第66話 攻略不可能! 噂のダンジョン
夏休みが明けてようやく日常が戻った。
新たにフリュオリーネを加えたメンバーで食堂に行くと、他の生徒たちは俺たちを見てギョッとしたが、俺は気にすることなく食事を始める。
夏休みは気の休まる日が一日もなかったので、こんなにのんびりとした日常を過ごすのは実に久しぶりなのだ。
「そういえばダン、夏休みに言ってた俺好みのダンジョンの話を教えてくれよ」
「ああ、あれか。古代魔法文明絡みでお前が好きそうだから行かずにとってあるぞ」
「古代魔法文明! 面白そうじゃないか」
「だろ? しかも冒険者ギルドでも話題のクエストで、どのパーティーもまだ攻略できていない。それでクエストランクがどんどん上がっていき、とうとう昨日ランクAクエストになっちまった」
「ランクAクエスト・・・強い魔獣でもでるのか?」
「それもある。序盤からやたら強い魔獣が出てくるようで、名のあるパーティーでも13層より先にはどうしても進めないらしい」
「というと?」
「なんでも強力な魔法障壁があって、強引に進もうとすると身体が真っ二つに引き裂かれる」
「・・・え?」
なんか恐いな。
「ただ古代文明の祭壇らしきものも見つかっていて、新しい古代魔法を手に入れるチャンスかもしれないぞ」
「祭壇が見つかってるのか!」
古代魔法・超高速知覚解放は、新入生歓迎ダンジョン「エッシャー洞窟の古代魔法遺跡発掘」というクエスト中に発見した。また未発見の魔法を手に入れるチャンスなので、是が非でも行ってみたい。
「その魔法障壁は近づかなければ平気なんだろ? 新魔法だけでも入手しておきたいし、その祭壇にアクセスできれば・・・よし、みんなで行ってみるか!」
「おうよ! 攻略には時間がかかりそうだし週末ごとに少しずつ進めていこうぜ。問題はパーティーメンバーだが、ランクAクエストになっちまったから受注できるのはランクB以上のパーティーに限られる」
「じゃあどこかのパーティーに入れてもらうしかないな。今日の放課後、早速ギルドに行って情報収集から始めるか」
「だな。ちなみに俺は夏休みにクエストをこなしてランクCまで上がった。マールも同じだ」
「マジかよ・・・俺は夏休みに何もしていないからDのままだよ」
◇
「・・・で、お前たち全員クエストに参加したいと」
放課後、冒険者ギルドに集まった俺たちを見て、ダンがげんなりした。
と言うのもダンジョン部部員の俺、ネオン、カイン、マール、セレーネの5人は当然分かるとして、フリュオリーネとネオン親衛隊の12名の他にパーラとアネットの姿まであったからだ。
なおダーシュとアレンも行きたがっていたが、ギルド協定で伯爵以上の上級貴族は冒険者ギルドを利用できないため不参加。そしてユーリは元々ダンジョンが嫌いなのでパスとのこと。
「何で伯爵以上はダメなんだ?」
俺はギルドの受付嬢に聞いてみた。すると、
「このギルドは冒険者の互助組織で、クエスト報酬で生活が成り立つように支援するのが仕事なの。貴族は魔導師としてメンバーに加わってくれるから助かるんだけど、単独でクエストを乱獲されると他の冒険者たちの生活が成り立たなくなる側面もあるのよ。だから王国と冒険者ギルドとで協定を結び、伯爵位以上の貴族はギルドを使用できないようにしたり、貴族だけのパーティーを作らせないようにしたの。あなたたち騎士学園の部活は例外だけどね」
「なるほどな。よし、全員の冒険者登録はとりあえず終わったけど、全部で21名かあ。こんな大人数を入れてくれるランクBパーティーなんて本当にあるのかなあ」
俺は酒場にたむろしている冒険者の男たちを見渡す。昼間っから酒をあおって管を巻いている連中の中から馴染みのある声が聞こえた。
「よう、アゾートじゃないか。無事だったんだな」
「サー少佐! そちらこそ無事でよかった」
サー少佐は奥さんと二人で身を隠すと言っていたが、内戦の終結によりまた領都の冒険者ギルドに戻って来れたようだ。
「隊長に敬礼!」
ザザッ! ザザッ! ザザッ!
突然ズザザザと音がしたかと思うと、ネオン親衛隊とセレーネの13人が少佐に敬礼をする。
そういえばセレーネも真夏のブートキャンプに参加して戦闘訓練を受けていたな。
「お前たち全員が無事で何よりだ!」
「ハッ! 隊長もご無事で何よりです!」
・・・こいつら女騎士というより、軍人だな。
「ところでアゾート、こんなむさ苦しいギルドに美少女をたくさん連れて何の用だ。自慢しに来たのか?」
「そんなしょうもないことをしに来るかよ! 実は『クレイドルの森ダンジョン探索』に挑戦しようと思って、入れてくれそうなランクBパーティーを探してるんだ」
「あの攻略不可能と噂のダンジョンか! みんな一山当てようと躍起になってるし、あのクエストに挑んでるパーティーならたくさんある。だがさすがにこの人数は多すぎるだろ。分け前が減るしみんな嫌がるぞ」
「だよな・・・」
「ていうかお前は貴族なんだから金は持ってるだろ。だったらランクA、Bクラスの冒険者を雇い入れて新しくパーティーを作ればいい」
「なるほど、その手があったか。なら少佐にもお願いできますか」
「報酬次第だがOKだ。俺の冒険者ランクはBだから、あと2,3人ランクBを集めればランクBパーティーが作れる。そこの掲示板で募集をかけるといい」
「了解だ」
「しかしギルドのルールは面倒だな。俺が見る限り、お前らの実力なら今でもクエスト参加資格は十分あるのにな」
「ええ。戦力は十分だと思うんですが、学校の部活なのでクエスト達成ポイントが全然足りないんですよね。2年生のセレーネでもまだランクCですから・・・」
俺がそう言うと、サー少佐がセレーネの方をちらっと見た。
「セレーネがランクC・・・単純な攻撃力ならランクAを余裕で超えてるぞ。それによく見ると、お前さんの後ろにいるのはフォスファー軍の参謀殿じゃないか」
少佐がフリュオリーネを見つけて、目を丸くする。
「ええ。今は俺たちの味方で、冒険者ランクは俺と同じDです」
「お前ら二人揃ってランクD・・・」
サー少佐も貴族の決闘でセレーネと戦ったフリュオリーネの強さは目の当たりにしている。
「そういえば今回のクエストとは関係ないですが、また銃装騎兵隊の隊長をお願いしていいですか。内戦の戦功でプロメテウス領の領主になったんですが、フェルーム騎士団から銃装騎兵隊を引き取ることにしたんです。報酬は弾みますから」
「それは願ったり叶ったりだ。冒険者との二足の草鞋になるが、よろしく頼むよ領主様」
その後俺たちは、酒場の冒険者相手に情報収集を行った。セレーネやダン、マールには馴染みの冒険者が多くみんな協力的で、得られた情報をまとめるとこんな感じだった。
『クレイドルの森ダンジョン探索』
クエストランクA
ダンジョンの場所はシャルタガール侯爵領にあるクレイドルの森。今回のクエストはダンジョン内部に見つかった古代魔法文明遺跡の調査隊の護衛業務、もしくは、ダンジョン第13層にある魔法障壁突破方法の解明。
ダンジョン入り口には転移陣があり、各層の攻略者はその転移陣を使って攻略済みの層まで転移することができる。またクラン登録をすれば、複数パーティー同時に100名まで転移させることも可能。
このダンジョンはアージェント王国魔法協会の管轄であり、古代魔法文明の遺物については協会が所有権を有するものの、それ以外の財宝は発見した冒険者の所有が認められる。
「クレイドルの森まではほぼ王国横断ぐらいの距離があって、一度でジャンプするのは無理。だから最初に学園からプロメテウス領までジャンプして、魔力回復を待ってからポアソン領にジャンプ。そこから北上してクレイドルの森までジャンプだ」
「そんなことしたら、ダンジョンで魔力が足りなくならないか」
「休みを取りながら進めば自然回復分ぐらいは残るはず。それで行ける所まで行こう」
「うへぇ・・・長丁場になるがしばらくは週末ごとに少しずつ攻略するしかないか。まとまった休みがほしいが、冬休みまでまだだいぶあるよな」
「冬休みって、昨日夏休みが終わったばかりじゃないか! ・・・そうだ、秋の叙勲式が使えるんじゃないか?」
「叙勲式って?」
「国王陛下から男爵位を賜るための儀式があるんだけど、領都ボロンブラークと王都アージェントの間を騎士団を率いて往復するのに3週間はかかるから、その間は学園を休むことができる。つまり今回のパーティーメンバー全員を俺の護衛騎士として学園に申請すれば全員3週間の休みが貰えるし、騎士団の指揮は俺の父上にでも任せて俺たちはその期間のほとんどをダンジョン攻略に回せる」
「頭いいなお前!」
「だろ。知将と呼んでくれて構わないぜ」
「よし、そうと決まればさっそく今週末からチマチマ攻略して、秋休みは存分にダンジョンを攻略するぞ!」
「おーっ!」




