急報
クラウン王国の繁華街のド真ん中には、やや小さい教会がある。
多くの国民が祈りを捧げる教会である。
そして、その教会こそが盗賊ギルドのアジトであり、背の小さい素敵な笑顔のハゲた老人牧師こそが、盗賊ギルドのボスであった。
「ふぁあぁ、さっきのカネやっぱもったいなかったなぁ」
執行班の任務を終えた坊主頭は、大きなあくびをしながら人混みに紛れ込んでアジトへと帰るところである。
「おいギンジ!!」
突如、教会からサラサラの長い金髪を振り乱し、自分の名前を叫びながら駆け寄って来る男が目に入った。
「お、クリフ…」
クリフと呼ばれた男は、ギンジの目の前まで全力疾走して来ると、整端に整った顔を歪めながらゼェゼェ息を切らせている。
「どうした?慌てて」
「はぁ、はぁ、はぁ、どうしたじゃねぇよ、ボブが、ボブが、捕まった…」
ギルドと王国の裏協定として、ギルドメンバーが現行犯で捕まった場合、多額の金を支払って無傷で釈放されるコトになっている。
逮捕されるコトはメンバーにとって恥辱であり、ギルドに大きな負担を強いるコトなのだ。
「ボブが捕まったぁ?そんな驚くようなコトじゃぁねぇだろ?またボスの雷が落ちるぜ。そろそろ除名かもなぁ」
ギンジはクスクス笑いながら、クリフの肩をポンと叩いて教会へ歩いていく。
「憲兵を1人、殺した…」
ねじり出すようにつぶやいたクリフの声にギンジの歩みが止まった。
振り向いたギンジの顔は青ざめている。
「う…嘘…だろ…」
憲兵殺しは、如何なる理由であっても死罪であった。
「アジトでボスが待ってる」
クリフはうつむいたままつぶやいた。
教会の一室では、背の小さい牧師が祈りを捧げていた。禿げ上がった頭に残された側頭部の髪は見事に白髪で真っ白である。
そんな静寂の時間は、ドアを開けるけたたましい音に破られた。
「ボス!!」
ボスはギンジに振り返ると優しく、そして寂しそうに微笑んだ。
「ギンジ…か」
「ボブが、ボブが、ボ…」
ギンジが更に言葉を続けようとしたが、ボスと呼ばれた老人は諭すように首を横に振るだけだった。
ギンジは、それで全てを悟らざるをえないのである。
「ボブが…」




