37 ヴィアンカのデビュタントと結婚事情
最終話です。
王太子のご成婚が落ち着くと、第二王子と私の正式なデビュタントが待っていた。
デビュタントといってもすでに王女として侯爵として外交や主立った夜会には出席している。しかし、デビュタントしないと成人とみなされないそうだ。第二王子もデビュタントを以て成人となり、例の小箱をいただくそうだ。
本人、興味なそうな態度をとっているが、小箱は相当楽しみにしているようだ。あの後、そっと話してくれた。
「思い出したのだが、私が、見た小箱は前の学院長が持っていたものだ。子供ながらに、鍵も鍵穴の無いことに興味をひかれた。あの者にとって、小箱は形見だったのだろうな。」
私は三年の学院生活の後、さらに二年間、学院に通うことを選んだ。殿下も二年の学院生活の延長を選んでいる。次男は二年の延長が終わるが、なんと臨時の学院長になった。就任理由は私だそうだ。問題児じゃないよ。でもジャスも私が学院に居る間は、全属性の担任補佐だそうだ。ちなみに担任は学院長だ。
殿下曰く、
「私の負担も少なくなる。」
だって。どういうことだ。隣でジャスも頷いてるし、失礼だよね。
でも三年間の学生生活の卒業とともに、リーナや友人は実家に帰っていく。少しどころではない寂しさがある。
「リーナ。いつまでも友達でいてね。」
「ヴィー、あなたは、王女殿下でしょ。侯爵でしょ。いろいろと忙しくなるんでしょ。でも、そう言ってもらえて嬉しいわ。」
そこにある令嬢が会話に加わる。
「今年は王族の計らいで、デビュタントを両殿下ともに行えるようになりました。私だけでなく、ほかの人たちも楽しみにしておりますの。」
「そうです。ヴィアンカ殿下のドレスも楽しみです。」
そうなのだ。
「二人だけのデビュタントなんてもったいない。いっそデビュタント専用のパーティーにしたらいいのに。」
つぶやいたらその通りになっていたのだ。さらに、今回も離宮を宿泊所とした。
「開かれた王族を目指そうと思ってな。」
「王族の威厳を見直してもらおうと思いまして。」
建前は立派だ。でも本音は?宰相が、
「地方にも優秀な人物は多い。隠れた人材を確保したい。それに貴族としての資質も分かる。」
一連の事件が堪えているようだ。
デビュタントは、私のみ絹のドレスだ。王太子のご成婚で大量の布を使ってしまったので私だけだ。デビュタントは国内向けだ。もう宣伝しなくても絹糸や絹反物の注文があちらからやってくる状態で供給が追いつかない。蚕様様だ。
ドレスのデザイン等は叔母様を筆頭に他人任せだ。
「お嬢、丸な…」
ジャスをギロリと睨めば、
「今回だけは…。」
どういうことかしらとは思ったが、センスに自信がない私は、何も言わず着せ替え人形となった。そこへ王妃様や王太子妃様も加わる。
「やっぱり女の子はいいわね。」
第二王子は
「私に来る熱意が、ほとんどヴィアンカに行って、ほっとしてるよ。」
だって。
デビュタントはつつがなく終わった。
私の装いは白地の絹にゴールドで刺繍を施したドレスだ。絹の光沢とゴールドの刺繍が光の具合できらきらと輝いていたらしい。エスコートはギデオン様だ。第二王子ジョルジュ殿下はパートナーなしだった。
「下手に誰かをパートナーにすると、いろいろ憶測が飛ぶのでな。」
例の子爵家令嬢は私の王族発表の後、姿を見なくなった。学院もやめたようだ。風の噂で修道院やら病院やらに御厄介になっていると聞いたが、物語と現実を区別できなくなったのだから仕方ないよね。彼女がいないからアクシデントもなかった。ジャスやリンダは、
「ちょっと、拍子抜けするな。」
なんか、イベント化していたらしい。
そして学院と卒業とともに発生したのが、私の婚約問題だ。
私の王族発表の後、
「第二王子とヴィアンカの婚姻はない。また、二人とも、他国との婚姻もない。」
国王が宣言した。現状、王族が少ないために王族同士で婚姻を結ぶことはしない。王族の人数を確保することを優先したようだ。
「ただ互いに好意を寄せているなら別だ。」
と言われたが、互いに首を横に振った。
「私では、ヴィアンカを御せないし、そんな熱量もない。」
だって。私は、暴れ馬ではありませんよ。それに、熱量って、なに?まあ、私も同じようなもんだけど。
他国は、私や殿下との婚姻を望んだようだが、国王がお断りしている。当然だよね。
驚いたことに私の婿候補はジャスもいた。全属性同志が理由だ。ジャスと顔を見合わせ、同時に
「「ない、ない。」」
意見が一致した。
「お嬢。何を思ってノーなのだ。」
「それはお互い様でしょ。」
長い付き合いだ。なんとなく何を想像したかわかってしまった。私はあんなことやこんなことをジャスと…。考えただけで吹き出してしまいそうだった。ジャスも同じようだ。
私の夫として最有力候補はアールベアル公爵家の次男ギデオン様だ。考えれば考えるほど当たり前だと思ってしまった。周囲もそう思っているようだ。それに、時々ギデオン様に見つめられていることがある。そんな時は、ドキってしまうのだ。これは?
そして、学院の上の二年間も過ぎた。
本日、私の結婚式だ。ドレスはもちろん絹だ。で相手は誰もが納得するギデオン様だ。『愛はあるのか』と問われれば、『あるかも』と答えるしかない。だってよくわからないから。
家と家とのつながりや格式やら、さまざまな方面から彼に言い含められた。
「自分との結婚がいかに最適で説得しようとしたが、結局はヴィアンカを誰も渡したくなかった。愛しているよ。」
その言葉で、私は陥落したのだ。
思えば、私のエスコートは常に彼だった。どんなに忙しくても、第二王子にさえ譲らなかった。殿下も、知っていたのか一人で夜会に出ていた。
「殿下にも、ジャスティンにさえ、嫉妬してしまう。」
ギデオン様に、甘い声で囁かれた。
私の結婚式の前に彼にお願いされた。
「ヴィアンカ、父と母によろしく頼むぞ。」
何をだと思ったが、思い出した。あれはシャーロット様のご結婚時に
「お嫁さんにお願いしたら。」
と提案したのだ。私はそのお嫁さんだ。
そこで考えた。どんなタイミングがいいかと。ふと前世での結婚式に両家の母親に花束を渡す企画があったの思い出した。一応こっちでも当主の挨拶がある。そのあと彼のスピーチだ。その時にした。一応、私が婿をとるのだが、挨拶は公爵の叔父様だ。そのあとは、夫になったギデオン様だ。
「・・・・二人でフローラル領を盛り上げて・・・・。皆様よろしくお願いいたします。」
このタイミングで花束を二つ持ってきてもらう。
「叔父様、叔母様。両親の事故のあと、私の親はお二人でした。それに素敵な旦那様を育てていただいてありがとうございます。これからはお義父様お義母様とお呼びできることが嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします。」
叔父様、叔母様に抱きついた。心からハグできたことを本当に嬉しく思った。
「ヴィアンカ、辛いことがあったら、いつでもギデオンを追い出して良いのよ。あなたが一人で、公爵家に帰ってきてもいいわよ。」
なんか、私が嫁ぐみたいだ。横で夫が、苦笑いだ。
二人にもハグを返してもらい、幸せいっぱいの結婚式だった。
ただ、後でシャーロット様が
「お父様もお母様も、私の時より感激してない。」
と言ったとか。
式の後、夫婦二人で、両親のお墓に報告に行った。
「伯父上。イエ、父上、母上。これからは、ヴィアンカには私がついてます。必ず幸せにします。安心してください。」
「父様、母様。お二人のような夫婦を目指します。これからは、二人を天国で見守っていてください。」
二人で手をつなぎ、墓を後にした。
* * * * *
おまけ:それぞれの結婚情報
◎第二王子ジョルジュ殿下は、なんとフローラ様のご実家コンスティ伯爵家令嬢のアーゼロッテ様とご婚約が整った。
「王太子妃との兼ね合いもあるが、コンスティ伯爵家は信用がおける。」
政略結婚だろうが、お二人とも誠実な方だから、うまくいくだろう。
◎セザール子爵家令嬢カロリーナ様は、実家に帰る前に、モントール子爵家令息アンリ様と一緒に報告に来た。
「アンリ様、リーナを泣かしたら、私が許さないわよ。」
◎ダンカン・アギーレ準男爵は、妹の結婚を見届けた後、あの出戻り夫人と結婚した。
「疲れている時、スッとお茶を差し出してくれるんだ。その気遣いに惚れた。」
◎ランディー・モラン準男爵は、ご存知の通り。今、夫人はお腹ぽっこり。生れてくるのが、楽しみだ。
◎リンダ・ネグリン準男爵は、なんと名も知らない者とだ。
「フローラル邸の警備を相談してたら……。」
顔を赤くして報告するリンダがカワイイ。
◎アンビー地区の副代官レオはダンカン・アギーレ準男爵の妹と結ばれた。
「彼だけは、怖くなかったの。」
例のトラウマを克服できたのは、レオのおかげらしい。
◎リリーは、あの御者にアタック中だ。年がかなり離れているので彼が躊躇しているらしい。メイド長のレイラ曰く
「あと少しで陥落しますよ。」
◎ジャスティン・ファンタナ男爵は、残念ながら報告することがない。彼女もいないようだ。童貞記録を順調に伸ばしているらしい。
「寄ってくる女性は、ほとんど全属性とお嬢との結びつきを期待してるんだよ。オレのことは二の次だ。だから、オレのことは、ほっといてくれ。」
ジャスだけ……。ジャスにも心許せる人が、現れますように。
ヴィアンカの人生が幸あることを願っております。そして、ジャスにも。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
また、今日から新しい連載を始めました。
『じいちゃんの飼っていた犬が新種だった。でも、なんだか、おかしい???????? 』です。
気が向いたら、お越しください。




