諦めと葛藤
クリフの部屋で気まずい沈んだ空気の中、2人は何をするともなく長い沈黙に支配されていた。
「確かお前とボブは同じ施設上がりだったよな?」
沈黙を破ったのはクリフ。背もたれに背を預け、後頭部で手を組んで軽い雰囲気でギンジに話しかける。
単に沈黙を破るだけに発した言葉だ。
「ああ…」
ギンジは床に片膝を立ててあぐらをかき、宙を見つめている。
「たまたまギルドに入ったのは3人一緒だったよなぁ」
他愛もないどころか、何の意味もない話題である。
「ああ…」
宙を見つめ、ギンジは空返事で応え、放心状態を貫いた。
「なぁ…、悩んだって俺たちにはどうしようもねぇんだって。もう諦めろよ」
「あ?」
クリフの言葉にギンジは立ち上がった。ズカズカ近づきクリフの胸ぐらを掴んむ。
「諦めるだと…?仲間が殺されそうだってのに…諦めるだと…?馬鹿野郎!」
ギンジは握りしめた拳で思いっきりクリフを殴り飛ばした。
「馬鹿野郎…。なんで平気でいられるんだよ…」
壁に打ちつけられ、しゃがみこんだクリフを見下ろしながらギンジがつぶやく。目からは涙が溢れていた。
「平気…?」
口角からにじんだ血を拭いながらクリフは苦笑いを浮かべる。
「平気なわけねぇだろうがよ…」
クリフは小さくつぶやく。
「平気なわけねぇだろうがよ!」
そしてギンジを見上げながら声を荒げた。
「でもよ…何もできねぇんだよ…俺たちには。助けに行ったらギルドの立場が危うくなるしよ…。何もできねぇんだよ、俺たちには…」
クリフの握りしめた拳からは血が滲み出ていた。
「すまない…」
ギンジは手を差し伸べてクリフを起こし上げる。
「一発貸しな」
立ち上がったクリフは、服についた誇りをパンパン叩きながらニッと笑った。
「んじゃあ、憂さ晴らしにでも行くかっ」
クリフは、もういつもの軽いクリフだった。




