つけめん
真田は12時頃、サナと一緒にマンションを出た。
サナは、新宿の「まつエク」に行くというのでランチを食べつつ向かう事にした。ただ真田は打ち合わせが新橋だったため、ランチの場所は高田馬場でという話になっていた。高田馬場は有名ラーメン店が多いので有名だったがこの時間はどこも長蛇の列になってしまう。2人は裏通りにある、プチチェーン店のつけ麺屋さんに入ることにした。それでもギリギリ座れた感じだったが。
「しんちゃんのお仕事って、よくわかんないんだよね…わたし」
サナは真田の「広告関係」という仕事内容がよくわからないようだった。確かに、説明がしにくい。別に絵を描くわけでもないし、写真を撮るわけでもない。企画立案、デザイン提案という仕事だがその内容は、話せば話すほど社会人経験のないサナには謎多きしごとだったようだ。結局ラーメンができる15分の間の説明でもサナはチンプンカンプンだった。
ただ、真田が仕事でよく訪れる新橋には詳しいと言った。
「わたし、前は銀座でお仕事してたからね」
「ぎ、銀座!?さっちゃんってすげーのね、こんなんなのに!」
「うるさいな!ラーメンの汁、頭からかけようか?」
「で?で?やっぱすごいの?」
「しんちゃんさぁ、テレビとかに出てくるクラブとか想像してるでしょ?」
サナの話によると、クラブとキャバの間みたいな店だったらしい。もう3年も前の話だしねと、サナは澄まし顔でいう。
彼女が髪を耳に何度もかけながら食べる様子を面白がってみていた真田だったが、「結構、その歳で経験してるのね…」とすこしだけ彼女を見直していた。
「つうか、さっちゃん、未成年で働いてたな?」
「そうだよ。あ、でもその時は昼職もしてたけどね」
「昼職?」真田は聞きなれない言葉を聞き返した。昼職とは夜に働く人がよく使う言葉で、いわゆる朝から夕方まで働く普通のお仕事(水商売でない)のことらしい。
「何の仕事してたの?」
「うんとね。歯科衛生士とたこ焼きやさん!」
「たこ焼き!!?」
「そう!わたし、たこ焼きづくりの名人なんだからね!」
真田はそれを聞いて思わず笑ってしまう。このキラキラに包まれたサナが、汗水ながしてたこ焼きを焼く姿は到底想像できない。
「わたしさぁ、いろいろあって高校中退したからね。あ、でも夜間通って卒業資格は持ってるのよ」
「それは初耳だな。そうなんだぁ」
真田は、初めてきくサナの過去に考え深いものを感じていた。最初、マキとして会っていたころは女子大生が遊びでやってるのかと思っていたが、いざ蓋をあければ、それなりに苦労していて真田が思っていたキャバ嬢の生活はとても地味なものだと感じた。
サナの横顔は、今はとても美しく、ぱっと見悩みがあるとか到底思えない。
だが、サナと仲良くなるにつれてその考えは大きく変わっていった。




