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Subjects Runes【完全版/累計800万PV】~高速詠唱×現代知識で貴族社会を成り上がる戦記ファンタジー~  作者: くまひこ
第3章 古代魔法都市ジオエルビム

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第78話 プロメテウス取引所、始動

 盗賊団のアジトを一つ潰してプロメテウス城に帰還した俺たち。


 その夕食時に父上から、


「秋の叙勲式は2週間ほど先になるが、王都までは7日かかるし来週はプロメテウス騎士団を率いてここを出発する。お前も準備しておけよアゾート」


 叙勲式か。なら来週からクエストを再開できるな。


「父上、俺は転移陣で王都まで飛べるし騎士団を連れていく必要はありません。それに俺の護衛は学園の友達にもう頼んであります」


「だがお前は男爵になるのだから見栄も必要だ。最低でも100騎程度の騎士団を率いて王都に入城するのが普通だぞ」


「貴族の見栄・・・」


 騎士団を動かすのもタダじゃないし、そんなバカバカしいものに時間とお金を使いたくないなと思っていたら、


「それでしたらお父様から騎士団をお借りできるよう、わたくしからお願いしてみましょうか?」


 その言葉に父上が飛びつく。


「そんなことできるのか、フリュちゃん!」


「はい。わたくしがアゾート様と共にある限りは、なるべく便宜を図るとお父様がおっしゃってくださいましたので」


「それはありがたい。ならワシはフェルーム騎士団と合流してダリウスと共に王都に向かう。うちの騎士団は引き続き盗賊討伐の任に当たらせよう」


 これで叙勲式の件は上手くいきそうだ。


 学園に戻ったらみんなを俺の護衛騎士に登録して休暇願いを提出して、フィッシャー辺境伯領に飛んでもらおう。



         ◇



 翌朝、息子のアゾートはフリュちゃんと一緒に学園に帰って行った。


 あの子から財務卿を任された私は、商業ギルド内にできたプロメテウス取引所の開会式に出席している。


 夫ロエルは盗賊討伐の陣頭指揮をとるため早朝から騎士団を率いて城を出発し、母親である私がメルクリウス男爵家を代表して開会の挨拶を行った。


 大ホールは取引の開始を待つ商人たちの熱気で溢れかえっており、商業ギルド長がオープニングベルを鳴り響かせると、場内に大歓声が沸き起こった。


 さあ、戦いの始まりだ!




 プロメテウス取引所の目玉はやはり帳簿取引。私はアゾートの指示通り「売り」から入った。


「さあ売って、売って、売りまくるわよ!」


 私の売り注文で穀物の帳簿価格がどんどん下落していく。


 便乗して売ってくる商人もいれば、買いに走る商人もいる。


 売り注文と買い注文が交錯し、場内の喧騒が1オクターブ増した気がする。



         ◇



「買って、買って、買いまくれ!」


 ロディアン商会の会頭室では、部下に指示を飛ばす中年男性の声が響き渡っていた。


 プロメテウス取引所の開設初日から、穀物の取引が活性化。


 刻一刻と変動する穀物価格を報告する部下たちが、会頭室と取引所の間を駆け回った。


 最初は執務室に座ってじっくり構えていたロディアン会頭だったが、


「ええいまどろっこしい! 今日の来客予定は全てキャンセルしろ! 俺が取引所に乗り込んでやる!」




 ロディアン会頭が商業ギルドの大ホールに入ると、正面に設置されたボードの数字を少年たちが忙しそうに交換している。


 その数字が示しているのは穀物価格だ。


 しばらく数字を見ていた会頭だったが、最初に帳簿価格が下落を見せると、現物価格がそれを追いかけるように下落していくのに気がついた。


 なるほどそういう仕組みか・・・だとすればこれは千載一遇のチャンス!


 この取引所を上手く使えば、リスクをとらずに利ざやだけ抜けるじゃないか!


「よし穀物は「現物買い」だ! 買って、買って、全て買い占めろ! 全部買い漁ってプロメテウス領の蔵を空にしてやれば、実需買いが殺到して穀物価格は天井知らずだ!」


 それにしても面白いことを考えるものだな、ここの領主は。


 帳簿取引か。


 架空の取引を活発化させて現実の穀物価格を安定化させるなんて、貴族の坊ちゃんとは思えないほどのぶっ飛んだ発想。


 だが貴族が商人のまねごとをしたら痛い目に会うことを、この俺が教えてやる。


 最後に勝つのは、この俺だ!



 商人魂に火がついたのか、会頭はその精悍な顔立ちをさらに引き締め、心は熱い闘志がみなぎっていた。



          ◇



 領地から学園に戻って三日後、母上が俺に会いに突然学園にやって来た。


「アゾートの言うとおり「帳簿売り」を大量に入れたら、最初は帳簿価格の下落に連られて現物価格も下がってきたの。でも例のロディアン商会が現物に大量の買い注文を入れてから思ったほど価格が下がらなくなったの」


「現物を買い漁っているのか」


「そうなの。それで最初は私の売りに便乗していた他の商人たちも、自分の蔵の穀物がどんどんロディアン商会に買い取られていくのを我慢できず、売り注文を止めて価格が上昇に転じてきたの」


「なるほど。城下町の店舗の小売価格はどうなってる?」


「あまり下がってないわ。しかも穀物がどんどん領外に運び出されて行って、このままでは食糧問題の解決どころか大飢饉が起こりそうな勢いよ」


「穀物が流出・・・ロディアン商会は買った穀物をどこに運び出してる?」


「倉庫に入りきれなくなった分は全てソルレート領にある商会本店の倉庫に運んでいるはず」


「なるほど、そこでソルレート伯爵から穀物量に応じた補助金をもらって、その資金でさらに買い注文を入れているのか。ところでダリウスの蔵には穀物の在庫はあったっけ?」


「確か多少の余裕はあったはず。もしもの時には食糧支援をお願いするのね」


「ああ。それと今年の収穫予想は「豊作」でいいんだよね?」


「今のところはそうね」


「わかった。ならここからは資金量の勝負になる。俺たちは引き続き売りを継続。あっちこっちからお金を借りて証拠金をぶち込むことになるけど、ここは絶対に引いちゃダメだ」


「・・・本当に大丈夫なの?」


「大丈夫だよ。最後に勝つのは俺たちだ!」

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