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Subjects Runes【完全版/累計800万PV】~高速詠唱×現代知識で貴族社会を成り上がる戦記ファンタジー~  作者: くまひこ
第4章 王国の剣メルクリウスの帰還

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第112話 新生徒会始動

 生徒会長選には敗北したが、シュトレイマン派を一掃して学園の実権を握った俺たち。


 講堂の壇上では新生徒会メンバーの挨拶が行われているが、とてもじゃないが俺には舞台に戻る勇気がない。


 プロデューサーという謎の役職もそうだが、俺は無自覚のうちにフリュに公開プロポーズをしていたことが全校生徒にバレた。


 しかもフリュがそれを受け入れ、俺たちが婚約者同士になったことが学園中に知れ渡ってしまい、先ほどの聴衆の反応でも明らなようにフリュへの人気が急上昇した反動で俺へのヘイトも急上昇した。



 だが問題はそこではない。


 セレーネとの関係をダリウスに絶対に認めさせると、俺はセレーネと約束したばかり。


 セレーネとの約束を違えるつもりはないが、じゃあフリュに何か言えるかと言うと、やはり言葉が見つからない。


 度重なる婚約破棄とサマーパーティでの公開断罪、辛い目に会い続けたフリュがやっと見つけた居場所が俺の隣。


 俺はフリュの涙を絶対に見たくないし、俺の隣にいることを彼女が望む限りずっと傍に居てもらいたいと思っている。


 一体俺はどうしたらいい・・・。


 俺は学園をこっそり抜け出すと、プロメテウス城にいる両親に相談することにした。



         ◇



 魔力を何より重視するアージェント王国では、貴族の子弟は自分で結婚相手を決めてはならず、必ず両親の許可を得る必要がある。


 なのに俺は勝手にフリュにプロポーズをしてしまった。きっと叱られるに違いない。だが、


「ダリウスから話は聞いてるぞ」


「え?」


「やはりお前は何も分かってなかったのか」


「お、おう・・・」


「お前は無駄に頭がいいのに世間一般のことには鈍感過ぎるというか、どうしてフリュちゃんがいつもワシたちのことをお義父様、お義母様と呼んだり、アウレウス伯爵がお前のことを婿殿と呼んでいたと思ってたんだ」


「・・・最初は冗談で言っているのかと思って真面目にツッコミを入れていたんだけど、同じギャグばかり続けられたからイチイチ反応するのが面倒になって、いつの間にか全く気にならなくなっていたんだ」


「バカだねあんたは。セレーネの事ばかりで周りが全く見えてないというか、フリュちゃんは本当にいい子だからちゃんと気を配ってあげなさいね」


「面目ない・・・でもセレーネの事はどうしたらいいんだ」


「セレーネはフェルーム家の次期当主だからダリウスに何を言っても無駄だぞ。それより、結婚話のついでにお前に話がある」


「話って?」


「セレーネの次の婚約者としてお前の弟のアルゴを考えていたのだが、止めることにした」


「えええっ! アルゴはまだ13歳じゃないか。セレーネとは年の差もあるしアルゴだけは絶対にダメだ!」


「いやいやお前は5歳で婚約してたし、アルゴの婚約者を決めるのはワシだ」


「それはそうだけど・・・あれ? アルゴがダメになったってどういうこと?」


「実はジルバリンク侯爵からの申し入れがあって、アルゴと侯爵令嬢を婚約させることにしたんだ」


「え? ジルバリンク侯爵からは年頃の娘が欲しいと聞いていたんだけど? 妹のリーズではダメだったのか?」


「確かに最初はそういう話だったが、よく考えてみろ。うちはつい最近まで騎士爵家の分家だったんだそ。そんな底辺貴族の娘がいきなり侯爵家の嫁になってもうまくいくはずがない。リーズが可哀想だとは思わないか」


「・・・確かにそれもそうだな」


「それでもウチとの縁が欲しいと侯爵が言うから、だったらウチが嫁を貰うことでどうかと提案したのだ」


「その相手がアルゴだと・・・」


「そうだ」


「アルゴがセレーネ以外の嫁を貰うなら別に誰でも構わない。そんなことより俺のセレーネはどうなるんだ」


「フェルーム家の他の分家の息子か、上位貴族の中から魔力の合う男を見つけて結婚させるそうだ。もちろんサルファー以外で。恐らく希望者が殺到するだろうから、相手が決まるのは時間の問題だな」


「くそっ! そんなことは絶対にさせん!」


「セレーネのことは諦めろ。お前にはフリュちゃんという立派な婚約者がいるじゃないか。魔力も家柄も最高な上に超美人で性格も良く、騎士団を指揮させれば無敵の強さを誇るお前には勿体ないとほど出来た嫁だぞ。それにネオンはどうする?」


「なんでここでネオンが出てくるんだ」


「セレーネとの婚約が解消された時、ネオンがダリウスに了解を得たって聞いてるぞ」


「あの時のやり取りは覚えてるけど、あれって冗談じゃなかったのか? それにフリュが婚約者になるってダリウスが気がついてたんなら、ネオンも婚約者にっておかしいだろ」


「ネオンは特別だ。どうせお前以外の誰の言うことも聞かないし、ダリウスもエリーネもネオンの扱いには困っていた。お前が一生面倒を見てやればみんな幸せになれるし、髪を伸ばせばセレーネと見分けがつかん」


「どこがだよ! 全然違うだろあの二人は!」


「とにかくセレーネは諦めろ。それより今週末はその侯爵家のご令嬢との顔合わせなんだから、都合が合うなら出席してくれ」


「色々と納得いかないし、セレーネのことを諦めた訳じゃないけど、アルゴの事はわかった。アルゴの婚約は父上が決めることとは言え、魔導結晶に端を発した話だし俺にも責任はある。顔合わせには必ず出るよ」



         ◇



 次の日の早朝、生徒会の初会合が始まる前にセレーネとフリュを呼んだ俺は、この前の一件について平身低頭謝罪した。


 セレーネは大きなため息をつくと、


「フリュさんとの婚約が成立していたことは、フリュさん本人から聞いて知ってたわ」


「え? フリュから聞いてたのか・・・でもこの前の約束は絶対に守る。俺を信じて待っていて欲しい」


「アゾートとは長い付き合いだし、そこは信じてる。私からもお父様を説得してみるし」


「すまん、セレーネ・・・」


「でもアゾートって、魔法に関することはすごく頭がいいのに、異性との関係になったとたんにバカになるよね」


「今回の事でさすがに俺も自覚したよ。俺はラノベの鈍感難聴系主人公が大嫌いで、いつも奴らをバカにしながらアニメを見ていたんだけど、まさかこの俺自身がやらかすとはな」


「言われてみると確かに、アゾートって鈍感難聴系主人公の素質があるよね」


「うぐっ・・・セレーネに言われるとかなり堪えるな。ちなみに俺が世界で一番嫌いな言葉は『え、なんだって?』だ。その言葉だけは言わないように日々心掛けているよ」


「そ、そうなんだ・・・がんばってねアゾート。ところで私の事はもういいから、フリュさんのこともちゃんと気にかけてあげて」


「そうだな・・・フリュ、俺はキミにも言っておきたいことがある」


「・・・はい」


 俺がフリュに向き直ると、彼女はひどく怯えていた。


「俺はあの言葉がプロポーズを意味しているとは知らず、フリュには大変失礼なことを言ってしまったと反省している」


「・・・・・」


「もちろん嫌なら断ってもらって構わないのだが、フリュに傍に居て欲しいという俺の気持ちは本当なんだ。セレーネにあんな事を言ったそばからフリュに最低なことを言っている自覚はあるけど、もしよければ今まで通り俺と一緒に居てくれないか」


「謝罪するのはこちらの方です。あの言葉がプロポーズの意味を持っていることを隠していて申し訳ありませんでした。でも言ってしまったら、もうお傍に居させてもらえないかと思い、言い出せなかったのです」


「そうだったのか・・・」


「それでもプロポーズしてもらったことはとても嬉しくて、ついアゾート様のご両親のことをお義父様、お義母様と呼ばせて頂いたり、とても幸せでした。・・・でも結局アゾート様にご迷惑をおかけしてしまい、わたくしはもうどうしていいのか・・・」


 言葉を詰まらせたフリュが、大粒の涙をぽろぽろと流し始める。


 俺は慌てて、


「泣かないでくれ! フリュは何も悪くないし鈍感な俺がキミを追い詰めてしまったんだ! フリュは好きなだけウチに居てくれていいし、これまでどおり自由にしてくれていいから」


 俺はフリュにハンカチを渡すと、彼女は涙を拭きながら静かにこくりと頷いた。





「あの~、そろそろ生徒会を始めたいのだけど、そういうのは家に帰ってから二人だけでやってくれないかな」


 生徒会副会長に就任したアネットがうんざりした顔で俺に言った。そして生徒会室には既にメンバーが全員揃っていた。


「・・・みんな今の話をどこから聞いてた?」


「フリュオリーネさんに『俺と一緒に居てくれないか』と言ってるところ」


「よりによってそこからかよ・・・はい、続きは家でやります」


「さてアホなプロデューサーは放っておいて、新生徒会の第一回会合を始めます。最初の議題は卒業パーティーについてですが、今年は例年以上に盛り上げたいと思います。会長から何か方針みたいなものはありますか」


「そうね・・・去年は立食形式のランチとダンスパーティーだけだったし、もう一つ出し物を増やしたいと思います。何かアイディアのある人はいませんか」


「はい!」


「ニコラ二等兵、発言を許します」


「では人気アイドルユニットを決める戦い、ボロンブラーク・アイドル・コンテストというのはどうでしょうか」


 キメ顔のニコラの頭を、俺は思いっきりはたいてやった。


「ていうか、何でお前が生徒会にいるんだ。もう家に帰れ!」


 するとニコラがドヤ顔で、


「我が主殿は、生徒会長選の後の挨拶をすっぽかして勝手に家に帰られてしまわれたが、あの後僕も生徒会役員に選出されたのだ」


「え、なんだって!」


 しまった!


 思わず世界で一番嫌いな言葉を使ってしまった。ぐぬぬ・・・ニコラのせいだ。


「何でお前が役員に選出されたんだよ」


「選挙は一応僕の勝利だし、男子生徒たちからの絶大な後押しもあって、僕も生徒会に入れてもらうことが決まった。だが適当な役職がなかったのでセレーネ会長から直々に『二等兵』という役職を任されたのだ」


「お前が勝ったのはカネをバラまいたからだろうが! だが俺が実家に逃げ帰ったのも事実だし、セレーネが決めたことなら従おう。だがお前は二等兵、プロデューサーの俺の指示には従ってもらう。いいな!」


「任せてもらおう、我が主殿よ」




「ええっと、ニコラ二等兵のアイディアの他に何かありますか」


「『愛の告白選手権』はどうかしら」


 恋愛脳保有者のパーラらしい発想だ。


「具体的にはどういうものかしら?」


「恋愛脳のアゾート様にヒントを得たのですが、全校生徒の前で好きな異性に告白する大会です。現チャンピオンのアゾート様より恥ずかしい告白ができれば勝ちという、極めてシンプルな戦いですが、いかがでしょうか」


 パーラに恋愛脳扱いされる俺って・・・。


 だが司会のアネットも慣れたもので、親友パーラの意見にすかさずツッコミを入れる。


「それはあなたがダンに告白して欲しいだけのイベントでしょ」


「ええそうよ。それが何か?」


「あのねパーラ、その選手権はイベントとして成り立ってないの」


「あら、どうして?」


「ウチの学園に、あれより恥ずかしいことが言える人なんか誰もいないの。つまりアゾートが優勝するだけのイベントに誰が参加するというのよ。とにかく卒業式まではまだ時間があるから、みんなまた考えておいてね」


「・・・・・・」


 あまりの言われように俺は何も言うことができなかったが、アネットは淡々と次の議題に進んだ。


「では次の議題に移ります。収容所送りにした不正貴族どもはどうなりましたか」


 するとサーシャが、


「全員、生活指導室に連れて行って私から説教しておきました。旗頭のニコラさんがこちらに取り込まれたので彼らに巻き返しの目が無くなったことは理解してもらったし、あとは彼ら自身のプライドとどう折り合いをつけるかだけで、私たちにできることは何もありません」


 そうキッパリと断言するサーシャ、さすが委員長キャラだけのことはある。


「じゃあ下級貴族の不満分子も落ち着いてくれるかしら」


「もとはセレーネへの扱いが酷いことが発端で騒いでいただけだし、セレーネが生徒会長になったことで彼らの不満はある程度解消されたはず」


「ではこれで学園の問題は概ね片付いたと考えて良さそうね」


「ええ。あとは新入生を迎え入れる準備を進めるだけ。これからは前向きな活動をして楽しい学園を作っていきましょう」


 アネットとサーシャがそう結論づけて、生徒会室も明るい空気に包まれた。


「新入生か! 一体どんなやつらが入学してくるんだろうな。ちなみに俺の妹が入学するぞ」


 俺の言葉にマールがすかさず反応する。


「リーズちゃんでしょ。楽しみよね!」


「マールはリーズと仲が良かったよな。面倒を見てやってくれ」


「うん、任せてよ!」


「となると問題はシュトレイマン派の上級貴族だ。一体どんな奴が入学してくるのか」


 俺はまだ見ぬライバル貴族の入学に、密かに闘志を燃やしていた。

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