憂さ晴らし
黒い布で顔を覆い隠したギンジとクリフは、街の悪徳商人サライの豪邸に来ていた。
中庭には見張りが数人、家の中にはさらに10人くらいの警備兵が居るに違いない。
塀の上から中庭を覗き込んでいるクリフが、隣のギンジに目で合図すると、隠れる素振りもなく、まるで見つけてくださいと言わんばかりに2人とも堂々と中庭へ飛び降りた。
当然のように、あっという間に警備兵に発見される。
「な!何者だ!」
「みんな!侵入者だ!」
中庭の警備兵に囲まれ、家の中からもワヤワヤと出てきた。
「あちゃー見つかっちゃったよ」
クリフがわざとらしく大げさに言うと、ギンジが続いた。
「見つかったものは仕方がない、降りかかる火の粉は払わねば…だな」
「ちょっと多すぎないか…これ」
2人でニヤリと笑い合うと、それぞれ左右に散った。
「さて、今日の俺はちょっとご機嫌ナナメだぜ。見つけたことを後悔するんだな!」
大上段に構えられた真剣が勢いよくギンジに叩きつけられるが、それを半身で避けながらみぞおちにヒジを入れると、次々に襲いかかって来る警備兵をヒラヒラと避け、次々に手際よく戦闘不能にして行った。
翌日の朝方、悪徳商人サライが目にした光景は、気絶した警備兵に埋め尽くされ、あちらこちらで呻き声が上がっている中庭である。
「こっ…この役立たずどもがぁ!」
叫びながら、足元にうずくまる警備兵を蹴り飛ばす。
「ほれ!さっさと立って盗賊を捕まえてこんか!あっ!そういえば何を盗まれたんじゃ!」
サライは思い出したように店舗へ足早に歩いて行った。
サライが必死に被害を確認している頃、ギンジたちはアジトへ戻る途中だった。
盗んだ安物のダガー1本。片手でクルクルともてあそびながら歩いている。
「少しはスッキリした?」
「いや…サッパリだな」
後ろを歩くクリフの問いに即答した。
「えー!じゃあ、あの人たち殴られ損じゃん」
「まぁ、スッキリしてても、あの人たちは得してねぇけどな…。ただ、ダガー1本でクビになるかもしれなねぇな…」
ギンジの無慈悲な発言にクリフが「可哀想ぉ」と言って笑い合った清々しい朝だ。




