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Mブラザーズ

 未知なる幼女の世界に圧倒されていると、インターフォンが鳴り、配達員の声が鳴り響いた。

 若い青年の声(って事はロボットだよね)が、聞こえてくる。


「宅配便? おかしい、そんなはずは無い。マスターが無駄な買い物ばかりするから、情報端末にロックをかけているはず。まさかマスター、また私に無断で……」

「ち、違うよ⁉ それに、タイムマシンの費用のせいで、無駄遣いなんてできやしないよ!」


 L2ちゃんに睨まれ、シェリーちゃんが慌てて否定する。


「シェリーの言う通りよ。どうやら、そんな生易しい連中じゃあ無いみたいね」


 モニターの映像を見たティスちゃんが、緊張した声で呟く。彼女の口ぶりからして、やはり宅配員じゃあ無いみたい。

「シェリー、今すぐ研究室行って、タイムマシンの全データーを吸い上げなさい。証拠は残さないようにね。それが終わったら、……突破するわよ」

「分かった。ついでに、こんな事もあろうかと用意してた、アレも持ってくるね」


 こんな事、アレ? なんだか、私の知らない所で話が進んでいくよ。

 あれよあれよという間に、準備を終えた二人が戻って来た。玄関前に立ち、何やらチャンスを伺っているみたいだ。


「スミマセーン。シェリーさん、いらっしゃらないのですかぁ?」


 宅配員? が、焦れた様に呟く。


「さて、そろそろね。……行くわよっ!」


 ティスちゃんが、玄関に駆けだし、ドアを勢いよく開けた。突然の来訪に驚く宅配員の隙を突いて、眼前に黄色いボールみたいなモノを投げつける。


「アンタら、目ぇ瞑ってなさい!」


 次の瞬間、ボールから閃光がほとばしった。どうやら、アレっていうのは閃光弾の事だったみたい。


「ぎゃぁぁぁぁぁ! 目が、目が痛ぇぇぇぇぇぇ!」


 私達は、言われた通りに目を瞑ってたから平気だったけど、眼前でもろに喰らった宅配員のロボットは、悶絶している。


「そっか、瞼、無いもんねぇ」

「そう。それに、この時代のAI持ちロボットは、限りなく人間に近い生体構造になっている。でも、細部まで完全に再現出来てはいないため、弱点まで中途半端に持ち合わせる事になる。閃光も、その一つ」

「オイルだけど涙まで流しちゃってるしね。ホントに、人間臭いなぁ」


 ってか、この人? どっかで見た事あるような気がするんだけど。


「ってか、何でココに治安維持局の連中が来るのよ!」

「それにあの模様は、エリートさんのマグナムガードだしね」


 治安維持局、マグナムガード。二人の会話で出て来たワードだけど、ついさっき、何処かで聞いたような……。


「思い出した。貴方、さっきのガ○ダムさんだよね!」

「そういう君は、今朝のお嬢さん! まさか、この連中の身内だったとは!」


 そうそう、ナンパしてきたM兄弟の長男、M1君だよ!

 それに、向こうも私に気付いたみたいで、目をこすりながらもどうにか立ち上がった。


「何、アンタまさか、この連中とグルだったって事?」

「ち、違うよ! 今朝ちょっとナンパされただけで、何も接点も関わりも無いよ!」

「その通り。その娘と俺には、なーんも無いのさ。あって、欲しかったけどね」

「あ、ご、ごめんね」


 いや、そんなつもりは無かったんだよ。ホントだよ。あくまで私が人間ってだけで、君たちは結構好きだよ、ロボットとして。


「ふーん。まぁ、だったらいいけどね。それにしても、宅配員の真似って、随分とまぁセコイというか、何というか。よくそれで騙せると思ったわね」


 まぁ、確かにね。ティスちゃんの言う通り、エリートの治安維持部隊にしては、随分といい加減な作戦だと思う。


「それは違うぞ! 俺はあえて道化を演じる事で、対象の油断を誘い、裏口から脱出した所を、待機していた弟達が確保する手はずになっていたのだ! ま、まさか正面突破されるとは思って無かったんだよ!」


 馬鹿にされたのが気に喰わなかったみたいで、M1君が作戦を喋っちゃってるけど、それもそれで、どうかと思う。まるで、小学生が考えるみたいな作戦だなぁ。


「兄者、話は全て聞かせて貰ったぞ!」

「助けに来たよ、兄さん!」

「おお、弟達よ。ナイスタイミング! いざという時の為に、兄弟間の通信をオンにしておいて、良かったぜ!」


 あ、弟さん達が戻って来た。それに、さっきまでの会話が聞かれてるみたいだし、話も既に通っているみたいだね。

 弟達を従えたM1君が、咳払いをした後に、シェリーちゃんの罪状を話し始めた。


「シェリー・タイロン。貴方を、国家反逆罪の容疑で逮捕する! 容疑は、国家機密への不正アクセスである!」


 不正アクセスって、要はハッキングって事。シェリーちゃん、ハッカーさんでもあったのね。

 そういや、M3君に貰ったチラシに名前が載ってたし、彼女を探してたんだろうなぁ。


「シェリー、どういう事か、説明してくれる」

「ご、ゴメンねティスちゃん。L2ちゃんの設計図だけじゃデータが足りなくて、首都のデータベースを当たってみたの。そしたら、ざっくざく実験結果やらが出てくるもんだから、ついつい入り潜り過ぎちゃったみたい」

「はぁ……またいつもの悪い癖が出たって訳ね。気になる事があったら、どんな手を使ってでも知ろうとするアンタの悪癖に、何度酷い目に合った事やら」

「ホントにゴメン。これで最後にするから!」

「その台詞。去年も一昨年も聞いたわよ」


 ティスちゃんが遠い目をして、諦めたかのように呟く。どうやら、前にも似たような事が何度かあったみたい。


「ま、アンタの夢に付き添うって、約束したからね。責任、取りなさいよ」

「覚えててくれたんだね、ティスちゃん!」

「当然よ。誓ったじゃない。ずっと一緒にいるって。せ、世界中を敵に回しても、私はアンタの味方だからねっ!」

「ティスちゃん……私も同じ。ず~と、ティスちゃんの親友だよ!」

「親友、かぁ。昔っからずっと、親友。……いいけどね、別に。約束、したんだから」


 親友宣言され、しょんぼりするティスちゃん。シェリーちゃんは今の関係で満足みたいだけど、彼女はちょっと不満みたい。

 一人、唇尖らせて拗ねちゃってるよ。気持ちを上手く表現出来なくて、自分でもどうしていいか分かんないんだよね。でもね。私達ロリコンにとっては、さぁ。幼女のそこが。


「マスター、いちゃいちゃするのも、いい加減に……」

「可愛いんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 恋幼女、最っ高でぇぇぇぇぇぇぇす!」


 可愛い。やばいよ、コレ。凄く、いい。やっぱ、女の子が輝くのは、恋している時だよねぇ。フヘへへ、その照れ顔だけで、ご飯三杯はいけるぜぇ。


「本当は大好きなのに、プライドが邪魔して、素直になれないんだよねぇ。それで、言いたい事も我慢しちゃうんだよなぁ~」

「そうそう。そこが、ツンデレのいいところなんだよね。見ていて、いじらしいというか、応援したくなっちゃうんだよねぇ」

「お、M1君分かってるぅ~。いいよね、ツンデレ幼女」


 同じく、この恋幼女を眺めていたM1君と、ツンデレトークに華が咲く。


「だがな、このM2が思うに、アレはダメだな。幼馴染って関係に甘えている」

「そうそう。距離が近すぎて、家族みたいになっちゃってるんだよ。だから、恋愛対象には見られないんじゃないかな」

「なんだ、M3。ろくに恋愛経験も無いくせに、随分知った様な口聞くじゃねぇか」

「何だよ! 兄さん達だって、僕と同じく、彼女いない歴=製造年月じゃあないか!」

「テメェ、末っ子だからって、言っていい事と悪い事があるぞ!」


 弟の発言が図星だったのか、M兄弟は、取っ組み合いのケンカを始めた。


「ちょ、ちょっと。ケンカは辞めなよ! 兄弟でしょ、仲良くしなさい!」

「は、はい。ごめんなさい」

「ちょっと、俺らも大人げなかったみたいだな。子猫ちゃんの言う通りだ。済まなかった」

「そうだね。兄弟仲良く、仕事しないと」


 ちゃんと仲直りしたみたいだね。やっぱ、兄弟ってのは仲良くしないと。


「うんうん。これで、良しっと」

「良い訳無いでしょ! 放っとけば良かったのに、仲取り持ってんじゃないわよ!大体、勝手に人を肴に、敵と盛り上がるんじゃねぇ!」


 頷いてたら、イチャイチャし終えたティスちゃんに怒られた。


「あ、そっか。私ら逃げてるんだった」


 いやぁ、緊張感が無さ過ぎて、ついつい忘れちゃってたよ。それに、私お姉ちゃんだから、ついつい喧嘩している子達の仲裁に入っちゃうんだよなぁ。


「さて、と。逃げ場は無いぜぇ、ガールズ達。おとなしく、お縄につくんだな! そして、反省文を書きやがれ!」

 M2君達が、手錠を手に、ティスちゃんに擦り寄っていく。


 って、ちょっと待て。反省文 ? 国家反逆罪とか言ってたけど、この世界じゃあ、そんな軽い罪なの?


「読書感想文もだぞ。あ、もちろん手書きでな!」

「反省施設で一週間。毎日絵日記書いてもらうからね!」


 ……あるぇぇ。これじゃあ、夏休みの宿題みたいじゃん。いいの、そんないい加減で。


「アールヴは、舐められてる。あの二人がちょっと特別なだけで、基本的に力も無いし、頭もあんまり良くない。だから、脅威とはみなされない」


 呆けている私を見かねて、L2ちゃんが説明してくれるみたいで、話を続ける。


「設計上、穏やかな気質で悪意もほぼ持ち合わせないから、犯罪なんて滅多に起きない。それに、社会で守られてるから、そんな事しなくても食っていける。寿命は人間と変わんないけど、四十歳で定年だから、後は年金生活」


 なんというか、お気楽だねぇ。働き蜂とか言われる日本人として、羨ましくなっちゃったよ。アールヴって、滅茶苦茶ホワイトな人生なんだねぇ。


「ん? 二人が特別って事は、ティスちゃんも?」

「イエス」

 ティスちゃんが、浴室で私に振りかざした棒を手に取り、戦闘態勢に入った。

 そして、同じように手元の武器を起動させる。

「斬花、イグニッションッ!」




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