にがさへんわい
真田はトイレにいた。
自分に意識に関係なく涙がでたことに驚いていた。
洗面台で顔を洗う。涙は止まったがこの不思議な感じはなんだろうと思った。
初めての感覚だ。サナがどうこうで泣いたのではないことはわかっていた。
(だとしたらなんでだろう…)自分でも考察ができない。
だがいつまでもサナを待たせるわけにはいかない。今日はサナの誕生日だ。
深く深呼吸すると真田は、サナの待つ席へ戻っていった。
「しんちゃん…大丈夫?」
案の定、サナは心配そうに待っていてくれた。真田は「うん、大丈夫!」と一言だけいい席に着く。サナはそれでも心配そうにまた背中をさすってくれた。
「あ、ありがと。でも本当に大丈夫だから…」
「ううん。さすっていたいからしてるの。気にしないで」
サナは優しく言う。真田はとりあえず、サナにお客さんの話をしてと言ってみた。なんとなくそれが原因ならわかると思ったのだ。だがそんなに小さい男かと思ったが…
だが、サナは今日はやめとくと言って話さなかった。2人で無言の時間が流れる。真田は落ち着くために、とりあえずワインを飲み、チーズを口にいれる。
「ねぇねぇ…しんちゃん。」
サナが機を見て話しかける。
「しんちゃんってよく泣くよね。この間も…私を助けにきてくれたとき?泣いてた」
「まぁ、俺はタイタニックで3回泣いた男だからな」
「え?マジで!」
サナは急に笑う。真田も「うるさいなぁ」と言いながらもつられて笑ってしまう。サナは笑う真田に寄りかかってきた。
「まぁ私も泣き虫だからなぁ…」
「さっちゃんも?信じられないぞ」
「ほんとデリカシーの欠片もないんだから!わたしは女の子!」
サナはそう言うと真田をくすぐり始める。
「やっぱ頭きたから、仲良いお客さんの話するわ」
サナはそういうと、自分と仲のいいお客の話をしだした。
すごいお金持ちで船を持ってる人、有名なファッションデザイナーで服をくれる人、そこそこ有名な芸能人、同い年くらいでたまにデートする若者、なんでも言うことを聞いてくれるおじさん等々。
だが真田はそれをきいても若干の嫉妬はするが、涙が出ることはなかった。
サナはその対応に不満だったが、理由がお客への嫉妬でなくてよかったとも思った。それにしても、さっきのはなんだったんだろう。不思議…不思議といえば…サナは今日の朝のことを思い出し話すことにした。
「今日ね…朝くるとき変な夢を見たんだ…」
「夢?」
「うん。」
サナは今日の朝の夢を話した。真田から似合わないほど優しいメールがきていて、それに返信しようとしたら宛先が「さなやん」になっていたという夢だった。真田はしばらく黙っていたが、予想に反して彼は馬鹿にしなかった。
真田はワインを軽く口につけると、
「なんか、因縁深いと言うか…同じことしてるんだもんな、俺たち」
と意味深に言った。
「うん。もしかしたら此処にも2人はきたのかな?」
サナの問いに真田は「?」となった。
「ここは日記にかいてあるからきたんじゃないのか?」
「え?まさか!違うよ。ここは前から私が知ってたの」
真田はその言葉にすこし驚く。ということはこれはサナと真田のオリジナルなんだと思うと不思議な気分だった。
「ユキって娘の日記は想いとか考えはいっぱい書いてあるけど、どこにいったまでは詳しく書いてないの。飲みにいったとかカラオケいったとかーとしか」
真田は頭が混乱した。ふたたび真田はしっかりとサナに聞く。
「気をわるくしないで聞いてくれ。もう一度聞くけど…高田馬場でキスした時、サナは本当に日記にそってしたわけじゃないのか?」
「それはさっきも言ったけど…そんなこと書いてない。あれは…私がしたかったんでしょ」
サナは少し恥ずかしがりながら言う。
実はキスしたことは「さなやんの日記」には書いてあった。ということは2人は無意識にユキとさなやんの日記をなぞっているのか…
真田は、「さなやんの日記」のことをサナに言おうか迷っていた。
謎解きのことはもはやどうでもよくなっていたが日記の秘密に関しては知りたかったが、話すのをやめた。理由は、サナとこの先どうなるかわからないからだ。
真田は改めて迷っていた。
今日、俺はこの目の前のサナに、もう会わないと言おうとしている
それは、サナが求めていた秘密がもう間もなく暴かれるからだ。
そうしたら、2人が会う理由がなくなる
サナは、俺がいなくなったら寂しいとか思うだろうか…
サナはそんな真田をみて、変に笑う。
「しんちゃんさぁ、私に会うの、今日が最後みたいに思ってない?」
「!!?」
真田はびっくりする。こいつはエスパーかと思った。
「やっぱりね。なんでそう思ったの?」
サナは笑いながら聞いてきたが、それはそれで寂しそうで真田はなんだか居た堪れなくなる。サナはそういうと真田に抱きついた。そして頬にキスをした。
真田の頭の中に様々な想いが駆け巡る、サナ、サナ…と。
もしかして泣いた理由はこれだろうか…
(おれはサナと会えなくなるのがつらくて泣いたのか)真田がじっと動かないのをみてサナは小さく呟く。
「逃がさないっていったじゃん…」
サナはそれ以降無言になった。




