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Subjects Runes【完全版/累計800万PV】~高速詠唱×現代知識で貴族社会を成り上がる戦記ファンタジー~  作者: くまひこ
第3章 古代魔法都市ジオエルビム

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第68話 領主、始めました

 最初の週末がやってきた。


 プロメテウス城での晩餐会に招待することを条件に魔力供給要員としてサーシャとユーリを加え、全メンバーがボロンブラーク冒険者ギルドに集合した。


 サー少佐はすでにギルドで待機しており、その後ろに冒険者たちが控えている。


「アゾート。こいつらがメンバー募集に応じた冒険者たちだ」


「おうガキども、Aランク冒険者のバランだ。よろしくな」


 クエストの受託条件を満たすために臨時で雇い入れた高ランクの冒険者は、ゴツい感じのオッサンが三人。


 バラン(ランクA)、ノルン(ランクB)、ヨード(ランクB)だ。


「女ばかりのパーティーだな」


 ノルンが嬉しそうに口笛を吹くと、ヨードがそれをたしなめる。


「おいやめとけ! お前ら二人は見てなかったと思うが、彼女たちはあの『蒼バリ』メンバーを瞬殺するぐらい強いんだぞ。手を出すと殺されるぜ」


「はあ? 全然そうは見えねえけどな」


「『蒼バリ』は確かにランクAパーティー一歩手前だが、俺から言わせりゃ汚い手を使ったり上手く立ち回って成果を上げてるやつらだ。それでもこんな綺麗な姉ちゃんたちが簡単に倒せるとはとても正直信じられねえけどな」


 そう言って二人ともまともに取り合おうとしない。そしてヨードもため息をつきながらメンバー全員を見渡す。


「まだ16、7歳の貴族のお嬢様の集まりだし、直接その目で見てなければ誰も信じないだろうな」


 そんな3人にサー少佐が、


「コイツらの強さはこの俺が保証する。お前ら3人の仕事は名前を貸してやることで、良い所を見せようとこの娘たちの前で無理に張り切らなくてもいいからな」




 オッサンたちのことは少佐に任せて、俺は今回のスケジュールを簡単に説明する。


「リーダーのアゾートです。今週末はこんな感じで考えてます。ちなみに移動は全て転移陣です」


1日目朝 プロメテウス領

1日目昼 ポアソン領

1日目夜 クレイドルの森

     ダンジョン攻略開始

2日目昼 ポアソン領

2日目夜 プロメテウス城で晩餐会

3日目朝 ボロンブラーク領、解散


 この説明にダンたちは「当分はしゃあねえな」と納得するが、オッサンたちは唖然とする。


「はああああ?! 何だよ、この無茶なスケジュールは!」


「転移陣を使いすぎだろ! 一体いくら金がかかると思ってるんだよ!」


 このスケジュールが冗談だと思っているオッサンたちに俺は、


「平日は学校があるので当分こんな感じで、毎週少しずつクエストを進めます。転移陣用の魔力は全て俺たちが用意します」


「マジでやるのかよ・・・」


「さ、さすがはお貴族様・・・」


「金持ちはスケールが違う・・・」


 俺は今回の報奨金で魔石を大量に購入し、クエストに支障のない範囲で俺たち魔力保有者の魔力を使い、この2泊3日の強行軍を実現する。


「いざ、プロメテウスギルドへ」



          ◇



 パーティーメンバーがギルドで休憩している間、俺とフリュはシティーホールの執務室で両親からの報告を受けていた。


 プロメテウス領はここ数年領地運営を代官に任せきりにしていたこともあり、いろいろと問題が見つかったようだ。中でも両親が気になったのは以下のことらしい。


・治安の悪化

 庶民の生活が困窮して一部が盗賊化。村々や隊商を襲っているため、領民や旅人の生命が脅かされている。


・食料価格の高騰

 度重なる内戦により耕作地が荒れて食料不足が慢性化。それによる売り渋りや買いだめにより物価が急騰し、盗賊による略奪もそれに追い打ちをかけている。


・産業の不振

 プロメテウス領は山岳地帯が多く、その主産業は中継貿易と鉱業、酪農。貿易は隣接するソルレート領の関税引き上げにより売上減少。それに盗賊による襲撃が重なり生産力も低下。


・軍備建直し

 フェルーム家から独立して騎士団を二つに分けたため、現在プロメテウス領には100騎の銃装騎兵隊を含む200名の騎士しかいない。

 隣接するソルレート領はアウレウス派と敵対する派閥のため軍備強化が急務であり、平民から歩兵を募集して総勢1000人規模のプロメテウス騎士団を来春までに配備。




「さすが父上と母上。短期間でよくこれだけの問題点を洗い出しましたね。しかし思ったより酷い状況だなこの領地は。父上はどこから手をつければいいと思いますか」


「やはり治安維持だな。こう治安が悪いと反乱が怖くておちおち寝てもいられん」


「私は食糧問題だね。この領地は穀物を他領からの輸入で賄ってるけど、このまま価格高騰が続けば冬を越すだけの食料が領民に行き渡らず、餓死者が出るよ」


「なるほど。フリュはどう思う」


「お義父様、お義母様のおっしゃるとおり、領民の生活が最優先だと存じます」


 俺も同感だが、具体的に何をするかだ。


「よし、父上の言うとおりまずは治安維持だ。こんな感じでお願いします」


・銃装騎兵隊を盗賊の討伐に回す

・冒険者ギルドに盗賊討伐クエストを大量発注。

・歩兵の募集を積極的に行い、盗賊予備軍を積極的に雇用


「盗賊は容赦なく殲滅してください。盗賊は割に会わない仕事であることを領民に徹底して、新たな盗賊を生まれにくくします。これは見せしめです」


「見せしめか・・・なら、せいぜい派手にやってやろう」


「仮に盗賊を取り逃すにした場合も、できるだけソルレート領に逃げるように誘導してください。ウチの防衛力不足を盗賊に肩代わりさせます」


「ソルレート領を荒らさせる作戦だな。分かった」


「それからサー少佐には銃装騎兵隊の指揮を改めてお願いしました。父上の騎士団とあわせて協力して対処してください」


「少佐が来てくれるなら百人力だ」


「以上が治安問題ですが、母上の食料問題はちょっと作戦が思い付かないな」


「そうかい・・・じゃあ今から商業ギルドに行って話を聞いてみるかい。知り合いの商人を紹介してやるよ」


「母上が商人を? じ、じゃあ今から行ってみようかな」



          ◇



 商業ギルドはここから歩いてすぐの所にあった。


 母上からギルド長を紹介してもらうと、領内の商業についての説明を受けた。


 要約すると、ボロンブラーク伯爵支配エリアと他領との間を行き来する貿易産品は唯一の街道が通るこのプロメテウス領を通過するため、各領地を代表する商人達がこの城下町に店を構えて活発に取引が行われているとのこと。


 そして実際に穀物の取引を行う現場も見せてもらえることになった。


 街の中心から離れた場所に、商人たちの倉庫が建ち並ぶエリアがあった。たくさんの人夫が穀物袋を肩に担いで倉庫に運び入れている。


「昨日大きな取引が成立して、ある商人の倉庫から運び出された穀物を、別の商人の倉庫に移動させているんですよ」


「すごい量の荷袋ですね。毎日こんな感じで穀物の運搬が行われているんですか」


「取引が活発になるほど倉庫街は人夫で溢れかえりますが、最近の食料価格高騰によってどの商人も倉庫に穀物を抱え込んでしまっているため、こんな活気のある風景を見ることも少なくなりました」


 ギルド長が寂しそうにしている姿を見て、俺は前世の日本史の授業を思い出していた。


 時は江戸時代の日本で、場所は各藩の蔵屋敷が建ち並ぶ大坂。


 そこにできたのが、米価格の安定に寄与したとされる大坂堂島の米合所だ。


 堂島では米取引の際に現物を受け渡しせずに、帳簿だけで取引を行う帳合米取引が行われていた。秋に収穫される米の買い付け価格を事前に取引するもので、いわゆる先物取引の先駆けだ。


 帳簿上で売買を行えば取引の度に米を輸送する手間がなくなり、期日にのみ現物の受け渡しを行うだけでよく、また、現物のやりとりも行わずに相場の変動に合わせて金銭のやり取りだけで済ませる差金決済もできるため、売買がより活発になる。


 売買が活発になれば価格も安定した動きを見せ、現物市場の需給の悪化で取引が成立しなかった場合のバッファーにもなり、穀物価格が乱高下するのをある程度は防止できる。


「ここプロメテウス領に、江戸時代の大坂のような取引所を作ろう」


 期日に必ず現物が受け渡されることが保証されれば商人たちも安心して帳簿売買が行えるし、アウレウス伯爵やサルファー配下の領主たちにも呼び掛けて現物供給の後ろ盾になってもらえればウチだけでなく各貴族家の食糧供給も安定する。


 ギルド長にアイディアを伝えると、俺はさっそく動き出すことにした。




 母上とは商業ギルドで別れて、俺とフリュは冒険者ギルドに向かう。


「あ、そうだ母上。明日の夜は城で晩餐会を開いてみんなを泊めたいんだけど」


「構わないけど何人いるの?」


「30人ぐらい」


「それぐらいなら平気だよ。準備しておくから気をつけてね」



        ◇



「アゾート、そろそろ起きて」


「ネオンおはよう・・・あ、そうか。クエスト中か」


 ここはシャルタガール侯爵領東部、クレイドルの森に設置された冒険者ギルドの仮眠室。


 辺りを見渡すとすっかり日は暮れていた。時間だ。


「サーシャとユーリはここで待っていてくれて構わないがどうする?」


「私は行きたいんだけど妹のユーリが嫌がるのよね。ダンジョンは服が汚れるから」


 サーシャが残念そうにそう言うと、だがユーリは気が変わったようだ。


「一緒に入って差し上げてもよろしくてよ。どうせここにいても暇だし見てるだけなら服も汚れませんしね」


「分かった。来たいなら来てもいいが自分の身は自分で守れよ。よしみんな、攻略不可能と評判のクレイドルの森ダンジョンだ。気を引き締めて行くぞ!」


「「「おおおおおっ!」」」

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