寿司屋
次の日、真田は東京神田にある事務所に出社した。
机の上には、書類が山積みになっている。3月に入ってからはサナに振り回されてはいたが仕事だけはきっちりこなしていた。
真田は一枚一枚、丁寧に閲覧しチェックをしていく。そこから、部下をよび一人づつ説明し今日の業務がはじまった。ちょうど自分の直属のパートナーである吉澤という男が的確に仕事をこなしていたので真田はずいぶん仕事が楽になっていた。去年までなら考えられないことだ。
お昼前にすこし時間ができて、コーヒーをいれていたとき電話が鳴った。橘だった。
そういえば、昨日の橘からのメールに真田は返信するのを忘れていた。サナとずっと一緒にいたので後回しにしてしまっていたのだ。
「もしもし、昨日はごめんね。連絡できなくて」
真田は申し訳なそうな声で電話に出た。橘は日曜日だったこともあるから大丈夫ですよっと一言いうと
「いいっすよ!あ、それよりランチ一緒にどうですか?長めのランチになるんけど」
「ああ、別に構わないが、なにかわかったのか?」
「まぁ、それは会ったときのお楽しみっちゅうことで、あ、近くにいるのですぐ行きます」
と言い、電話を切った。真田は若干この日記の秘密からはじまった冒険にすこし興味が薄れてきていたが、橘にこちらからお願いした以上手は抜けない。
薄れて原因のほとんどはサナだった。昨日のサナは、マンションに戻ったあと別人のように甘えてきて結局2人はひとつになっていた。勿論、お互いの関係は定まっていないし、TOTOとの契約、フランスへの留学と問題は山積みだったが…
5分ほどで、橘は会社にやってきた。最初にすこし仕事の話をした後、橘が寿司を食べたいというので「築地すし好」に歩いて向かう。
歩きながら、橘はいままでの流れを簡単に伝えた。
「まずリアル・アイ言うんは、携帯になにかしらを仕込んでプライベート情報を根こそぎもっていくものやった。その仕組みはまだ警察も把握してないようやったが、どうもスマホとかのキズ防止シートに関係があるんや。メール、電話、LINE、さらに電話、行動、もしかしたら心情までわかるかもしれん」
「は?そんな馬鹿なことが…」
「いや、これは体験済みやん」
橘は、この間ケイとのことで、山本によってリアル・アイの不気味さを経験していた。
「まぁそっちは、うちらはそれ以上無理やん。で、次は真田さんが言っとったユキのことやけど…昨日、マキの店に行ってきて簡単に探りいれてきたんやけど…」
橘は、昨日のマリコとの話の内容を説明した。要点は、あの店は5ヶ月、長くても10ヶ月で、嬢もスタッフもまるっと入れ替わること、サナはあの店では新人であったこと、おそらくユキは1年前のあの店のナンバー1だったのにもかかわらず急に姿を消したことだ。
真田は考えているのか無言だった。さらに、ユキと同じようにTOTOと出会い姿を消したミドリのことも話す。
「え?じゃそのミドリがユキなのか?」
「いや、その可能性は低い。ミドリはガールズバーで働いていたし、なんか人物像もあわへん」
「と言うと、TOTOは何人もの女の子を集めているのか?」
「集めているだけならええけど、とりあえずユキとミドリは失踪してるんやから…」
真田は急にサナのことが心配になった。いったいTOTOの契約とはなんだろうか…。その契約を済ますとサナもいなくなってしまうかもしれないと思うと真田はいてもたってもいられなくなってしまった。だが今はなにもすることはできないが…
そんなことを考えていると2人は寿司屋についた。
橘は食べる気満々だったが、真田はすっかり食欲がなくなっていた。




