奇策
「て、手元でも狂ったかよっ…うぐっ!」
ボブは切断された右腕を押さえながら、必死に激痛をこらえていた。
「お前とは、コレまでだ。ドコへでも行っちまいな…」
あえて無感情に、激痛でもがいているボブを一瞥すると、切断した腕を掴んで来た道を戻りだした。
「クリフ!頼む…」
ギンジの呼びかけにクリフはボブの前に立った。
「うわぁ、血が…痛そうだなぁそれはぁ…。キモイキモイキモイぃ。ほれっ」
ボブの切断部をまじまじと見て、しかめっ面で半分以上本気の感想を述べると、小さな小瓶をボブに投げ渡した。
「死体以外は何でも治せちゃう奇跡の薬エリクサーだぞ。あ、切れた腕は生えてこないけどな…」
クリフは自慢気にボブを見下ろすが、ボブには何が何だかわからない。
「ギンジが考えた苦肉の策だよ。ほら悪徳商人から盗んで来たやつだから遠慮はいらねぇ。グイッとやんな…。早く飲まないと、ホントに死んじゃうぜ」
クリフも一通りの説明を終えてボブに背を向ける。
「後はどっか遠くにでも行くんだなぁ」
背中越しに手を振ってギンジの後を追いかけた。
「まったく、あの筋肉デブが…。腕が重すぎて涙が出らぁ馬鹿野郎…」
ブーブー言いながらボブの腕を脇腹に抱え、重そうに歩いていたギンジは立ち止まり、木々の隙間から青空を見上げた。
「あばよ…相棒…」
小瓶の液体を一気に飲み干した次の瞬間、切断面が光り輝き、あっという間に痛みがなくなった。
切断面には早くも皮膚が出来ている。
さっそく、肩だけになった右腕をクルクルと回し、動きの具合を確認すると、満足そうに木々の合間から空を見上げた。
「あばよ…相棒…」




