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Subjects Runes【完全版/累計800万PV】~高速詠唱×現代知識で貴族社会を成り上がる戦記ファンタジー~  作者: くまひこ
第3章 古代魔法都市ジオエルビム

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第69話 クレイドルの森ダンジョン

 夕闇のクレイドルの森に足を踏み入れる俺たちのパーティー。


 森の入り口に設置された冒険者ギルドからダンジョンまでが歩きとなるのは、このダンジョンが王国魔法協会の管轄で冒険者ギルドとは転移陣をつなげていないからだ。


 Aランク冒険者のバランが先頭を歩く。


「ようやく俺たちの出番だな。転移陣でここまで連れてきてくれたのはありがたいが、一日中休憩ばかりで少し飽きてきたところだ。ここからは俺たちに任せろ」


 だがパーラが突然、オッサンたちの意気込みを無視してパーティー全体を覆うマジックバリアーを展開した。


【無属性初級魔法・マジックシールド】


「魔獣ごときに傷一つつけさせませんので、安心して私のバリアーの中に入っていて下さいませ、ダン様」


 そう言ってニッコリとほほ笑むパーラの頬が、ほのかに熱を帯びている。それを見た俺は、


「・・・おいダン。パーラはいつもこんな感じなのか?」


 そう耳打ちするとダンは、


「・・・ああ。何か妙に気に入られている気はする。でも彼女の性格がよく分からず一抹の不安がない訳ではない・・・大丈夫かな俺」


「そういうことは俺にはわからんが、とにかくまあがんばれ」


 一方オッサンたちは、さっきから何やら騒がしい。


「何だこれはっ! 魔獣がバリアーに弾かれて俺たちに近づいて来ねえ!」


「これじゃあ、俺たちの強い所を全然見せられねえじゃねえか!」


 活躍の場を失ったオッサンたちが、ただ焦っているだけだった。




 結局、襲い来る魔獣を全てバリアーで弾き飛ばしながら、俺たちは何事もなくダンジョンにたどり着くことができた。


「ふう疲れた。あとはお願いねアネット」


 そう言ってアネットに命令するパーラの表情は、ひと仕事を終えた満足感でとても満たされていた。


 アネットはそんなパーラに「やれやれ」とため息をついた。まるでダメな妹の世話をするお姉さんのように。


 この二人の関係って一体・・・。



         ◇



 さてクレイドルの森ダンジョンは中が巨大な地下空洞となっており、入り口にある魔法協会の転移陣にパーティーメンバーを登録することで攻略した階層まで跳躍することができるようになる。


 これは冒険者ギルドからの要請によるもので、ライバル関係にある冒険者同士の公平性を期すため、その全員が1階層から自力で攻略しなければ先に進めないようにしたからだ。


 ということで初めてここに来た俺たちは今回はここで登録をするだけ。自分の足でダンジョンの中に踏み入れて行った。


 その第1層は何の変哲もない地下空洞だったが、中はかなり広く見通しもよい。


 俺たちは大所帯パーティーなので5列のフォーメーションを組んで慎重に進む。


 1列目は物理アタッカーの、ダン、カインとオッサン3人。


 2列目は魔法アタッカーの、セレーネ、俺、ネオン。


 3列目は遠距離魔法担当の、フリュ、ユーリ、サーシャ


 4列目は防御や支援魔法の、アネット、マール、パーラ


 そして2列目から最後列をぐるりと取り囲むサー少佐とネオン親衛隊。主力魔導師の詠唱を外側の騎士が守る教科書通りの鉄壁の布陣だ。




「前方にスライム発見。一気に蹴散らすぞ!」


 オッサンたちがスラリと剣を抜く。


 【火属性初級魔法ファイアー】


 だがそんなオッサンたちの頭上を越えて、セレーネのファイアーが着弾。スライムたちを一瞬でなぎ払った。


「さあ、行きましょう」


「お、おう・・・」




 その後も魔力に余裕のあるセレーネとフリュオリーネのコンビが魔獣をことごとく瞬殺していき、俺たちはただ散歩をしているだけで第2層に到着した。


「俺たちの魔力も十分回復したし、二人はもう交代だ。少し休んでいてくれ(やることがなくて俺が退屈なんだよ)」


「このくらい全然平気だけど、ありがとうねアゾート!」


「わたくしたちの力が必要な時は、いつでもおっしゃってくださいませアゾート様」


「もちろんその時は頼むよ(多分ないけど)」



         ◇



 第2層も洞窟が続くが、今度は地形が複雑で見通しが悪い。そんな岩影から突然コボルトが飛び出してきた。


 パーン!


 だが俺が魔法を放つよりも早く、ネオン親衛隊の小銃が火を吹いた。


「親衛隊、前へ!」


 少佐の命令により、側面を警護していた8名が最前列に移動して銃を構える。


 そこからは岩影から飛び出してくる魔獣を親衛隊が片っ端から撃ち殺し、俺たちは第3層まで到達した。




「ふわぁぁっ・・・退屈ね」


 ユーリが大きなあくびをする。


「ユーリ、あくびなんてはしたない。退屈だったらあなたも戦いに参加なさい」


 姉のサーシャが腰に手を当てて妹をたしなめる。その姿はまさに俺のイメージする学級委員長である。


「・・・仕方がないですわね。今回だけですから」


 そう文句を言いながらもユーリは愛用の魔法の杖を構えており、やる気十分に見える。


 長い階段を下りた先に現れた第3層の景色は、だだっ広い平原だった。どういう仕組みか分からないが頭上の岩壁が光を放ち、中が昼間のように明るい。


 そして前方には早速ウォーウルフの群れが現れた。数にして200匹以上はいる。


「ようし、俺のエクスプロージョンで全部吹き飛ばしてやる」


 俺が腕まくりして気合を入れると、


「草原で火属性魔法を使うのはお止めなさい。代わりにこのわたくしが戦って差し上げます。行くわよアネット」


 ユーリがそう言うと、アネットを連れて最前列に立った。


 そしてアネットの展開したバリアーがパーティー全体を包み込むと、その外側でユーリのウィンドカッターが猛威を振るった。


 俺たちに襲いかかってきたウォーウルフの大群が風の刃でどんどん切り刻まれていき、血飛沫が舞い散って肉片が飛び散った。


 そして俺たちの通りすぎた後には、無残な死骸の山が築かれていた。


「アネットのバリアーって本当に素敵。これならわたくしの服も汚れなくていいわ」


 コイツやっぱり服が汚れるのを気にしてやがった。そもそもお前の風魔法ウィンドカッターは、服の汚れを気にしてたら一切使えないだろうが!


 そう心の中でツッコミを入れたのも、俺の出番が全然なくて暇だったからだ。戦いたくてウズウズするし、気分よくエクスプロージョンをぶっぱなしたい。


 隣のネオンもウズウズしてるが、おそらく俺と同じ気持ちなんだろう。



         ◇



 第4層は溶岩が流れる洞窟だ。とにかくメチャクチャ暑い。

 

 そして出てくる魔獣も火属性ばかりなので、ここでも俺たちの出番はなかった。水属性魔法の独壇場だから、ダンのやつまで魔法で活躍していやがる。


「あー暑すぎる! 早くここを通り抜けないと干からびちまうぜ。アゾートたちはいいよな。あの魔獣と同じ火属性だし、こんな暑さは平気なんだろ?」


「いや俺は人間だし、普通に暑いわ!」





 第5層はゴツゴツし岩場がずっと先の方まで続いている。


「このあたりで少しを休憩しよう。今が2日目の明け方だから、残り半分を切ったな」


「敵の強さによりますが、上手く行けば昼過ぎには第7層辺りまで進めそうですわね」


「だが低階層でも強い魔獣が出るという話だし、そう上手くは行かないはず」


 俺とフリュの会話を横で聞いていたオッサンたちは、サー少佐に声をかけると隅の方でコソコソ話し合った。


「コイツら感覚がおかしくねえか? ここまでの魔獣でも普通はこんな簡単に突破できないはずだ。魔獣の数が多すぎてな」


「どいつもこいつも魔法が強すぎて、殺られる魔獣に同情するしかねえ。ていうかこのパーティーって魔導師しかいねえし、バランスが完全にイカレてやがる」


「なあ、俺たちがここにいる意味って本当にあるのか?」


「だから言っただろ。お前らはただ名前を貸すだけでいいって」


「確かにお前の言う通りだった。ギルドの規則は変えて、こいつら全員Aランクにしろ!」


 サー少佐の言ってた意味をようやく実感するオッサンたちであった。





「ねえゴーレムよね、あれ」


 第5層に転がっている巨岩の中に擬態した岩石型魔獣を発見した俺たち。


 しかも岩の何割かは魔獣だったみたいで、全部で何体いるのか考えたくもないほどたくさんの魔獣が俺たちに襲いかかる。


 そのどれもがとても巨大で重量感があり、動きは緩慢だがパワーがある上に身体が硬く防御力も高い。


 このタイプの魔獣に対抗するにはアネットたちのバリアーでは不安が残るし、ネオン親衛隊の銃も全く効かない。


 俺達の火属性魔法で倒せないこともないが、魔力効率が悪く意外と攻略が難しい。


 俺が悩んでいるとセレーネが話しかけてきた。


「アゾートはゴーレム魔法を使えるのよね。だったらゴーレムを召喚して戦わせてみたら?」


「うーん、魔獣の数が多すぎて同数のゴーレムを作り出すには魔力が足りない。それにゴーレムって魔力を使う割にはそんなに強くないし、正直使い道に困るんだよ」


「へー、そうなんだ・・・」


「だったらいよいよ俺たちの出番だな」


 オッサン達が指をボキボキ鳴らしながら、魔獣に向かってゆっくりと歩みを進める。


 確かにゴーレムに対しては地道に物理攻撃を繰り出してその身体を砕いて倒すのが確実だが、今回は数が多すぎて正面から戦うと攻略に時間がかかりすぎる。


 だが俺はここでいいことを思いついた。


「ネオン、魔獣の足の関節を狙うぞ」


「関節? ・・・そ、それってまさか」


「土魔法ウォールを使う」


「やっぱり! その魔法はもう飽きた!」


「ツベコベ言わずに俺に続け!」


「ひーーーっ!」


 俺たちは超高速知覚解放を使用し、岩石型魔獣の間をすり抜けながら足の関節部分に直接手で触れ、土属性初級魔法ウォールを唱えた。



  【永遠の安住地】



 すると手に振れた魔獣の関節部分が、その瞬間ただの岩石にすり替わった。


 ドシーーーン!!


 土砂や岩石を自由に召喚可能な初級魔法ウォールによって、関節から先が身体から切り離されてしまったその魔獣は、バランスを崩して地面に倒れ込んだまま自分の力で立ち上がれなくなってしまった。


「よし効いた! 大した魔力も使わないし、二人で一気に出口まで駆け抜けるぞ!」


「ひーーーーっ!」


 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】 【永遠の安住地】・・・・


 俺とネオンが魔獣の群れを一気に駆け抜けると、地面に倒れて身体をばたつかせるゴーレムを押しのけるようにパーラのバリアーに守られたパーティーが悠々と先に進んでいった。

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