真田の悪運とカン
やがてタクシーは池袋駅東口についた。
あいかわらずの安全運転だったので時間はかなり経っていたが、真田はあえて携帯の時計をみないようにしていた。時間をみてしまうと諦めてしまう自分が現れそうだったからだ。サナからのメールでは真田の予想を後押しするように「4階」と書いてあった。
真田は駆け足でマクドナルドへ向かう。途中にあるふくろう交番には以前話したことのある警察官、磯谷が眠そうに立っている。普段なら写メでも撮ってtwitterにでも投稿してやりたいところだが、今はそんなことも気にしてられない。
マクドナルドにたどり着く。商品を買わないでマックに入るのは初めてだったが、そこも今は気にしていられない。一気に3階まで駆け上がった。
(サナは…)真田はサナを思う。つい昨日まではそばにいて初めてのデートからはいろんな形があるにせよほぼ毎日あっている。ほんとに生意気な女だが、万一いなくなるとそれはそれで寂しくなるんじゃないかと思った。
たった半月ちょっとの付き合いだが、そのほとんどをサナのことを考えていた気がする。もちろん、日記の謎というお題目があればこその2人だが、今はなぜかサナを助けたかった。
踊り場を抜けて段ボールの積まれた狭い通路を抜ける。2回まがると例の鉄格子付き階段にたどり着いた。今回もご丁寧にしっかり鍵がかかっている。ただ前と違ったのは、その鉄格子の先にかすかな光が見えていたことだ。
この時ほど、斬鉄剣かゾロの刀がほしいと思ったことはない。
「サナ!!サナ!!いるのか!?」
真田は、鉄格子からおもいっきり声を張り上げた。だが特に声は帰ってこない。
お得意の落ち着いて考えるというワードが頭に浮かぶ。するとサナはエレベーターで4階にあがったんじゃないかと思った。あいつの性格なら階段で4階へ上がらせる事態になったら、「だるい」だの「階段で4階かよ」とか、もっとメールに文句がいっぱいかいてあってもいいはずだ。
とするとどこかにエレベーターがあるはずだ。
真田は、周りを見渡す…だがマックにはエレベーターはない。
建物の構造を俯瞰的に考えてみる。ここは位置的に3階…マックの店舗の奥にあたる。普通に考えるとおかしい。もしこのビルがマックだけならこのスペースだって壁をぶち抜いて客席にするはずだ。壁を見てみる…すると壁がマックのビルと違う…もしかしたらこのビルはマックのビルの裏側にたっているんじゃないか…真田はそう閃いた。今日は一休さんか諸葛亮孔明のように頭が冴えてるかもしれない…
真田は、一旦マックの外に出た。もしマックのビルでなければ必ず違う入り口があるはずだ。真田は、iPhoneでグーグルアースを開く。この素晴らしい無料の地図は写真モードにできる。するとかすかに、マクドナルドのビルとドンキホーテのビルの間に隙間があることがわかった。真田はダッシュで裏側へまわる。するとその隙間に横向きならなんとか人がとおれるスペースがあった。
よくこういうとこに人が挟まれて。出れなくなるなんてニュースが中国あたりで流れているが、ここなら大声出せば誰かがきてくれそうだ。
新聞の16面にのることは確実だが…
「よし!」ここは、気合をいれて入ってみる。しばらくはビルの壁と壁の幅がそのままだったがだんだん広くなっていくのを感じた。その先に幅の小さな扉があった。(鍵かかっていませんように)と祈りながら、その扉のノブに手をかけると祈りが通じたのか扉は普通に開いた。
そこにはタタミ一畳ほどのスペースがあり、マック側の壁にはエレベーターの出入り口があった…
真田はやったーーーっと大声をあげたかったがそれは後にしよう!と思い直し、急いで、エレベーターのボタンを押す。通常エレベーターのボタンというのは、上と下があるものだがこのエレベーターは一つしかボタンがなかった。
しばらくするとグイーーーーンとエレベーターの動く音がする。徐々にエレベーターが降りてきて、プシューと停止する音がして扉が開いた。
その降りてきたエレベーターにはそれはそれはびっくりした顔のサナが、ちょこんと立っていた。




