TOTO出現
サナが真田と会う前日ーーーー
そう、真田がリカと理由があるとはいえアフターへ行った日。
サナは、「ジャイアン」という飲み屋風スナックにいた。最初、店はサナ一人だったが、ジャイアン店主郷田の言う通り、3時ぐらいになるとパラパラとサナの同業者が来だした。いつもなら一緒に騒いだりすることもあるが、今日は気分が乗らない。
いい頃合いになって、サナは「ごちそうさま〜」と言い、カードで精算し店を出た。
「しょうがない。帰るか…」
サナは携帯の時計が3時を過ぎていたこともあって、タクシーを拾おうとその付近をプラプラすることにした。普段はこんな時間でもタクシーは道端で騒ぐホストの数より多い。だが、この日はなかなか捕まらなかった。
サナは、酔っていたせいもあって、だらりとタクシーを待つことにした。
(イケメン運転手のフェラーリタクシーでもこないかしら…)と、少々妄想じみたことを思った。そしたら、大阪にでもひとっ走りしてもらって、このモヤモヤが吹き飛ぶかもしれないのに〜などとくだらないことを考えていると、急にサナの前に黒塗りのベンツが止まった。
(ん〜、この際、ベンツでもいいや)とどうでもいいことを考えているとガチャとドアが開いて、運転席からハット帽をかぶり、蝶ネクタイが似合う上品な紳士が降りてきた。歳は…つーかおじいちゃん? サナはイケメンじゃないことを若干残念がった。
「こんな時間に、あなたのような美しい女性一人とは…私が家までおくりましょう」
その紳士は、深く礼をするとそう言った。
サナは「おじいちゃん、若干ジブリアニメの見過ぎよ。このご時世にそんなんでついていくおバカさんいないでしょうよ」と心でこっそり言った。
だが、車内を見ても誰も乗っていないし、このおじいちゃんの愛嬌のある笑顔に(悪い人じゃないかも…)と何の根拠もなく思った。
というか、本当のところはもうタクシー待ちがだるかっただけかもしれないが…
サナはもう一度その紳士おじいちゃんを見る。(ん〜、この人ならなんかあっても喧嘩で私が勝ちそうね)サナは、念のため自分が勤めているキャバクラの店長の携帯に1秒でかけらる状態にした。助けにきてくれる保証はないが…
「おじいちゃん、何にもしない?」
「ほっほっほっ。じいちゃんのナンパにそういうものは、ありません」
サナが念のためほとんど意味がなく何の保証にもならない確認をすると、その紳士おじいちゃんは笑いながら答えた。
(よし、行ってみよう…)サナは若干心配はのこったが、最悪クルマから飛び降りればいいと思ったので、紳士の勧めに従って助手席に乗った。すっかりジブリよろしくおバカの仲間入りだ。
「住まいはどちらかな?」
「馬場よ。高田馬場!」
「それはお近くですな。ほほほほ。」
笑い方が特徴的なおじいさんだとサナは思った。でも、声も顔もすごく優しそう…なんとなくサナは安心感がでてくる。
「ところで、なんで私に声をかけたの?もっと綺麗なお姉さんいっぱいいたでしょうに…」
「ほほほ。運命に導かれたと申しましょうか…簡単に言うと年寄りのきまぐれです。ほほほ」
サナの質問に、紳士おじいちゃんはまた独特の笑い方で答える。サナはこの笑い方が段々しつこいと思うようになったが、そこは送ってくれた恩とチャラにした。
しかし、なんか滑稽なおじいちゃんだ。サナは、お店で嫌という程お金持ちを見ている。この人は話方や服装、時計、靴、カブスどれを見ても金持ちの部類だ。だが、なにか彼らの特徴である匂いがなかった。
匂いと言っても香りではなく、独特の自信にあふれた「気」や「雰囲気」みたいなもだが、このおじいちゃんにはそれがしない。
結局、たわいもない会話をしながらクルマは無事、高田馬場にあるサナのマンションについた。
「おじいちゃん、ありがとう!」
サナはそう言うと、助手席からクルマを降りた。するとおじいちゃんもなぜかクルマから降りてくる。サナは心の中に若干危険アラームがなり、部屋に押し入ってきたらどうしようとも考えたが、このおじちゃんにそういう能力がまだ残っているとは思えない…
「えーーと、サナさん…でしたかな。これを。」
と、ゆっくりサナに近づきそのおじいちゃんが胸ポケットから差し出したのは名刺だった。
「!?」サナはびっくりした。その名刺には、
club TOTO という店の名前と
代表 TOTO という名前がかいてあった。
「これって…」サナが思わず口に手をあて、ついに声をだした。
「ほほほ、もしやこの年寄りを知っていらしたかな?」
その紳士おじいちゃん…TOTOは、笑顔を絶やさずサナを見ている。
「おじいちゃん!おじいちゃんに着いていったら…この店にいったら…」
サナの問いにTOTOは、表情を変えず
「とりあえずまずは、一人でいっらしゃいな。サービスするでな…ほほほ」
というと、車にゆっくりと乗り込み、走り去っていった。




