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孤児になった私が貴族⁉ 事故死した父が公爵家、母が男爵家出身だった。  作者: 田舎娘


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  7 飛行紙とお茶会の事前審査

 ドキドキしながら、教室に入った。


 朝、寮の食事の時は誰も何も言わなかったので、ほっとした。

 教室でも何事も無かった。ほっとした。


 それはランチの時だった。

「君が空飛ぶ紙を作ったのか。」

 第二王子殿下だ。何と答えればいいのかわからず、おたおたしていたらセザール子爵家令嬢につっつかれた。ハッとして

「ご挨拶させていただきます。ナイシール伯爵家ビアンカでございます。ご尊顔を・・・」

「堅苦しい挨拶は良い。私は第二王子ジョルジュだ。よろしくな。ナイシールを継いだのは君か。それより、私にもその飛ぶ紙が欲しいのだが、作ってくれるか。」

「恐れながら、あれは偶然の産物にございます。手元にあれば折り方がわかるかもしれませんが、残念なことにいまどこにあるのか分かりません。申し訳ございませんが、つくることは叶いません。」


「ナイシール伯爵家令嬢。大丈夫、ここにございますよ。」

 あー。フェーリンゲ公爵家キャサリン様だ。王子と王太子妃候補筆頭だよ。目を輝かしている。どないしよう。しぶしぶ、しぶしぶ、紙飛行機を受け取る。ぐちゃぐちゃになっているのを期待したんだけど、私の折った線しかなく、シワ一つ無い。仕方ない、腹をくくるしかない。


 でも、こうだったっけ、あーだったっけ、などと、ひっくり返したりした。時々、飛ばしてみて失敗してみる。何度目かで、やっと成功させた。私って女優になれるかも。


 成功した紙飛行機はまっすぐランチルームを飛んでいく。初めて見る方々は

「オオー。」「ワ~。」「魔法か?」

 とか、叫んでいて、不思議そうだ。二枚折って、第二王子とキャサリン令嬢に渡して、投げ方を教える。なんせこんなもん五歳児だって飛ばせる。二人の紙飛行機は、別々の方向に曲線を描いて飛んでいく。

「なぜまっすぐ飛ばぬ。」

 知らんがな。

 もう1回。まっすぐ飛ばないけど、さっきとは違う方向へ飛んでいく。


 私の折り方を見ていた方々は、各々紙飛行機を折って挑戦中だ。さながらランチルームは紙飛行機場と化した。かくゆう私はそんな光景を尻目に、サンドイッチを食堂のおばちゃんからもらって、静かにフィードアウトだ。付き合ってなんていられない。


 でも、第二王子殿下が、ナイシールを私が継いだって知ってた。王子は、何か知っているのかも。


 その日以後、校庭のあちこちで、紙飛行機の飛ばしっこが流行った。各自、試行錯誤した発展型の紙飛行機も登場した。果ては、飛行クラブなるものまでできてしまった。紙飛行機を元に自分たちも乗れるように研究するんだとか。頑張ってください。としか言えない。


 紙飛行機は飛行紙と呼ばれてるようになった。飛行紙のおかげで、わたしは学院では有名人になってしまった。

 隅で静かにしている計画は、入学五日も経たないうちに挫折した。でも、そのおかげでクラスの人たちとだいぶ打ち解けられた。


 ただ、ある男爵家令息だけ、いつも私を睨むようにしている。

 どうしてだろう?


 それでも、クラスで何人かと特に仲良くなり、ランチとかをご一緒して、雑談をするようになった。その中でもセザール家令嬢カロリーナ様とは特に親しくさせていただいている。

 二人してマナークラブに入会したしね。お互いに『ヴィー』『リーナ』と呼び合うようになっていた。


 飛行紙のブームも落ち着いたころ、マナークラブの1回目の活動があった。項目【ザ、お茶会】だ。上級生の方がご招待する側で、一年生が受ける側だ。いくつかのグループに分かれて行われるけど、私はフェーリンゲ公爵家令嬢のキャサリン様にご招待された。リーナはある伯爵家令嬢のグループだ。


 マナークラブに入会している他のクラスメート達と

「お茶会にお持ちするお土産は何にいたしますの。」

「私は領地の特産を考えておりますの」

「あと五日しかございませんでしょ。私は家の者に今流行りのお菓子を買いに行かせようかと。」

「ヴィアンカ様は何をお考えですか。」

「まだ決めておりませんの。何人分ぐらいお持ちすればよろしいでしょうか。」

「十人ぐらいでしょうか。一応お茶会の人数は、一テーブルで私を含め五名ぐらいと伺っております。足りないより、よろしいかと思っております。」


 十名ぐらいか。領地の特産ねえ。伯爵領って酪農が主だって資料にあったけ、ど、そのほとんどが王宮に仕入れていると資料にあった。領地の食材は使えないけど、卵とか市販のものとかを使って作ってみようかな。

 なんて考えていたらいつの間にか授業が始まっていた。


 授業終了後、早速準備にとりかかった。まず買い物だ。急いで寮に戻ろうとしたら、アールベアル公爵家の次男ギデオン様が声をかけてきた。初めてだ。

「やあ従妹殿。元気そうだね。」

「ギデオン様、ごきげんよう。」

 驚いたけど顔には出てなかったはず。入学してから猫をかぶるのが上手になった私だ。

「注目を浴びそうだから、手短に言うよ。母上が今度のお茶会のお土産の吟味をしたいから、家に来るようにだって。拒否はできないよ。しないよね。明日の3時だよ。」

 出来れば、拒否したいけど、公爵夫人が…。戸惑うことはあれど。


「はい。できましたら厨房お借りしたいのですけど、よろしいでしょうか。」

「大丈夫だと思うよ。厨房にも言っておくから。」

「二時間前に伺います。」

「待ってるよ。」

 ギデオン様を見送りながら、公爵家ゆかりの私のお土産は、へたなものではだめってことなんだ。

 ただ、寮に入っても、情報が筒抜けなんだと、改めて思い知った。


 公爵家の厨房なら、きっと手伝ってもらえるだろう。だから、二種類の焼き菓子を作ることにした。食材は、明日訪ねる前に買えばいい。なら今日は包装を考えよう。考えた末、紙で箱を作って、リボンでお花お造り、飾ることにした。この世界はコピー用紙ぐらいの厚さが一番薄い。なのでちょっと厚い紙で前世の記憶をたどりケーキの箱を作った。それだけだと寂しいので表にリボンの花をぺたんと貼り付けた。でも、これでよしと満足した。



 公爵家への訪問はお茶会より緊張する、裏口から

「こんにちは。ヴィアンカです。今日はよろしくお願いします。」

 挨拶すれば

「おおっ、待ってたよ。」

 と返してくれた。厨房の人たちは私に何のわだかまりもなく接してくれた人たちだ。

「今日は何を作るんだ。」

「お手伝いしてくださいますか。」

「当たり前だ。楽しみにしてたぞ。」

 嬉しい。


 本日のお菓子は蜂蜜のスフレと失敗しないパウンドケーキです。

 スフレの材料      卵        適当

             バター      適当

             小麦粉      適当

             砂糖又は蜂蜜   適当 

 適当分量はよく憶えていない。卵を泡立ててそれから感覚でバターや小麦粉をよく混ぜ混ぜ。こんなもんかなで出来てしまった。ふわふわにはならなかったが、ふわっとしたスフレもどきになった。それでも厨房の皆さんは感激してくれた。


 パウンドケーキの材料  卵・小麦粉・バター・砂糖  同量             

 卵をよく泡立てて、バターもこれでもかってくらいにかき混ぜる。そこに、砂糖と小麦粉を少しずつ入れて、焼いて完成。これまた、できてしまった。


 これぞ異世界転生チートだ。


 より美味しくするのは、公爵家の厨房スタッフにお任せして、いざ実食だ。


 公爵家の応接間に公爵夫人と長女のシャーロット様と次男のギデオン様がいらっしゃる。

「ヴィアンカ様。今日はご招待に応じていただきありがとうございます。」

 シャーロット様からご丁寧にご挨拶いただいて、そして気がついた。

 これは私のお土産のことではなく、私のお茶会のマナーの試験だったんだ。

 気を抜かないようにしないと。


「本日は、ご招待いただき公爵夫人。公爵家御令嬢シャーロット様。公爵家御令息ギデオン様には感謝申し上げます。」

「なにやらお土産も頂いたとか、お気遣いありがとうございます。」

「いえ、皆様のお口に合うかわかりませんが、お召し上がりください。」

「最近の学院では飛行紙とやらが流行しているとか。弟が飛ばして見せてくれたのです。私も飛ばしてついついはしゃいでしまい、お母様にたしなめられたのです。ヴィアンカ様は面白いことを思いつかれますね。」

「いえ。飛行紙は、たまたまあの勧誘チラシをいろいろ折っていたらできたもので、偶然の賜物です。」

「でも、今日も美味しそうな気配がして楽しみなのです。ね、お母様。」

「そうね。ピザも美味しいし、期待しているわ。」

「奥様。ありがとうございます。」


 ちょっとホッコリしていたら

「ヴィアンカ、私のことは奥様ではないでしょう。叔母様と呼びなさい。」

「ああ…。ありがとうございます。」

 思わず涙目になってしまった。

「貴族たるもの表情に出さないように。ましてや涙など見せてはいけません。良いですね。」

「はい。頑張ります。」

心からそう言えた。それが嬉しい。

そんな会話を御姉弟の二人が、静かに微笑んで聞いていた。

 

「もうお茶会ごっこは良いですよね。僕は早く、従妹殿のお菓子が食べたいですよ。」


 それからスフレとパウンドケーキが運ばれて審査開始だ。今日は、特別にケーキの箱にはいっての登場だ。

「すごいわ。これなら、お持ちするのにお皿とか必要ないわ。」

「そうね。包むのにも便利よね。」

「まだですか。僕は、待ちきれないよ。」


笑いの中、お茶と一緒にいただく。

「なにこれ……食べたことがないわ。」

「おいしい。甘いけど甘すぎないし、お茶によく合うわね。」

「スフレなんて柔らかくて、食べた気がしない。すごい。」

「そうね。こんなケーキがあるなんて、信じられないわね。これならお茶会のお土産として合格ね。」

「お母様。合格どころではありませんわ。学園のお茶会なんて、もったいない品ですわ。」

「僕もまったく同感です。これも商業ギルドに申請ですか。」


 商業ギルド。

「あのう商業ギルドに申請とは何ですか。」

「知らせてなかったかしら。公爵家を通して、ピザ等を商業ギルドの料理レシピとして登録してあります。もちろんあなたの名前でね。ピザも徐々に知れ渡っていて、これまで、少額だけどレシピ料金が入っていますから、あなたの商業ギルドの口座に入れてあります。執事に後で確認しておいてください。」

「お手数をおかけいたしまして、申し訳ございません。」

「いいのよ。うちはあなたの許可なく作れるようにしてあるから。事後承諾だけど、よろしいわね。」

「はい。もちろんです。こちらの厨房の皆様のご協力あってのものですから。」


 こうして、公爵夫人を叔母様と、シャーロット様を従姉、ギデオン様を従兄と堂々と言えるようになった。


 商業ギルドには、ケーキの箱とリボンの花も登録することになった。もちろんスフレとパウンドケーキもだ。全て、手続きは公爵家に丸投げだ。


 帰りに、お墓参りをして、父様に嬉しい報告だ。

「父様。父様の御兄弟は、優しい人たちでした。そして、心強い方々です。」


 お茶会のマナーもお土産も合格だ。だって、注意は受けなかったもの。

 これで、自信を持って本番のお茶会に臨める。



読んで頂いてありがとうございます。

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