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Subjects Runes【完全版/累計800万PV】~高速詠唱×現代知識で貴族社会を成り上がる戦記ファンタジー~  作者: くまひこ
第3章 古代魔法都市ジオエルビム

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第101話 魔法障壁の向こう側

 城塞都市ヴェニアル。


 メルクリウス男爵家が領有することになった居城の応接室では、旧ヴェニアル領の分割統治についてプロメテウス軍幹部たちが話し合いをしていた。


 そこに届けられた一通の速達は、クレイドルの森ダンジョンに至急来てほしいという、アウレウス伯爵から俺宛の手紙だった。


 中を読むと、王国魔法協会会長ジルバリンク侯爵との交渉が大詰めで、今回の管理戦争の結果も含めて最終調整を行いたいとのことだった。


 調整がつき次第そのままダンジョン攻略に向かうことができるらしく、俺は手紙の内容をその場で報告した後この領地のことを父上たちに丸投げした。


「これでようやく古代魔法文明の謎に迫れる。さあクエスト再開だっ!」



          ◇



 ダンジョン攻略に向かうのは今ここにいるメンバーのみで、俺、セレーネ、ネオン、ダン、マール、フリュ、アネット、パーラ、親衛隊にサー少佐を加えた計21名。


 カイン、サーシャ、ユーリ、オッサンたちはいないものの、今の俺たちならどんな魔獣が出てこようと十分戦える自信がある。


 なお、城壁都市ヴェニアルはプロメテウス領より東にあるため、クレイドルの森まで少し近づいているし、激しい戦いの連続で俺たちの魔力も随分と成長した。


 それもあってか、ヴェニアルの冒険者ギルドからクレイドルギルドまでジャンプしても魔力にはまだまだ余裕があり、その足で一気に森を抜けるとあっという間にダンジョンの前まで到着した。




 さてダンジョン入り口には、以前はなかった大型のテントが多数設置されており、魔法協会の職員たちがテントの間を忙しそうに出入りしている。


 そして俺たちの到着に気付いた職員の一人が、中でも一番大きいテントへ俺たちを案内した。


 テントの中には豪華な応接セットが鎮座しており、中央テーブルを挟んでアウレウス伯爵ともう一人、モノグラスをかけた神経質そうなやせ形の男がソファーに腰掛け、二人で何やら話をしているところだった。


 そして件の魔法協会職員が声をかける。


「アゾート・メルクリウス男爵閣下がお見えになられました」


「おお婿殿か。随分と早かったな」


 俺たちに気付いたアウレウス伯爵が、俺とフリュにソファーに座るよう促した。


「婿殿、こちらが魔法協会会長のジルバリンク侯爵だ」


「アゾート・メルクリウスです」


「フリュオリーネ・メルクリウスです」


 俺とフリュは侯爵と挨拶を交わして席についた。



         ◇



 話し合いの前に、前提となるお互いの主張をアウレウス伯爵が簡単にまとめてくれた。


【侯爵の主張】魔導結晶を含めた古代遺物の採掘権、所有権は王国魔法協会にあり、その処分も含めて部外者の口出しは一切認めない


【伯爵の主張】王国魔法協会は王国の機関であり、派閥間で不公平となる運営はそもそもが認められない


【婿殿の主張】古代遺物から魔導結晶を採掘するのを今すぐに中止せよ


「このうち婿殿の主張については、古代遺物が魔導結晶よりも価値があることが確認ができれば、結晶の取り出しを止めてもよいという結論に至った」


「そうですか! ああ良かった」


 魔導結晶については今回の管理戦争で思いっきり軍事的価値を落としてやったし、遺物さえ保護してもらえるなら王国魔法協会との調整は終わったも同然。


「なら早速ダンジョン攻略を!」


「いやまだだ婿殿。私と侯爵の主張が折り合わなければ遺物が全てシュトレイマン派に流れてしまう。ゆえにアウレウス派としてクエストの再開は認められない」


「え・・・」


 このダンジョン攻略、余計な派閥争いに巻き込まれて政治案件になってしまった・・・。


「それでお父様はどのような落としどころを提示されたのですか?」


 フリュが話に入って来た。


「監察局長のポストを要求した。これで魔法協会の不正が牽制できる」


「確か今の局長はシュトレイマン派でしたわね。それをお父様が?」


「そうだ。魔法協会という不正の温床をようやくこれで取り締まれる」


「何だとっ! 魔法協会は不正の温床ではない! そもそもお前たちアウレウス派貴族が監察局長だったころは、お前たちのやりたい放題だったではないか!」


「そんなことはない。シュトレイマン派ほど露骨な利益誘導は行っていなかった」


「ふん! 見解の相違だな」


 俺から見ればどっちもどっち、同じ穴のムジナのような気がする。


「そこで婿殿、ソルレート伯爵との管理戦争の結果を詳しく教えてほしい」


「管理戦争の結果ですか・・・」


 俺は裁判所の仮処分と戦後処理の結果を二人に説明した。





「でかした婿殿。ではその扱いに困っているというソルレート伯爵直轄領の領有権を私に譲ってくれないか」


 伯爵の提案にフリュが俺に合図を送ってきた。提案に乗れという事か・・・。


「もちろんです伯爵。今回の管理戦争では色々と側面支援を頂いた分もありますし、アウレウス伯爵にお譲り致しますよ」


「よろしい。では侯爵、旧ソルレート領と引き換えに監察局長のポストを譲ってもらうことでどうかな?」


「領地とポストを引き換えるのか。うーん、それなら認めてやらんこともないが、5年でどうだ?」


「バカを言うな、20年だ!」


「そちらこそバカを言うな! 20年もアウレウス派の専横を許したら国が傾いてしまうじゃないか! なら副局長ポストを新設してそれをシュトレイマン派のポストに・・・」


 あっという間に監察局のポスト調整に入ってしまった二人だが、ソルレート領にそれほどの価値があるとは到底思えない。


 確かに広大な領地が手に入るのは魅力的だが、まともな商人や職人たちがウチの領地に全員引っ越してしまい、残っているのは飢えた貧民とそれを扇動する革命軍や新教徒どもだ。


 そんな輩が暴れ回っている面倒この上ない危険な領地を平定するまでに一体何年かかると思っているのか。


 復興資金の持ち出しで明らかにマイナス収支になるような領地を、アウレウス伯爵はジルバリンク侯爵に押し付けてしまった上に監察局長のポストまで奪ってしまった。


 その手腕には驚くが、一体いつまで続くんだこの話し合いは・・・・・・長い。



         ◇



 ようやく二人の話し合いがまとまり、ダンジョン攻略にゴーサインが出た。


 はずなのだが・・・


「・・・おいアゾート。本当にここにいる全員をクラン登録するのか?」


「・・・ああ。すまんなダン」


 呆れ顔のダンに、俺はそう答えるしかなかった。


 何しろ今回俺たちとクラン結成するのは、ジルバリンク侯爵率いる王国魔法協会の職員パーティー総勢20名と、アウレウス伯爵率いる王国監察局の職員パーティー総勢20名。


 3つの冒険者パーティーで、合計61名のクランだ。


 ていうかこのアウレウス伯爵、こうなることが分かっていて最初から監察局の職員をここに連れて来ていたのか。


 手際が良すぎるというか、どこまで先の展開を読んでいるのか、まさにこの娘にしてこの親ありである。


「なあアゾート。クランメンバーの半数以上が国の役人って、ワクワク感ゼロにも程があるよ、このダンジョン攻略」


「なんか色々スマン・・・」


 こうしてクラン登録を終えた俺たちは、第13層に向けて一気にジャンプした。



         ◇



「石室へ入る人数を制限したいので、そちらのパーティーから1名ずつ、ジルバリンク侯爵とアウレウス伯爵のみ入室をお願いします。こちらからは俺とマールの2名の調査員が入りますが、護衛はセレーネ、ネオン、フリュ、ダンの4人に任せます」


「よかろう」


「うむ」


 二人の重鎮が了承したので、他のみんなを外に残して8人で石室に入って行き、俺とマールが祭壇の中に上半身を突っ込む。


「じゃあマール、始めてくれ」


 マールがライトニングを発動させると、祭壇奥の壁面ディスプレイが起動し、3箇所の祭壇マークの右側にある6つのボックスに、6ケタの数字(一文字で8ビット、0~255まで表せる)が入力できるようになった。


 早速俺は、3つのキーワードを順に入力していく。




祭壇1: 3 1 4 1 5 9

祭壇2: 2 7 1 8 2 8

祭壇3: 8 14 14 30 20 12


ENTER




「おっ! 何かのプログラムが起動したぞ」


「ほんとだ。文字のようなものが出てきたけど、もしかしてアゾート読めるの?」


「読める。魔法障壁の向こう側、つまり転移先だと思うけど、【ジオエルビム】だって」


「ふーん、ジオエルビムかあ」


 マールが読めなかったこの文字はそう、日本語のカタカナで書かれていた。いやカタカナだし英語と言うべきなのか?


 だがこれで、この遺跡が古代魔法文明に転生したであろう日本人が関係していることがハッキリした。


「じゃあ、ボタンを押すぞ」


「押しちゃえアゾート!」


 画面に表示されたボタンをクリックすると、祭壇の外で何かが作動する音がした。




 祭壇から出ると、早速アウレウス伯爵が話しかけて来た。


「婿殿が祭壇の中で何かをしたのと同時に、魔法障壁の渦が変化したぞ。行き先が切り替わったようだが中に入ってみるか?」


「もちろん。でも我々より先にチャレンジしてくれるゴーレムの皆さんを召喚しましょう」


「さすが婿殿、慎重だな」


 俺は三体のゴーレムを召喚して、魔法障壁の中に入らせた。


「この三体は、それぞれ違う距離だけ進んで、こちらに帰ってくるように命令をしています。おおっ! まず一体めが戻ってきたぞ」


 前回は一体も無事に帰って来なかったゴーレムだったが、今回は三体全てのゴーレムがこちらに戻ってきた。


「どうやら大丈夫のようですね。では順番に中に入って見ますか」


「よかろう」


 伯爵が返事をすると、侯爵が俺に質問をしてきた。


「その前に少し教えてほしい。男爵はどのようにして魔法障壁の封印を解いたのだ」


「うーん・・・一言では説明できないのですが、古代魔法文明の研究を丹念に進めた結果だとご理解ください」


「なるほど。もしキミが考古学者を目指しているのなら、魔法協会に入ってみてはどうかな」


「おいジルバリンク侯爵。うちの婿殿を変な組織に勧誘するのは止めてくれたまえ」


「何を言うか伯爵! 魔法協会は変な組織ではないし、男爵はどうみても研究者気質で魔法協会向きの人材。適材適所という言葉を知らないのか伯爵は」


 また言い争いを始めたよこの二人・・・。


 よし、この二人は放っておいて先に進もう。

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