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孤児になった私が貴族⁉ 事故死した父が公爵家、母が男爵家出身だった。  作者: 田舎娘


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 36 魔法袋の成功

 魔法袋の作成に煮詰まっていた。煮詰まっていたところに、

「はじめから完成品を目指すからうまくいかないのではないか。三人ともそれぞれの魔法は唱えられるのだから一つ一つを付与してみたらどうだ。」

 目から鱗だ。今まで一つの魔石に複数の魔法を付与しようとして失敗していた。


 まず重さ軽減以外で実験だ。

 大中小の魔石を二つずつ用意した。一つに拡張魔法一つに時間停止を付与する。小はジャス、中は殿下、大が私だ。同じ大きさの箱も六つだ。魔力が周囲に漏れるのは気にしないことにした。よって魔法箱が六つ完成した。ただ一つの器に一つの機能だ。小は持って十日。中は二十日ほど、大は三十日ほど持った。魔法が切れる前に魔力を注ぐと魔法は維持された。

 ただ始めの魔力は時間停止や拡張魔法を意識して補充する。なので維持するための魔力は三人以外の人に注いでもらった。驚くことに効果は維持された。


 さっそく国王に報告だ。

「よくやった。これで物流の輸送が格段に良くなる。良くなるが、ハァ~、また忙しくなるのか。宰相、お前も覚悟しろ。」

「わかっております。しかしながら、このお三方にも活躍してもらわなければなりませんね。」

 何か嫌な予感が。


 予感って当たるんだね。あれから私たち三人は手分けをして馬車や厨房の保管庫用に魔力をこれまでかと魔石に付与した。まあ一度込めれば、あとはお任せなのでいいんだけど、魔法袋の方がはかどらなかった。やれやれだわ。


 私は国王に了承をもらい領地へ時間停止の魔石と拡張魔法の魔石をいくつか送った。

「ダンカンよ。有効活用してくれ。」

 さらに公爵家にもいくつかねだられた。仕方ないね。ジャスも実家に送ったみたいだ。ただ、

「私は魔力がないから小か中の魔石ですよ。もっと魔力量がほしい~。」

 と、嘆いていた。

 これらの関係者は、もちろん口外禁止だ。


 国王は付与された二つの魔石をワンセットとして各貴族に無料で配布した。飢饉などの災害に備えるようになのだが、必ず売ったり研究したりするものが出てくる。それは想定内らしい。

「どうせ理解したところで、その魔法を付与できるものなどいないだろう。むしろできるものが発見できたら儲けものだ。」

 確かに時空魔法、空間魔法の使い手など全属性の私たち三人以外聞いたことがない。


 ある日、四人は王宮に呼ばれた。なんだろう。

「よく来たな。魔石への付与はご苦労だった。実はな、其方らに報告がある。」

 ニタニタとやたらうれしそうだ。宰相まで目が笑っている。

「陛下。もったいぶらずに話を進めください。」


 なんと同じ空間に二つの付与が存在できたらしい。今までは一つの魔石に一つの付与をして一つの箱ないし馬車に応用していた。それが手違いで拡張魔法の魔石を置いてある荷馬車に時間停止の魔石を入れてしまったらしい。すると見事に調和した。


 なんということだ。確かに冒険者ギルドでは拡張部屋の一角に時間停止の部屋があった。こんな簡単なことを見逃していた。四人して唖然としてしまった。そんな四人をを見て国王、宰相が笑っている。

「それでな。魔石小二つを布袋に入れてみた。結果は拡張もでき時間停止もできた。魔法袋ができたのだ。ハハハ。これで物流がさらに変わる。僥倖。僥倖。」

「報告は以上です。何かご質問がありますか。」

「ありません。…………。」

 なんだか悔しい。でも私の思う完成品の魔法袋じゃない。


「我々は一つの魔石にこだわりすぎたのか。」

「そうだ。さらに魔力を集める魔法にもこだわりすぎたのだ。」

「重さ軽減の魔法など、まだ取り掛かりもない。魔法袋もどきを作りましょう。」

 それから4人で実践してみたが、他人の付与した魔石では反発し合うらしく、うまくいかなかった。同一人物の付与した魔石のセットのみ可能になるのだ。だが一つの空間に二つの付与魔法ができるのなら三つでも四つでも大丈夫のはずだ。とりあえず重量軽減をどうすればいいのかを考える。でもいくら考えても出てくるのは宇宙空間の無重力だ。私以外ピンとこないだろうと思いながら三人に説明する。


 そうそう、とっくにギデオン様に前世のことはばれてる。

「それがどうした?」

 その一言で心が軽くなった。私は、考え過ぎていたようだ。


「重力があるからこうして立って歩くことが出来るが、重力がなければ私は空を飛んでいるということか。」

「それは筋肉強化によるジャンプ力とは違うのか。」

「筋肉強化は人の力を増幅させるもので全く違う。」

 なかなかアイディアが浮かばない。


「原点に戻ろう。」

「お嬢は重さを感じなければいいのだろう。なら二つの付与のついた魔法袋を色々な方法で試してみよう。」

「まずは、風魔法だな。」

「でもジャスも覚えているでしょう。風魔法ではトルネードになってしまったわ。」

「あの風魔法か。風の使い手は攻撃力のある魔法だと喜んでいたぞ。ただ魔法操作が難しいらしいな。」

「ヴィアンカ。どうやってトルネード魔法を編み出した。」

「重さを軽減しようと袋の中に風魔法を閉じ込めました。そしたら上下左右あちらこちらから風が吹き荒れたのです。」

「なるほど。では、袋の中ではなく、外からではどうだ。」


 ギデオン様の言うことは、魔法袋の外側のそこに風魔法の付与した魔石をくっつける。風魔法の使い手は重いものを持ち上げるとき風魔法を下から上へ流すのだ。三人はすぐやってみようと前向きだ。でも、私は

「不服そうだな。」

 顔に出ていたらしい。

「お嬢。まずは空間拡張、時間制限なしに重力軽減を兼ね備えた魔法袋を作ることだ。改善はそれからでいい。」

 諭された。


 できてしまった。不格好なマジックバッグだ。だって二つの魔石を入れた魔法袋の外側の底にポケットをつけて上向きの風魔法の付与魔石を入れた袋だよ。もちろん同一人物の付与をした魔石を利用している。

「これじゃない。これじゃないけど。」

 便利になったけど、私の思いとは関係なく、殿下とギデオン様、ジャスも大盛り上がりだ。殿下なんて、

「これで災害時とか大いに役立つ歴史が変わるぞ。」

「はいはい。そうですね。」

 それは喜ばしいけど……。まあ、今はそれでいいか。無理やり納得した。



 それから国王へご報告だ


 それからがまた大変だった。なぜって大量に作らされたのだ。王太子のご成婚が三ヶ月後に行われる。それで魔法袋を返礼に用意することになったのだ。

 容量は小。すべて小さい魔石なので、私はそれほど大変ではなかったのだけど、袋を我が領の絹で作ることになったのだ。


 B級のつぎはぎの糸を使用した袋だけどね。

王太子妃のウエディングドレスも、もちろん絹だ。王妃様のドレスもだ。染めた絹糸だ。この頃には色は少ないが何とか絹を染めることに成功していた。当然私のドレスもそうなる。公爵夫人のドレスもだ。さすがにシャーロット様にはご遠慮いただいた。

 その上にだ。領地では、二つの地区で大忙しいらしい。心の中で、ごめんなさい。と謝っておく。ダンカン、ランディー、レオ頼むわよ。



 ご成婚はつつがなく盛大に終わった。

 国王の挨拶の一部には

「この度、魔法袋の作成が成った。しかし、ギルドにある空間の完全なる解明には至っておらぬ。だが、空間の拡張、時間経過なしを付与した魔法袋を風魔法で重さを軽減しただけだが画期的なことである。これは我が国だけが持ちえる技術にするには、あまりにも重すぎる。故に王太子の祝いに、小ではあるが、魔法袋を各国に返礼するものである。小の魔法袋は何もしなければ10日は保証する。我が国の幸を思う存分国へ持ち帰ってくれ。」

 国王の言葉に

「何をすれば10日以上持つのか。」

「小があるなら中、大とあるのか。」

「誰が作成したのか。」

「魔法袋が作れるのは今のところこの国だけだ。」

「勢力が変わる。」

「外交を考え直さなければならないのか。」

「商業・冒険者ギルドは詳細を知っているのか。」


 お祭りムード一色の中、

「これじゃない、これじゃない。」

 呪文のように呟いていた。隣の第二王子は

「ぶつぶつとうるさい。このままの袋も立派な魔法袋だ。もっと魔法袋を誇ってやれ。」

 それもそうだ。この魔法袋は別物と思うことにした。私のつくりたかったのはマジックバッグだ。これは魔法袋だ。無理矢理自分を納得させた。


 しばらく各ギルドの関係者は国内外問わずに詰め寄られていた。残念ながら彼らには一切報告していない。


 出席していない国には当然お土産はない。焦った国々が祝いの品を届けてきたらしい。王族一家が、とびきりの笑顔で対応していた。私も、その立場だが、

「こわかった~。」

「お嬢は、もう少し腹黒さを…。イヤ、お嬢はこのままでいいですよ。」

 ありがとう、ジャス。フォローはお願い。でも、どうやったら、身に付くのか?



 わが国は魔法袋の返礼によって評価を上げた。すべてを隠匿するのではなく、完成品を見せつけることで、研究していいぞ、なのだ。だがこれは三つの魔法が使えなくてはならない。風魔法以外、不可能に近いのだ。ただ魔力を補充することに気が付いた国は……。


 私とジャスに影の護衛が付けられた。


 王太子のご成婚が落ち着くと、第二王子や私の正式なデビューだ。


あと一話で終わります。

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