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戦幼女ティア

 機械の棒の先端が開き、光の刃が展開する。目もくらむ様な輝きと、肌を焼くような熱量が、数メートル離れてても伝わって来る。間近にいる彼女には、どれだけの熱を感じているのだろうか。


 それでも顔色一つ変えず、武器を手に構えを取った。


「さぁ、誰から私の相手をしてくれるのかしら。なんなら、全部まとめてでもいいのよ」


 槍を自らの手足の如く振り回し、相手を挑発する。その表情には、余裕さえあった。


「おいおい、マジかよ。何で、アールヴが神武を使えるんだよ!」

「ま、まずいぞ、マイブラザー。俺達、実戦経験すら無いのに、神武相手なんて……!」

「それ以前に、着任してからここ十年。迷子の世話と、道案内ぐらいしかやる事無くて、犯人逮捕は初めてだもんね」


 対照的に、M3君達は見るからに狼狽えている。神武ってのが何なのか、サッパリ分かんないけど、この世界ではとてつもなく強力な武器だってのは、彼らの様子から伺える。


 それと、M3君達の緊張感の無さ。その訳も分かった。平和過ぎて、犯人と向き合うのはこれが初めてなんだろうね。


 なんだろう。彼らって、一応首都の警備部隊なんだけど、もんの凄く田舎の、犯罪なんてここ何年も起きてない、そんな地方の駐在員みたいだ。それだけ、この世界は、幼女達は平和なんだろうなぁ、ははは。


「……そう。やっぱり貴方達は、名前だけは立派な給料泥棒みたいね。だったら、今ここでスクラップにしてあげるから、覚悟しなさい!」


 慌てふためいているM3君達に、愛想を尽かしたティスちゃんが、槍を手に飛びかかった。


「ああ、やってやるよ! 経験は無くとも、俺達はマグナムガードなんだ!」

「精々、楽しませて貰うわよ! 私も、本気で振り回すのは初めてなんだからね!」


 ティスちゃんは前かがみの姿勢で、体重とスピードを乗せた突きをM1君の胸めがけて繰り出す。


「熱っ、それに、超痛ぇぇぇぇぇぇ!」


 彼は、左腕を犠牲に突きを受け止めた。光刃に貫かれた左腕が、高熱で溶解していく。


「それでも、それでもぉぉぉぉぉぉ!」


 痛みを我慢し、残った右手で彼女の頭を取り押さえようとする。


「遅いっ!」


 だが、ティスちゃんの方が一枚上手だったみたい。槍を持ち替え、突き刺した左腕を切り払い、胴に蹴りを入れて距離を取った。


 そして、十分な距離を確保した所で、一気に勝負を決めにかかる。


「せいっ!」


 ジャンプと同時に繰り出した横払いは、相手の胴体と頭部を切り離した。頭部を失った胴体は、ゆっくりと崩れ落ちてく。


「ガールの分際で、よくもブラザーを!」


 兄が倒されたのを見て憤るM2君が、ティスちゃんの後ろから手錠を手に飛びかかる。


「あらよっと」


 だが、後ろを取られた事など、彼女には何の問題でも無かった。後ろに振り向く力を乗せて、迫るM2君を袈裟切りに切り裂いたのだ。斜めに寸断されたM2君のボディが、火花を散らして爆散する。

 吹き飛ばされたM2君の頭部が、怯えるM3君の足元に転がった。


「に、兄さん! そんな、そんな……」

「心配しなくても大丈夫よ。アンタら、AIの詰まってる頭部さえ無事なら、体はいくらでも替えが利くんでしょ。一応、そこは傷つけない様にしたから。さっさと、兄さん回収して、帰んなさい」


 あ、そうなの。いくらなんでも、コレはちょっとやり過ぎだと思ってたけど、ティスちゃんなりの考えがあったのね。


「あ~あ、やっぱ俺達じゃあ、どだい無理だったみたいだね」

「フッ、構わんさ。今日勝てなくても、明日勝てばいい。俺達のAIは、自動学習式だからな。経験を積めば積むほど、強くなる仕様だ」


 あ、ホントに大丈夫だったみたいだ。頭だけになっても、二人とも結構元気っぽい。


「……僕はマグナムガードだ。僕はマグナムガードだ。僕は――」


 軽口を叩く兄とは対照的に、M3君は一人で何やらブツブツ呟いていた。なんだろう、もんの凄く、嫌な予感がする。


「M3? おいおい、どうしちゃったのよ、コレ?」

「う、うおぉぉぉぉぉぉぉ!」


 意を決した彼は、ティスちゃんを確保すべく、一気に飛びかかった。

 右腕を突き出し、取り押さえようとする。


「ほいっとな」


 だが、現実は非常。彼の右手は、ティスちゃんが軽々しく放った切り上げによって、あっさりと寸断されてしまった。衝撃で、鉄の体が後ろに吹き飛ぶ。


「ううっ。くそう、くそう……」

「次からは、ちゃんと相手を見定める事ね」


 そう言って、ティスちゃんが光刃を突き付け、とどめを刺そうとした。


「あまり、私の部下をいじめないで頂けますかねぇ、お嬢さん」

 機械的な、L2ちゃんでも、M1君達でもない声が響き渡る。


「何処か――キャアァァ⁉」

「ティスちゃん⁉」


 振り向いたティスちゃんは、眼前に迫るネットに包まれ、うずくまってしまった。


「心配せずとも、あくまで鎮圧用のネット弾です。網も柔らかい素材で出来ておりますので、怪我をする事もありませんよ」

「ぐ、グノーディア将軍⁉ なんでここに⁉」




明日は、ボス戦です。将軍戦は、一気に投稿する予定です。それでは、また。

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