表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/190

サナの部屋



真田はなんとかサナを起こさずにベッドから脱出することに成功した。


寝室の扉を音を立てないようにゆっくりと開ける。そうすると外からの光が差し込み、サナの部屋全貌が見えた。


「なんだ…ここ」


綺麗なダイニングキッチンが置かれ、リビングはおそらく16畳はある。そこに、ソファと机とテレビが置かれていて物の少なさはまるでモデルルームのようだった。真田は、恐る恐るベランダに出てみた。そこからは、高田馬場が一望でき、遠く新宿のビルまで見えた。完全な高層マンションの上層階だった。

(いったいあいつはいくら稼いでいるんだろう…)真田はすっかり驚愕してしまった。


とりあえず冷蔵庫をあけてみる。中には、ビールと牛乳、麦茶それになぜかファンタオレンジが入ってる。

さらに漁ると、卵とベーコンが見つかった。真田は(ゴチになります)と麦茶をもらい、コップに入れて飲んだ。


いろいろ、棚をあさっているとパンと調味料、お皿一式がみつかったので朝食を作ることにした。時間は、朝の8時だった。


「卵…大丈夫かな…」


若干不安になったが、割ってみればわかると真田はそのまま続けた。


ジュ〜といい音をたててベーコンを焼いているとガラガラと寝室のドアが開く音がして、サナが起きてきた。


「おはよう…あれ、しんちゃんご飯つくってるの?」


「そうだよん」


「言ってくれたらつくったのに〜」


「さっちゃん、ご飯つくれるのか!?」


「ほんと、いつかそのベランダから突き落とすからね!シャワー浴びてくる!」


サナはそういうと奥の浴室へ行った。余談だが料理やお菓子作りが得意なキャバ嬢は意外と多い。

改めて部屋を見渡すと、ほんとに広い。お金持ちの新婚さんとかが住む部屋だなと真田は思った。


しばらくすると、サナが部屋着で戻ってきた。早かったことから髪は洗っていないのだろう。普段はくりんと下に下ろしている髪を、今はお団子で上で止めている。部屋着も高校生がきるようなTシャツと短パンだったので、サナはかなり幼く見えた。改めて年の差を大きいと真田は感じた。


真田は、パンとハムエッグ、サラダ、牛乳をサナの目の前に並べた。


「お、美味しそう!!意外!?」


「文句があるなら食わなくていいぞ!」


真田はそう言い終わる前にサナは食べ始めた。ちゃんと焼けてる とか 調味料よく見つけたね とか言っていたが総じて機嫌がよかったところを見ると味はよかったようだ。


「ところでここ凄いな…家賃いくらなんだ?」


真田は素朴な疑問をぶつける。サナはパンをかじりながら


「知らないんだよ。いや、これ、ほんとに…」


「知らないって…」


「多分、店が払ってくれてるんでしょ、確かそんな感じだった気がする…もう2年すんでるから忘れた!」


「いい加減だなぁ。」


真田はすっかり呆れてしまったが、夜の世界とはこういうもんなんだろうか、とも思った。それにこいつはハタチだ、自分のハタチだったことを思い出してみたが、むしろサナよりいい加減だった気がする。完全に親の経済力に頼っていたのだから、ある意味サナはハタチの真田より自立している。


「しんちゃんは今日は仕事?」


「はは、平日だからな。サナも今日は仕事だろ?」


「だよね。まぁ私は夜からだからね〜、何時にいくの?」


「俺はもうすぐでるよ。」


真田がそう言うと、サナは「そっかぁ…」と言った。


真田は、その後シャワーを借りた。浴室は湯沸かし器のついている完全版だ。一人暮らしの若者の部屋には完全におかしいと真田は思った。見たこともない外国製のシャンプーとリンスがあった。これが天下のキャバ嬢なのだと真田は感心してしまった。


真田がシャワーからでると、サナはひとりベランダで外を見ていた。

なんとなく彼もベランダにでて、サナの横にいく。



「私ね…初めてここに来て、ベランダからこの風景を見た時、天下を取った!みたいな気分だったの。」


「そう思うよな…」


「でも、これは、まやかし なのよね。ここにいる私は本当の私じゃない、最近そう思うの…」


真田はそれに答えず、サナの美しい横顔をずっと眺めていた。




































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ