第38話 騎士クラスへの転入生
中間テストも終わり、短い休みを挟んで今日から授業再開。久しぶりの登校だ。
俺が騎士クラスBの教室に入ると、既に多くの生徒が登校していた。
みんな雑談に花を咲かせてクラスの中はとてもいい雰囲気で、中間テストでは本当にいろんなことがあったが、結果としてクラスの団結が強くなったのは間違いない。
「ネオン様!」
突然クラスの女子生徒のほぼ全員が立ち上がると、俺と一緒に登校したネオンに駆け寄ってきた。
ネオンファンクラブである。
「聞いてください。実は私たち、ネオンファンクラブを解散して新たに「ネオン親衛隊」を結成いたしました。これからはファンとしてネオン様を応援するのではなく、ネオン様に忠誠を誓い共に戦う組織に進化いたしました」
ファンクラブ改めてネオン親衛隊のみんなの目が、やる気に満ちてキラキラと輝いている。
そして彼女たちのこういう姿を見るたびに、俺の胃はキリキリと痛み出すのだ。
どうかネオンが女だということがバレませんように・・・。
そんな女子たちを尻目に俺はそそくさと自分の席に向かうと、席に座っていたダンとマールに声をかけた。
「おはよう、ダンとマール」
「ようアゾート」
「おはよ。アゾート久しぶり」
こういう平和な日常がどこか久しぶりで、上級貴族なんかと関わり合いにならずに、のんびりした学園生活が送れたらとつくづく思う。
午前の授業開始にはまだ少し時間があり、俺はゆっくりとカバンの中の教科書を机の引き出しに移していたのだが、なぜかシュミット先生が教室に入ってきた。
魔法実技はいつも午後からなので、朝の教室でシュミット先生の顔を見るのはおそらくこれが初めてだ。
そんな先生が教壇に立つと、
「みんな聞いてくれ。突然だがこのクラスに転入生が入ることになった。では新しい仲間を紹介する、入ってくれ」
まだ1学期の中間テストが終わったばかりのこの時期に、転入生なんて入ってくるものだろうか?
一体どんな奴だろうと思っていると、一人ではなく複数の男女がぞろぞろと教室に入ってきた。
「ダーシュ・マーキュリーだ。よろしく頼む」
「アレン・バーナムです」
「ユーリ・ベッセルです。皆様ごきげんよう」
「アネット・マーローです。よろしく」
「パーラ・ウェストランドです」
「「「ええええええっ?!」」」
1年生上級クラスのトップ5の登場に、クラス全員が驚いた。
ていうかなぜ上位貴族のこいつらが俺たち騎士クラスに転入生として入ってくるんだ。わけがわからん。
俺たちが混乱していると、シュミット先生が困ったように頭を掻きながら事情を説明してくれた。
どうやらこの5人は、シャウプ先生の指導をもう受けたくないと学園側に申し入れたそうで、話し合いの結果シュミット先生の指導を受けるために騎士クラスへ編入することになったらしい。
ただ編入するクラスについては、他のクラスに上位貴族を入れても混乱するだけなので、人数のバランスは多少悪くなるがクラスBに5人全員まとめたとのこと。
さらに、この学園は元々クラス担任制など採っていなかったのだが、トラブル続きのクラスBを統率するためシュミット先生がクラス担任に就くことになったようだ。
「あの時ユーリが言っていたイタズラってこの事だったのか」
シュミット先生の話はまだ続く。
「それで俺一人ではお前たち悪ガキどもの面倒を見るのは大変なので、アゾート、お前を学級委員長に指名する」
「俺が学級委員長・・・だと?」
前世の記憶がある俺に言わせてもらえば、学級委員長は通常、黒髪ロングの正統派美少女がその任を務めるポジションである。この学園で言えばダンジョン部のサーシャ先輩のような人だ。
なお学級委員長の主な仕事は、前方が見えないほど高く積まれた書類を職員室まで運ぶことである。
そんな仕事をなぜ俺がやる必要がある。
「なんで俺が?」
「強いからだ」
「強いから・・・・え?」
この世界では、学級委員長は強さで選ばれるものらしい。
黒髪の美しさではなく・・・。
「いや、強さで言えばダンやネオンの方が強いんですけど。俺6位だし」
「それは剣術のランキングだ。上級貴族のクラスメイトを率いるには魔力の強さの方が重要だろ」
「確かに・・・でもそれだったらネオンが」
「いやアイツ全然話さないし、無口キャラに学級委員長は無理だ」
そうだった。
女子であることがバレないよう、クラスではあまり喋るなとネオンに言ったのはこの俺だった。
二人だけの時は、余計なことをベラベラ喋るけどな。
「これは決定事項だから異論は許さん。じゃあクラスのことを頼むぞ」
そう言い残して先生は教室を出ていった。
「・・・・・」
とりあえず俺はこの5人に、自分の机を上級クラスから持ってくるよう指示した。
それを教室の一番後ろの列に並べて、そこに座ってもらうことにしたのだ。
つまり俺の後ろの席がダーシュ、そこから右へさっきの自己紹介の順に並んでもらった。
「アゾート。これからよろしく頼む」
「ああ、こちらこそ」
まさか上級貴族のダーシュと一緒に授業を受けることになるなんて、今まで想像もしたことがなかった。
「そういえば、上級クラスの他の生徒はどうしているんだ」
「そうかアゾートは何も知らないんだな。ハーディンはまだ回復していない。ていうか当分目が覚めることはないようで、実家に送り帰されて療養している。お前やりすぎなんだよ」
「ふーん、そうか悪かったな」
俺はちっとも悪いとは思ってないが、口先だけは謝って見せた。
「マーサとザッシュは回復したが、もうこの学園には居たくないと言って王都のアージェント騎士学園に転校した。上級クラスに残っているのはお前の開幕ブッパで沈んだ12名だけだ」
「ああ、あいつらか・・・」
一応それっぽく言ってみたものの、もはや顔も名前も思い出せない12人。
モブである。
「でもダーシュ、お前ら思い切ったことをしたもんだな。シャウプ先生と敵対して、貴族の立場的には大丈夫なのか?」
「かまわん。お前たちと学んだ方が俺はもっと強くなれる。そう思ったからこのクラスに来たわけだ」
「ならいいけど。俺はお前たちを歓迎するよ」
昼休み。
いつものメンバーで食事に行こうとすると、ダーシュたちも一緒について来た。
「10人ともなると、席がなかなか見つからないな」
頭一つ分だけ背が高いカインがキョロキョロと食堂全体を見回しているが、この時間帯はさすがに席は空いてなかった。
だが、ダーシュがラウンジ席を指さして、
「あっちが空いてるぞ」
「ええぇ・・・ラウンジ席にはあまりいい思い出がなんだよね」
マールは嫌なことを思い出したらしく、表情を曇らせている。
「・・・確かにあそこは上位貴族専用みたいなところがあるが、俺たちが一緒だから誰も何も言ってこないと思うぞ」
事情を察したダーシュが気を遣って、もしよければという感じでラウンジ席を勧めてくる。
あまり気乗りはしないがダーシュがそう言うので、俺たちはラウンジ席の一番手前に陣取って食事を始めた。




