遅い!!!!
「しんちゃん!!?」
「サナ!!」
二人は同時に声を出した。あまりの驚きに二人とも声がでない。
少し無言の間があいた。2人も目を離さずお互いを見ている。
そして再び、
「遅いよ!!しんちゃん!」
「わかりにくいんだよ!!サナ!!」
またしても、同時に言葉がかぶった。こんな状況でも、さっそく相手に文句かよっと2人同時に思う。可愛げのない相手に若干イラっときた。
だがサナは、ゆっくりエレベーターから降りてきて真田の手を握った。
微かに震えている。なんだかんだ言っても相当怖かったのだろう。
真田はその小さい綺麗な手をやさしく握り返した。
「さすがに、ビビったよ…」
サナは声を漏らす。目はすこし赤くなっていて、涙がたまっているのがわかる。
真田も続く。
「おれも久々に焦った…」
そういうのがやっとだった。サナより先に目から涙がこぼれ落ちてしまった。
真田は自分でもなぜ涙が出るのかわからなかった。
「逆でしょ!?泣くのはあーたーしー」
サナのその言葉に、真田は思わず笑ってしまった。
そのすぐ後にサナも笑う。
こういう状況というのは、なぜ笑うんだろう…と真田は思う。安堵感からなのか現実に戻ってきた喜びなのか…よく小説や映画なんかでも見るシーンだが、現実に味わうと本当に笑うんだと自分で実感した。
サナは、ゆっくり真田に近づき…ハグをした。
「絶対追いかけてこないと思ってたのにな…びっくりした」
真田は、応えられなかった。なんでサナを追いかけたのか…自分でも説明できないからだ。だが今はとにかくサナは無事で、自分の目に前にいる。それだけでよかった。
だが、ここはいわば敵地。ゆっくりしている暇はない。
「サナは、一人で逃げてきたのか?」真田がきくと
「あーーーーーー!!」
と、サナは突然声をあげた。いつものことだが…
「逃亡中でした…わたし」
真田は、おもわずまた大笑いしてしまう。と、同時にサナの手を引き
「じゃ、こっちだ!太ってなければ出られるぞ!!」
「ほんとあんた、いつかシバクからね!!!」
と、いつものノリで元来た狭い通路にむけて走り出した。
二人は無事、通路からでた。真田は振り返ったが、誰も追いかけてくる気配はない。と、サナのスマホが鳴った。
サナは恐る恐るそのメールを確認する。やはりTOTOからだった。
「お早いお帰りだの。もう少し話したかったのだが、いずれまた」
とだけ書いてあった。どうやら今日は追ってくることはなさそうだ。サナがそのメールを見せると真田もホッとしたのか思わずその場所に座り込んでしまった。
サナもそれに続くように、地面に腰をおろした。
「ねぇねぇ、しんちゃん…、おなかすいた!」
サナがいつものセリフを口にする。いつもならいろいろ突っ込むところだが、今日は真田も同意見だった。
「だな。肉でも食いに行くか!」
「お!いいこと言った。さすがしんちゃん!!」
「だが…」
「どうしたの?しんちゃん?」
「腰と足がちゃんと動くようになるまで、待ってくれ!」
その言葉をきいてサナはいつものようにケラケラを笑いだした。




