第67話 真の冒険者ランク
情報収集も終わり、メンバー募集の紙を掲示板に張り出した俺は、ギルドから帰ろうとしたところで後ろから肩を強く捕まれた。
「ちょっと待ちな兄ちゃん」
振り返るとガラの悪そうな男たちがニヤニヤと笑ってこちらを見ていた。
あまり見かけない顔だが、この街の冒険者じゃないのか?
「かわいい姉ちゃんをたくさん連れて随分と意気がってるじゃないか。悪いことは言わんから姉ちゃんたちをここにおいて男は消えな」
「姉ちゃんたちは俺たちがかわいがってやるから安心しな。イヒヒヒ」
騎士学園の制服を着た俺たちにチョッカイかけるとは、コイツら余所者で確定だな。
だがギルド内でのケンカはご法度で、この場合はどうしたらいいのか迷っていたら、顔見知りの冒険者たちが間に入ってくれた。
「お前らはバカか? ここにいるのはボロンブラーク騎士学園の生徒さんたちだぞ。お貴族様に対して失礼な口を利いてんじゃねえ!」
「はあ? 騎士学園って何だよそれ? お貴族様か何か知らねえけど、金持ちの道楽で冒険者なんかやられちゃこっちが迷惑なんだよ。俺たち『蒼き旋風のバーバリアンズ』の邪魔をするな!」
「なんだって? お前らあの『蒼バリ』のメンバーかよ!」
「今、ランクAパーティーに一番近いと言われているあの」
「なんでそんな人たちがこんな王国辺境の街なんかに・・・」
パーティー名を聞いて酒場がザワめき始めたが、どうやらよほど名のある冒険者らしい。顔見知りの冒険者たちが尻込みすると、さっきの男が俺に顔を近づけてきた。
「わかったら女をおいてとっとと帰んな、貴族のお坊っちゃんよ。クククク」
男はバカにしたような顔で、俺の胸元を締め上げた。
「まあ待てよお前ら。ギルド内でのケンカはご法度だし、やるなら裏の闘技場でやれ」
だがそこに受付嬢と何かを話していたサー少佐が仲裁に入り、ギルド奥にある扉を指さした。
「闘技場か、面白い。ならガキどもを血祭りに上げて、姉ちゃんたちに大人の男の魅力というものを見せつけてやるか」
◇
闘技場で『蒼バリ』メンバー7名と対峙する俺、ネオン、ダン、カインの4人。
「おいおいおい、いくら何でも4人で勝てると思ってるのかよ。何なら後ろのお姉ちゃん達の力も借りた方がいいんじゃないか?」
「女をいたぶるのも悪くねえなし、女の相手はこの俺にやらせろや」
いずれもひげ面の汚いオヤジたちは、性根もクズのようだ。
「お前ら7人いるし人数は揃えてやる。決闘形式の個人戦で構わないな」
「ああいいぜ。できるだけかわいい子を用意してくれよ」
俺はみんなを集めて作戦会議を行った。
俺たちのメンバーはすぐに決まり、ギルド職員立ち会いのもと今から決闘が始まる。
相手を殺す以外はなんでもありで、降参させるか戦闘不能にすれば勝ち。
またパーティーの勝敗は勝ち数ではなく大将が負けを認めるかどうかだそうで、大将戦の勝敗で決まってしまう可能性もある。
そんな中、うちは闘技大会の順位の低い方から俺、ネオン、ダン、カインの順に出場。そのあとは女性陣にバトンタッチしてアネット、セレーネ、フリュオリーネへと続く。
女性陣がかなりお怒りなので、メンバー選定がガチである。
「では、第一試合はじめ!」
一番手は俺だ。
ランクAパーティーに昇格間近の冒険者の実力がどれほどのものなのか、頭の悪そうなひげオヤジだが決して侮ってはいけない。
まずは様子見のファイアーを放つ。
【焼き尽くせ】
パリン!
「なんだと?」
高速プラズマ弾が相手に命中したが、破砕音とともにいとも簡単に弾かれてしまった。
もちろん相手は無傷である。
「そんな魔法効かねえよ、バーカ」
威力が足りなかったのならエクスプロージョンで。
【火属性上級魔法エクスプロージョン】
ひげオヤジの頭上に魔法が炸裂するも、相手はやはり無傷。
魔法自体が無効化されるのか?
「・・・危ねえガキだな。いきなりそんな大魔法を使いやがって」
無傷ではあるが冷や汗を流すひげオヤジ。
魔法がダメなら物理攻撃だ。
超高速知覚解放を発動させて超速の連打を繰り出した。
さすがに俺のスピードにはついて来れず、面白いように攻撃がひげ親父にヒットする。
サンドバック状態のヒゲオヤジに、だがダメージが一切通らない。
パリン!
また何かが割れる音がし、俺はさらに攻撃を続ける。
パリン!
「ちょっと待ったあっ!」
「ん?」
「この護符はかなり貴重なものなんだ。ちょっと攻撃を止めてくれ」
「護符だと?」
なるほど、そういうことか。
なら俺は容赦なくファイアーを連射しよう。
【焼き尽くせ】 パリン!
【焼き尽くせ】 パリン!
【焼き尽くせ】 パリン!
【焼き尽くせ】 パリン!
【焼き尽くせ】 パリン!
【焼き尽くせ】 パリン!
【焼き尽くせ】 「ぐあああっ!」
よし、護符が全て失くなったようだな。
俺がさらにファイアーを撃ち続けると、ダメージをもろにくらったひげオヤジはたった3発で戦闘不能となった。
これでまず1勝だ。
◇
「第二試合はじめ!」
ネオンが俺と全く同じようにファイアーを放つが、
「お前もさっきの奴と同じかよ! 降参、降参。こんなの金がいくらあっても足りねえよ」
ネオンがあっさりと勝利を掴み、これで2勝目。
そしてダンが大剣を担いで前に出ると、
「ちょっと待ってくれ。まさかお前もファイアーを連発するのか?」
『蒼バリ』のひげ大将が恐る恐る尋ねるとダンは、
「俺たちは魔法は使えない。この剣で勝負だ!」
「そ、そうか・・・なら試合再開だ」
「・・・・・」
ひょっとして、こいつら。
◇
第三試合のダン、第四試合のカインは共に冒険者らしい真っ向勝負の闘いだったが、二人とも危なげなく勝利した。
どうやらこの二人、ひげオヤジレベルの冒険者よりも遥かに強いらしい。
そしていよいよ第五試合目はアネットの登場だ。彼女がどんな闘い方をするのか大変興味深い。
ちなみに俺たちは既に4勝していて勝ち越しが決まっているが、相手の大将が負けを認めない限り試合は続く。
「やっと姉ちゃんたちに順番が回ってきたぞ。俺たちの戦いはここからだ! ウヒヒヒ」
「第五試合はじめ!」
試合開始早々、アネットが唱えたのは魔法防御シールドだった。
【無属性初級魔法・マジックシールド】
キーン!
そのバリアーに相手のひげオヤジが剣を叩きつけるが、全くびくともしない。
しかもアネットの「えい!」という掛け声とともに、バリアーが前に押し出される。
するとバリアーの勢いとともにひげオヤジも一緒に真っすぐ押し出され、物凄いスピードで飛んでいったかと思うと、闘技場の壁とバリアーの間にサンドイッチにされて壁にめり込んでしまった。
「なにこの攻撃! 恐っ」
しかもひげオヤジがピクリとも動かなくなり、ギルドスタッフが慌てて生死の確認を行ったが、戦闘不能と判断されてアネットの勝利となった。
そして一瞬で勝負が決まったひげオヤジたちが真っ青な顔でドン引きしている。
「さあ次は私の番ね。アゾートによくも酷いことしてくれたわね、覚悟なさい!」
セレーネがかなりお怒りの様子。
「おいおいおい、メチャクチャ美人じゃねーか! これだったらボコボコにされた方がむしろご褒美なんじゃねえのか」
「羨ましいなお前・・・俺に変わってくれよ」
「嫌だよバーカ」
そんなひげオヤジたちのやり取りを、セレーネは汚物を見るような目で見ている。
「第六試合はじめ!」
初手、セレーネは火属性中級魔法フレアーを選択。
高速詠唱により、いきなり相手のひげオヤジを地獄の業火が包み込んだ。
もちろんその火は消えることなく、いつまでもその場に持続する。
パリン!
パリン!
パリン!
パリン!
パリン!
パリン!
パリン!
パリン!
パリン!
「ぎゃああああっ!」
結局ひげオヤジはセレーネに一歩も近付けることなく、戦闘不能により敗北。
セレーネの勝利だ。
「よーしわかった、俺たちの負けだ! おとなしくこの街から出・・・」
『蒼バリ』のリーダーであるひげ大将が慌ててこの場を立ち去ろうとしたが、その言葉を遮るようにフリュオリーネが放った中級魔法サンダーストームが炸裂。
ひげ大将の全身に電撃が走った。
セレーネのフレアと同様その場にとどまり続ける雷撃の嵐に、ひげ大将は全ての護符を破壊された上に致死すれすれの電撃を浴びせかけられて失神した。
「アガガガガ・・・」
「わたくしのアゾート様に無礼を働くなど万死に値します。試合だからこの程度で済ませて差し上げましたが、戦場ではこうはならないことを覚悟しておくことね」
大きな団扇で口もとを隠し、氷のような冷たい瞳でひげリーダーを侮蔑するフリュオリーネ。
その姿はまさに氷の女王であった。
大歓声が観客席を埋め尽くす中、サー少佐がギルド職員の一人に耳打ちした。
「なあ、こいつらの強さはランクAパーティーに十分匹敵すると思うのだが、それでも例のクエストに挑戦させてやれねえのか?」
「確かにこの強さなら十分資格はあると思うのですが、何ぶんギルド本部が決めたルールですので私どもの判断ではなんとも・・・」
「せっかくお膳立てまでしてやったのに、全くしょうがねえなお前らは」




