第46話 誕生、銃装騎兵隊
ズラリと勢ぞろいした100人の精鋭たちを前に、俺は声高らかに宣言する。
「フェルーム騎士団・銃装騎兵隊の結成をここに宣言する。俺がこの部隊の運用を任された指揮官のアゾートだ!」
ザザザザッ!
騎士たちが一斉に膝をついて、この俺に忠誠を誓う。
「そしてここにいるサー少佐が、これから君たちの指導を行う教官だ。少佐の命令によく従って、銃による戦い方を学び錬度を高めよ。以上だ!」
ザザザザッ!
決まったっ!
こういうのを一度やってみたかったんだよな、俺。
騎士たちに自主練をさせている間、俺はサー少佐に銃装騎兵隊についての簡単な説明を行った。
「まず彼らの持つ銃の仕組みですが、あれは本物の銃ではなく一種の魔術具です。魔力を送り込むとエクスプロージョンが発動して弾丸を射出し、その後弾倉から弾丸が自動装填され20発連続で撃つことができます」
「なるほど。でもエクスプロージョンは上級魔法でかなり魔力が高くないと使えない代物では?」
「小さな弾丸を打ち出す爆発力は大砲に比べて極めて小さいので、魔力は大して必要ありません。しかもこの魔術具には特殊な魔法陣を組み込んでいて、多少の魔力を込めれば一般人でも極小規模のエクスプロージョンが発動できるように工夫がなされています」
「でも一般人に魔力はないだろう。まさか俺でも使えるってことか」
「ええ。事前にマジックポーションを飲んでもらう必要がありますが」
「うげっ・・・」
マジックポーションは、魔力保有者が飲むと体内に魔力を取り込むことができる。だが一般人が飲んでしまうと、魔力を体内に蓄えることができないため、行き場のない魔力によって一時的に魔力過多の状態に陥ってしまう。
その魔力が体外に排泄されるまで二日酔いをさらに気持ち悪くした状態が長く続くため、よほどのドМでない限り好き好んでマジックポーションを飲む人はいない。
「ここにいる100名は全員、領地で徴用した平民兵です。全員魔力がなくマジックポーションで得た魔力で銃を撃つことが前提で、1本飲めば20発分まかなえます。ポーションを飲む量とタイミングを決めるのも部隊運用の要となります」
「なるほど、そのあたりも含めての訓練だな。了解した」
「それからネオン親衛隊のみんなにも1丁ずつ銃を渡しておく。護身用にでも使ってくれ。弾もたくさんあるから、なくなったら銃装騎兵隊の輜重兵から補給を受けてくれ」
「うん分かった、アゾート君」
俺は女子たち一人一人に銃を渡し、ネオン親衛隊は「ネオン銃装親衛隊」に進化した。
「ネオンには自分の銃装親衛隊の指揮を任せたぞ」
「もちろんだよ。みんな頑張ろうな」
「「「おーー!」」」
ネオンを含めてみんなノリノリである。
「それじゃあセレーネと親衛隊のみんなは、サー少佐の元で銃の訓練に励んでくれ。ネオンは俺と一緒に銃弾の作成と銃200丁と大砲30基の整備をするぞ」
「えぇぇ・・・私も訓練をするの?」
「ええっ! 整備なんか嫌だ、訓練訓練!」
セレーネとネオンが同時に文句を言い出した。
「セレーネが一番うまく銃を使いこなせるはずだし、しっかり訓練しておいてくれ。ネオンは土魔法が使えるんだから、文句を言ってないで整備を手伝え」
「・・・・・・」
二人とも納得できず、恨みがましい目で俺のことをジトっと睨んでいるが、構わずネオンの首根っこを掴むと、武器庫に引きずって行った。
俺とネオンはしばらくこの武器庫の中で、整備の日々を送ることになるだろう。
◇
夏休みに入って2週間が過ぎ、俺とネオンはようやく武器の整備を一段落させた。
「終わったー! 何かをやりとげた充実感を感じるよな。なあネオン」
「・・・・・」
せっかく声をかけてやったのに、ブスッとふて腐れてメチャクチャ不機嫌なネオン。
そしてグラウンドでは、今日も銃装騎兵隊の訓練が行われていた。
少佐の指導の元、隊員たちに混じってセレーネと親衛隊のみんなも日々訓練に励んでいるが、銃を抱えてのほふく前進とか、本物の軍隊みたいで見てるだけで気持ちが熱く燃えてくる。
その中でも異彩を放っていたのがセレーネ。射撃訓練では一人だけ違う武器を持っているみたいに見えたのだ。
「なにあれ、マシンガン?」
あっという間に20発を撃ち終えると、弾倉を素早く入れ替えて再びマシンガンのようにぶっ放している。
戦闘民族ぶりを如何なく見せつけているセレーネは放っておいて、ネオン銃装親衛隊のみんなも騎兵隊の末席になんとか食らいついて、なかなか精悍な顔つきになっていた。
まるで鬼軍曹のしごきに耐えて一皮むけた新兵のような顔だ。
そんな彼女らを含む総勢113名の訓練が終わり、全員が規律正しく整列している。
そして彼らの前に立つ少佐を「隊長! 隊長!」と親しみを込めて呼び、米軍式の敬礼を彼に送っている始末。
そこには伝統あるフェルーム騎士団の面影が微塵も残っていなかった。
「少佐はこのまま隊長としてここに残ります?」
俺がそう提案すると、少佐もこのメンバーに愛着がわいたのか、
「そうだな、定職につくのも悪くないな。ちょっと妻に相談してみるよ」
少佐の奥さまに一度お目にかかりたいなと思ったところで、グラウンドに伝令が飛び込んで来た。
至急ボロンブラーク城に集合するよう、当主からの指示が伝えられたのだ。
少佐に部隊を任せると、俺たちは臨時で敷設された転移陣を使って急ぎボロンブラーク城へと跳躍した。
◇
「想定より悪い事態になってしまった」
フェルーム家の主だったメンバーを集めた当主は、各地に派遣した工作員からの情報をもとに、現在判明している状況を説明してくれた。
それによると、2年前の内戦で領地を追放された伯爵家次男フォスファーが軍を上げて、ボロンブラーク城に向けて進軍を開始したらしい。
そしてそのフォスファーの後ろ楯となったのがアウレウス伯爵で、騎士と歩兵をあわせて約3000名の増援を送り込んできたため、フォスファーの手勢は5500人規模に膨れ上がっているらしい。
婚約を破棄されたフリュオリーネもこの軍勢に参加しているようで、彼女はおそらくフォスファーの婚約者に返り咲いたようで、サルファーを殺害したあとフォスファーを伯爵位に就け、アウレウス派にボロンブラーク伯爵家を取り込む作戦のようだ。
これはつまりアウレウス家によるボロンブラーク家の実効支配、いや簒奪。これを阻止することが我々のフェルーム家の戦略目標となる。
そして当主は、サルファー派領主会議での決定事項を伝える。
「フォスファー派連合騎士団のボロンブラーク城への侵攻を防ぐために、スカイアープ渓谷東側平原を主戦場と定めた。ここに敵主力を誘い込んで重火器と遠距離魔法を使った包囲殲滅戦を敢行する」
そして全員を見据えて、その言葉をハッキリと口にした。
「我らフェルーム騎士団がサルファー派連合騎士団のエースだ。最初から全力で行くぞ!」




