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孤児になった私が貴族⁉ 事故死した父が公爵家、母が男爵家出身だった。  作者: 田舎娘


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8/19

  8 お茶会本番

 本日、本番のお茶会だ。

 会場は学院内のランチルーム。このお茶会はマナークラブの活動だからね。

 でも主宰は王太子妃候補筆頭の令嬢だから皆緊張気味だ。


 お土産は箱詰めにしたパウンドケーキ二種類のプレーンと蜂蜜だ。その箱を大きめの上品な布に包んである。


 スフレやリボンの花飾りは叔母様、シャーロット様、ギデオン様に止められた。

 これから先のことを考えると、少しずつ武器は小出しに出した方がよろしいらしい。スフレが武器って。リボンの花飾りが武器って。


 一応、テーブルの招待客の中では、私が一番身分が上のようなので、最初にご挨拶だ。

「本日はお招きいただき、ありがとうございま――」

『私どもも、ご招待いただきありがとうございます。今日は楽しみにしておりました。ね、皆様』

 ご挨拶の途中なのに、言葉を巧みに差し込まれてしまった。唖然としていると

「まあ、子爵家令嬢。そんなに慌ててのご挨拶は不要ですわ。楽しみにしていただいていたのは嬉しいですけどね。それよりナイシール伯爵家ヴィアンカ様のお持ちになっているのは何ですの。すごく美味しそうな香りで、気になっていますのよ。」

「こちらはご招待いただいた感謝の品でございます。お納めくださいませ。」

「ありがとうございます。後でみなさんといただきましょう。」

「フェーリンゲ公爵家令嬢キャサリン様。私がお持ちしたお土産はこちらでございます。」

「これは子爵家令嬢。まだ全員のご挨拶が終わっておりません。早急にお話を進めないようお勧めいたしますわ。」

「申し訳ございません。」

「まあまあ、キャサリン様。子爵家令嬢は学院のクラブでしかキャサリン様とお話などできないのですから、気持ちが高ぶっていらっしゃるんでしょう。こういったことに慣れるためのお茶会ですからね。それではナイシール伯爵家令嬢ヴィアンカ様はこちらへどうぞ。」


 キャサリン様の補佐のような取り巻きのかたが、私を席に誘導してくれた。違う方が子爵家令嬢を席に促して、ようやく全員が席に落ち着く。

 もう疲れた。


 席は丸いテーブルに用意されていた。私はキャサリン様のとなりの席だ。でも、彼女は全テーブルに顔を出さなくてはならないようで、忙しそうだ。例の子は、私のそばではなかった。よかった。

テーブルには、美味しそうなお菓子やサンドイッチが並んでいる。すぐに私のパウンドケーキも、他の方のお土産も並んだ。


 お茶会のお土産は食べられる物も食べられない物も、一度はテーブルに並べる必要がある。それは領地持ちの人の自領の紹介も兼ねているので、必ず招待客全員に、目が行くように配慮するのが主催者の役目らしい。


 教科書通りのお土産の褒め合いが終わった。

「ナイシール伯爵家令嬢ヴィアンカ様のお持ちになった焼き菓子は、見たことがございませんが、どちらの品ですの。」

「こちらは特別に作っていただいた、甘さ控えめの焼き菓子でございます。私は好きなのですが、皆様のお口に合うかどうかちょっと心配です。」

「まあ、ご自分の好みを、公爵家御令嬢のキャサリン様に押し付けなさるんですか。」


 例の子爵家令嬢だ。名前は確か同じクラスだったはずなんだけど…。もう覚えなくてもいいや。

「いえ、私も不安でしたので、ゆかりのあるお宅に伺って確認して頂きました。自信を持ってお土産にしなさい、と励ましてくださいました。ですので、持参致しました。」

「だって手作りでしょう。失礼ですわよ。私の菓子は、並んでも買えないお店と言われるエトワールの人気商品でしてよ。」

「まあ、ご令嬢自ら並んでいただきましたの。心して頂かなくてはね。」

 いつの間にかキャサリン様が戻っておいででした。

 子爵家令嬢は

「嫌ですわ。並んだのは当家のものです。もちろん命令したのは私ですけど。」

「そうですか。わざわざありがとうございます。ところでナイシール伯爵家ヴィアンカ様のお持ちいただいたパウンドケーキとやらを、いただいてもよろしいかしら。」


 いつの間にかお茶も用意されていて手際がいい。お茶は紅茶だ。ハーブティーとか、お花の紅茶もあるけれど、私はプレーンが好きなのでさっぱり系をお願いする。

「美味しいわ。」

 パウンドケーキを食べた方全員が、美味しいと微笑んでくれた。例の子爵令嬢は、無言だけど完食している。ほかのテーブルからも

「このパウンドケーキ。美味しい。」

 との声が聞こえる。でも他のテーブル分まで無いはずだ。他にテーブルは四つほどあるんだけど、なぜ?


「ヴィアンカ様。失礼ながら名前呼びさせていただいてもよろしいかしら。私のこともキャサリンとお呼びくださいね。」

 もちろんオッケーだ。

「あなたの後見人のお宅から、差し入れが届きましたの。ぜひ皆さんでお召し上がりくださいってね。だから全テーブルにおすそ分けよ。給仕や私たちのメイドの分まで頂いたのよ。もちろん当家の分もよ。お母様なんて恐縮してたわ。私からもお礼申し上げますわ。」

「気に入っていただいて嬉しいです。」

 知らなかった。叔母様、お願い。前もって知らせてください。


「それにしてもこの箱驚きましたわ。」

 そう言ってパウンドケーキを詰めていた箱を、平らにしたり、また組み立てたりしている。

「まあ。伯爵家令嬢ヴィアンカ様は紙でいろいろ作るのがお得意のようですね。どうやって思いつくのですか。」

「うちでも飛行紙は人気で、弟など毎日飛ばしておりますわ。」

 テーブルの方々が、話に加わってくる。

「飛行紙もこの箱もたまたまですね。前にも申し上げましたけど、ここをこう折ってとか、こっちはこんな風にとやっておりましたら、できてしまったのです。きっと運がいいのでしょう。それよりもこちらの。」


 作法上、ほかのお土産も褒め称えなければならないので、これは領地の特産を使ったものですのね。とか、こんな風に加工されるなんて素晴らしいですわ。とか、ゴマをすっておいた。


「それでも、ヴィアンカ様はやっぱり無作法だと思います。名も知れないお菓子をご持参したり。その上、キャサリン様の公爵家にまでお持ちなさるなんて、押し付けがましいにもほどがございますわ。」

「あなた、私の言ったことを聞いていらっしゃらないの。私はお母様が恐縮していたと申し上げました。お母様でなくお父様やお兄様もです。公爵家全員がそうだったのです。それを聞いてどう思われましたの。」

 キャサリン様がちょっと怒ってる。


「えっ。」

 子爵家令嬢だけが驚いている。他の方々は当たり前のように、ささやき合っている。ほかのテーブルの方々まで、

「ナイシール伯爵家ヴィアンカ様には後見人がついておられますよね。その方は公爵家以上のお方だということですよね。」

「それがご理解できなかったってことかしら。」

「信じられませんわ。」


「えっ。だったら、どうして言わないのよ。」

「私は新興の伯爵家ですから、なるべく後見人の方に、ご迷惑をおかけしたくないのです。入学と同時に独立したことにはなっておりますので、ことさら声に出して申し上げることではないかと思いました。」


 それ以降は、子爵令嬢に絡まれる事無く、お茶会は無事終了。でも私のお披露目みたいになってしまった。退室のご挨拶で

「フェーリンゲ公爵家御令嬢キャサリン様。今回はご招待ありがとうございました。大変勉強になりました。でも私のために心苦しいことになってしまい、申し訳ございません。」

「いいえ。皆様、有意義に過ごしていただけたようです。それがマナークラブの活動の一つです。ご自分の反省点も理解していただけたでしょう。マナークラブとしても大成功でしたわ。それも、ヴィアンカ様のお陰です。それと私のことはキャサリンとお呼びくださいませ。」

「はい。ありがとうございます。キャサリン様。」

 二度まで名前呼びでと謂われてしまえば、そうするしかない。公爵家御令嬢をいつもつけるのは、まどろっこしいので歓迎だけど。キャサリン様って王太子妃候補筆頭だよ。何かあるのかなあ。ため息つきたいのを我慢して、会場の外に出るとなんだか騒がしい。


 騒がしい原因をたどると、我が従兄殿だ。従兄殿に群がる女生徒が数人。それを抱えて囲むように、さらに数人の女生徒に絡まれている。その取り巻きに、例の子爵令嬢までいる。巻き込まれたくないので、さっさと通り抜けようとしたら

「やあ、ヴィアンカ嬢。また召集令状が出てるよ。僕はエスコートだよ。召集令状は、兄上だよ。なんか相談があるらしい。これから大丈夫?」

 私に聞こえるくらいの小声だ。公爵家の招集令状は、絶対に断れない。頷く私に、ニヤリとしながら腕を差し出す。エスコートだ。差し出されたギデオン様の腕を取りエスコートされる。


「キャー。どうしてよ。」

 絶叫に近い叫び声と共に、他の声も混じっている。

「ヴィアンカ様の後見人ってアールベアル公爵ってこと。大変、早く帰ってお父様に報告しないと。」

 つぶやきが聞こえてきた。


「明日から父上や母上は大忙しだ。どうしてって顔してるけど、君への釣書だよ。どのくらいくるかなあ。ちょっと楽しみだね。」

 この従兄殿、おもしろがってるよ。

 それにしても私の釣書なんてない、ない、ない。


 それにしても、御長男のルーカス様は、私に何の用事があるのやら。エスコートしてくれているご次男様は、教えてくれそうもない。

 私の反応を楽しんでるもの。


 あえて聞いててみる。

「ギデオン様。私の為に研究時間を割いていただきありがとうございます。ご無理をなさっていらっしゃいませんか。それに、ルーカス様のご用件をご存じですか。」

「感謝するのは、僕の方だよ。今後しばらくは、僕のパートナーは君に決まったみたいだからさ。パートナーの申し込みに、いろいろ理由を付けて断る必要が無くなったから、面倒が無くて良かったよ。」

「光栄です。」

 ニッコリ微笑んで返しておいた。

 やっぱり、ルーカス様のことは答えてくれない。公爵家に行けばわかるだろうけど、心の準備が……。


 それより、私がパートナーって。私って、引っ張り出させられるの?

 いやだ……断りたい。でも、断れない……。

 父様、母様。助けて。




読んで頂いてありがとうございます。

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