涙
サナはその席に座ると、早速メニューを見出す。ウィスキーの欄をひととおりみてから、結局お気に入りがなかったのかワインを注文した。
真田も強制的にそれになる。もう慣れた光景なので特に文句は言わなかったが。
サナはもらったプレゼントから、財布を取り出し、嬉しそうに今の財布から入れ替えている。今の財布はグッチだった。
「その財布は自分で買ったのか?」
真田は気になってきいてみた。サナは財布のカードを一生懸命入れ直しながら
「ううん」とだけ答える。そしてひととおり入れなすと
「これはね…どういえばいいのかな。簡単に言うと前のしんちゃんみたいな人にもらったの」
といった。前のしんちゃん?と思ったがそこはあえてつっこまないでいるとサナが続ける
「結構前のお客さんでね。すごく私によくしてくれる人がいたの。よく遊んでたの。もちろんカラダの関係はなかったよ」
「そうなんだ。」
真田はなんとなく複雑な気分で返事を返す。
「もしかしてヤキモチやいてるの?」
サナが微妙な笑顔できいてくる。ヤキモチ…なんだろうか。真田はよくわからなかった。だが、なんというか気になった。
「そういうのかもね…」
「しんちゃんって、意外とヤキモチやきなのね。ちょっと意外」
サナは面白そうにしているが、今はもう連絡してないよとだけ付け加えた
真田はこの時、現実をつきつけられた気がした。
若干、忘れ気味だったがこの子はキャバ嬢なのだ。
まわりに男の影なんていうのは山ほどある。だがいままでそれを見ないようにしていたかもしれない。今日は遠慮してるのかあまり携帯を見ていないが、かなり着信音はなっているので多分すごくお客はサナからのメールを待っていることだろう。
彼氏がいるかどうかも真田は聞いたことがないのでわからない。ただ誕生日に一緒に過ごしているわけだから多分いないだろう…くらいしかわからなかった。
真田のその不安を感じ取ったのか定かではないがサナは
「なに不安がってるの?おもしろい」
と茶化した。確かに俺は不安がっていると真田は思った。だが一体何に不安がっているのかがわからない。
「バカだなぁ…しんちゃんは、サナの一番だよ!ほんとに!」
その言葉は確かに嬉しかったが、そういうことでもない気がした。
(なんだろう、この感覚)サナと一緒にいて楽しいはずなのに…今真田はすごく孤独感を感じていた。というか、この空間…なんでだろう…
そう思っていると真田の意識がないとこで、涙がこぼれ落ちた。
「…えっ?…しんちゃん!?」
真田もびっくりしたがサナもかなりびっくりしている。あたりまえだ、いつも自分を茶化すだけのロマンティックの欠片もないはずの真田が急に泣いているのだ。
「あれ?なんでだ…?」
真田は声も涙声になっている。しばらくすると嗚咽がもれて真田は本気で泣き出してしまった。「う…う…ちょ…ちょっと…ゴメン」真田はそういうのがやっとだった。サナは自体が把握できないで呆然とみている。
注文のワインとつまみを運んできた店員もびっくりしている。彼は静かに注文の品をおくと席から離れていく。
サナはその店員がいくのを見て、手を真田の背中に当て、上下にさすってみた。まるで子供をあやすように…
すると真田はまた涙が溢れ出す。真田のその様子を見て、サナは真田の背中を抱きしめた。真田は小刻みに震えている。だが、しばらくかける言葉がみつからない。だが意を決して
「しんちゃん!!!?いつもの自信満々なあんたはどうした!?」
サナはそう言った。意味がわからないのでとりあえず泣き止ますことが大事だがサナにはその言葉しか思いつかなかった。逆ギレといわれればそうだったが…
真田はそれをきくと、一瞬ぴくっとなったが急に立ち上がり
「悪い、ちょっとトイレで顔洗ってくる」
とサナに顔を見せずに席をたった。
(わたしなんか言ったっけか?)サナは思い返してみるが、当てがない。
まさか真田のような大人がたったあれだけのことで嫉妬し泣くなんてことはありえない。ありえない…はず。
とりあえず真田の話を聞いてみようと、サナは真田の帰りを待った。




