こえーよ
ちょうどサナと真田が居酒屋「きざみ」で、ワイワイやっているころ
例のマクドナルドの前でたちすくんでいる男がいた。
つい先ほど降り始めた小雨がぱらつく中、傘もささず店の上の方を見つめている。
男は中年でいかにもおじさんという表現が正しい男だ。
すこし髪が薄くなりかけ、似合わない今時のメガネをかけている。お腹はぽっこり出ていて、シャツのボタンがいかにもかわいそうな感じだった。
だが今度の男はどちらかというと険しい目で店を睨んでいる感じだった。
すぐ側の交番でいつもように立っていた磯谷巡査長は、また店に立ち尽くす
この男に当然のように目がとまった。くたびれたスーツの上にひなびたコート、如何にも仕事ができなそうだ
「今日こそは…職質してみよう」
磯谷巡査長はそう呟き、男に近づいた。
彼はは、この交番に異動してもうすぐ一年になる。店を見つめる男を初めてみつけたのは今年の1月だった。最初は特に気にとめなかったが、いい年をした男があの場所に立ちすくみ動かずじっとしている男たちがとても不思議な光景だった。
「こんばんは。どうかしましたか?」
磯谷はなるべく優しい声でその男に声をかけた。
「あっ?」
男は険しい表情を崩さず伊藤をにらめつけた。
ブルドッグ顔と言うのだろうか。おそらく50は超えているようだった。
「いえ、この雨の中でずっと立っていたのでどうしたのかなと」
「ここに立っていると、捕まるのか?」
予想したとおりの答えが帰ってきた。心配してきてやってんだよ!とも思ったがここは下手に出ることにした。怒らせたらそれでそれで面倒だ。
「いえねぇ、最近同じようにこの場所で泣いている人が多いものでね」
とかえした。するとその男は急に体を磯谷に近づくとの肩に手をおき揺さぶった。
「なに!?それは本当か!?いつだ?」
急な出来事に、磯谷は面食らったがとりあえず男にこうせっつかれるのが気持ちが悪い。背負い投げをかましてやりたいのを我慢してとりあえず交番に叩き込んでやろうと
「ここではなんなので、交番いきますか?話をききますよ」とこれも優しく答える。
「いや。。。それは。。あ、ならお巡りさんよー。一緒にこの建物の4階にいってくれないか?おれはそこで騙されたんだよ!」
男が急にお願いをしだした。磯谷は「4階?」とおもわず口に出てしまった。そういえば少し前も、きれいなお姉さんとどうでもいい男の2人組がそんなことを言ってたな…と思い出した。
「磯谷、どうした?」同僚の斎藤巡査長が、二人のやりとりを聞いて交番から出てきた。
「いえ、なんかこの方がそのお店で騙されたって。。。」
「ん?ここはただのチェーン店だぞ。どうしたんですか?ぼったくりとかですか?」斎藤はも磯谷にならってやさしく男に聞く。
「金とかの問題じゃない!」男がまた大きな声をだした。
「まぁまぁ、とりあえずここでは邪魔になるので。。。」
磯谷はとりあえず話を聞くために交番に男を則した。
男は悪態をついてはいたが、人の目を気にしたのか、しょうがないという表情をして。渋々交番に向かった。
その時だった。大きなブレーキ音とともに、急に交番の横に黒い大きなバンが急停車した。スライド式の扉がシャーと開いて、ダークスーツを着たガタイいい男が2名、3人の前に小走りで向かってきたのだ。
二人とも短髪で夜だというのにサングラスをしていた。
一見、暴力団というより海外のマフィアという感じだ。
一人は身長が180を悠に超える巨体だった。
もう一人も身長は175くらいだが、明らかに格闘技をやっているようなしまった体格だ。
「なんですか?」
磯谷は異様な気配を感じ、二人の男を睨んだ。
「その男を渡してほしい」
背の高い男が低い声で言った。一瞬丁寧だがドスのきいた命令口調だ。
磯谷はとっさに、中年の男の前に立ち二人を遮った。
ちらっと、振り返ると中年の男は体が震え、表情が恐怖に満ちていた。
磯谷の同僚、斎藤も体をはって、二人の男を睨みながら質問を続ける。
「渡してほしいといわれても。。この方とどういうご関係ですか?」
「そんなことをお前らに聞く権利はない。」
「だからと言って、はいそうですかとは渡せませんよ」
斎藤は、そういうと二人にゆっくり近づいた。
「とりあえず、お名前は?身分証になるものはありますか?」
その時、背の高い巨漢がスーツの胸ポケットに手をいれた。
磯谷は直感的に、拳銃を想像し身構えたがが出てきたのは、見慣れたバッジだった。
斎藤はその小声で話しをすると、急に顔を怖らばせた。
そして、頭をさげ中年の男を二人に引き渡してしまった。
「おい、ちょっと!おまわりさんよー!助けてくれよ!!なんだよこいつらはよ!」
磯谷はとっさに、中年の男を助けようと向かおうとするところを
斎藤に止められた。
マフィアのような二人は無言で男の両脇をかかえ、喚き散らす男を全く無視するかのように。近くにとめてあった黒塗りのバンに乗り込むとすっと夜の街へ消えていった。
「ちょっと!なんで。。。?」
磯谷は、斎藤に当然抗議した。あきらかに怪しい連中だったし
男も恐怖に震えていたように見えた。警官として同僚の行動はおかしかった。
「いや、しょうがないんだ。今回のことは忘れるんだ。磯谷」
「忘れるって。。さっきの二人はなんなんですか?」
斎藤は下を向き、ただただ無言だった




