。いきなり家族になったのに、それだけ好きになってもらえるんだからだ」
「な、なによいきなり。そりゃあ、あの後色々あったけど、今では大好きよ。で、でもアイツがどう思ってるかなんて……」
「大好きだと思うよ。だって、私も同じだもん」
「……え?」




