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競争


サナと真田は船から降りた後、東京駅から中央線に乗り新宿へ行った。


船から降りた後もなんだかんだくだらない話をして、ゆっくり東京駅まできたので新宿につくころには11時をまわっていた。


「なんか、初めての2人の写真だね。今、しんちゃんにも送るから」


サナは、携帯を見ながらそう言って真田にメールで写真を送る。実は誕生日ケーキがきたあと、船の船員に2人の写真を撮ってもらっていた。サナが言ったとおり2人にとっては初めての写真だった。

サナは笑顔だが、真田は微妙にひきつっている。尚且つ顔が酔っ払いみたいだった。


「お、ありがとう」


写真を受け取って真田は答える。写真の中はとても幸せそうだが、真田はなんとなく迷っていた。それは勿論、今日限りでサナと会うのをやめるという件だ。やはり一緒にいると、真田としてもかなり楽しかったのだ。


新宿につき、東口改札を抜けると50mほどの通路がある。その先の階段を左にあがると歌舞伎町、右に上がると伊勢丹方面へ向かう。その通路に差し掛かった時、サナは「わたし、かけっこ早いよ」という話を丁度していた。

実は真田もかけっこならかなり自信があった。


「ほうほう、この俺さまに勝てるとでも?」


「歳考えなさいよ、若者なめんな」


「よし、じゃあそこの階段まで競争するか?」


「いいよ、おじさん足釣らないでね!」


サナと真田は位置についた。もちろん夜の12時近いとはいえ、周りに人は結構いる。


「よーい!ドン!!」


二人は一斉にスタートする。と、真田はびっくりした。サナのスタートダッシュが素晴らしい。だが、真田とて元サッカー部だ。いくら歳が倍近いといっても、日常酒浸りのキャバ嬢に負けるわけにはいかない。

徐々に距離をつめていく。

と、サナが手を伸ばし真田の進路を妨害する。どんな手を使っても勝てばいいというサナの持論だ。


だがなんとか真田はその手を振りほどき、よしいまから!という時にゴールについた。


ほぼ同時にゴールした。


「はぁはぁ、しんちゃんさぁ割とやるね」


「おまえこそ」


ここまでは、まるで少年漫画のようなやりとりだったが…


「だいたいさぁ、相手女の子なんだから普通勝たせてあげないの?」


「かわいい女の子なら勝たせるけどね」


「ほんと最低!死ねばいい!!」


と、いつものバージョンにもどっていく。真田もサナも負けず嫌いなとこは

一緒だった。サナは結構苦しそうだ。真田は距離が短かったので結構楽だった。


「とりあえず、店にはいろう。喉がかわいた」


サナはそう言うと真田の手をひいて、階段を登りだした。真田はなんとなく嬉しそうにサナの手を握り返す。


サナが案内した店は、新宿駅からほど近いバーだった。

バーといってもかなり大きい店だ。


大きい木の扉の前には水槽があり、巨大な熱帯魚が泳いでいる。

真田はしばらくその魚を見ていたかったが、サナは手をひき店の中へ入った。


「いらっしゃいませ」


店員に迎えられ、店を進む。店はほぼ真っ暗で各テーブルの上のろうそくとたくさんある水槽の光だけが明るい。とても幻想的なバーだった。


2人は大きな椅子の席に案内された。椅子が大きくまわりを囲んでいるため周りから見えない、完全なカップル席だ。


真田はその椅子にすわると目の前には大きな水槽が目につく。

だが、真田はそのこと以外にすごく驚いたことがあった。


「…俺は…ここにきたことがある…」


それがいつ、どこで、なのかは思い出せなかった…






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