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孤児になった私が貴族⁉ 事故死した父が公爵家、母が男爵家出身だった。  作者: 田舎娘


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 29 謎の小箱の正体

物語は終盤に入りました。


 翌日には王宮への招待状が届いた。名目は王妃様のお茶会の招待状だ。お茶会はシャーロット様の結婚式から三日後だ。


 私に付き添うのは叔母様。叔父様は陛下と仕事。そこで妻と姪を迎えに来た体だ。陛下はついでだ。王太子は母親に帰国の挨拶に来たら、たまたまお茶会だったのでそのまま参加。第二王子は王太子にくっついてきたらお茶会に誘われたという計画だ。

今回は宰相はいない。宰相も国王の同級生だ。つまり父様とも同級生だ。事情は知っているだろう。


叔母様と念入りに支度をして、しっかりと父様の小箱を持って馬車に乗り込む。

「叔母様。今日はお疲れなのに、私のためにありがとうございます。」

「王妃様のお茶会に招かれるなんて、名誉なことなんだから気にしないの。それに王妃様はクレープを召し上がりたいのよ。」


 本日のお土産はもちろんクレープだ。シャーロット様の披露宴の時とはちょっと違うアレンジをして、『クレープアールベアル風』だ。シャーロット様のクレープは既に長男様のカフェでメニューにお目見えしている。すごい人気だそうだ。特にカップルが必ず注文するらしい。長男様は笑いが止まらない。ついでに私もだ。前世の記憶で申し訳ないけど、割り切ることにしている。お金は大事だよね。


 王妃様のお茶会は、王太子の婚約者候補筆頭のキャサリン様もいた。驚いていると

「やっと、婚約が整ったの。一年後に婚姻の儀を挙げるから王太子の婚約者として招待したのよ。」

 令嬢はすでに卒業していて、会うのは久しぶりだ。

「ご無沙汰しております。」

「私の卒業式以来ね。在学中はゆっくりお話しできなかったけど、姉妹になるんでしょう。嬉しいわ。」

「「「エッ。」」」

「王太子に何を聞いたの。」

「本日、王妃様のお茶会で重要なことを発表するから、協力してほしいと。なのでヴィアンカ様と第二王子が婚約するのかと…。もしかして私の早とちりですか。」

「そのようね。でも王太子にそんな言い方をされたら、勘違いもするわよね。」

「申し訳ございません。絶対そうだと思ってしまって。王太子様は婚約の話なんて一言もおっしゃって無いのに。反省致します。」

「いいのよ。まあ、考えてみればそれに近いかもね。ねえ。」

『ねえ。』と言われても答えに困る。


 この前までは貴族に取り込まれると思っていたけど、今は王族に取り込まれるのか。また父様のお墓に行かないと。文句タラタラ覚悟していてね。


 空気を変えるように叔母様が

「王妃様。娘シャーロットの披露宴でお出ししたクレープはすでに息子の店にてお召し上がりいただいてますでしょう。本日はクレープアールベアル風として自領で生産される野菜や果実を使ってアレンジ致しましたものを、お持ちしました。」

「まあ、楽しみだわ。第二王子から自慢されて悔しいから買いに行かせたのよ。おいしかったわ。あのクレープのアレンジなんて楽しみよね。」

 キャサリン様も、

「はい。楽しみです。」

 お茶を飲みながら、フローラル領のことを聞かれたり。

「学院の三年次は、魔法袋を開発するらしいわね。」

 とか、結構楽しく過ごせた。


 フローラル領が話題に出たので、意を決して王妃様とキャサリン様に真っ白なハンカチを差しだした。もちろん縁取りはレースとかで豪華にしている。そのレースも絹糸で仕上げている。ダンカンとランディが何枚か見本にと送ってきてくれたのだ。みんなの頑張りに感謝しかない。


「これはフローラル領のアレク地区で新しくつくらせました。絹糸で布を織りました。」

 2人して手触りを確認しながら

「なんて滑らかな手触りでしょう。こんな布、見たことも触ったこともありません。」

「すごいわ。この布は嵐を起こすわね。」

「今年からの生産ですので、量がありません。領地から五枚ほど送られてきました。シャーロット様の結婚時にお配りするハンカチは一段劣る糸で作りました。正式なハンカチは王妃様、キャサリン様、叔父様一家にと思いましたけれど、まだ試行錯誤中です。未完成な品を献上致すのはいかがなものかと思いましたが、新たなる布の発見です。まず王妃様にと思いました。」

「未完成なんてとんでもないわ。でも、ゆくゆくは量産できるの。」

「綿のようにはいかないですが、量産できればと思っております。」

この布は、ある害虫のさなぎの繭から糸を取り布を織ることを説明する。

「害虫と呼ばれていた虫からですって、素晴らしい発見だわ。もしかしてまだ知られていない何かが、国土にあるのかしら。」

 テンションが上がってしまった王妃様だ。


「何をそんなに興奮している。」

 王様だ。王太子様も、もちろん第二王子もいる。王妃様以外は立ち上がって頭を下げる

「これです。触ってください。」

「堅苦しい挨拶はいらないぞ。座ってくれ。」

 王妃様の隣に陛下が、王太子はキャサリン様の隣に、叔父様は叔母様の隣だ。自然に第二王子が私の隣だ。二人して苦笑いだ。


「ほう。これが例の布か。ハンカチになっているとまたさらに上がるな。」

 陛下にはすでに布をご覧いただいている。第二王子には、

「私が帰ったあと数日でこの布の発見だ。恐れ入るよ。」

 王太子には

「いろいろと面白いことを考えてくれて、嬉しいよ。我々はそれに振り回されているけど、悪くないな。」

 王族を振り回してる?王太子は急な視察に行ったし、確かに振り回してるのか。


 その後、クレープアールベアル風を頂き絶賛された。食べながら

「これからは、各領地のアレンジが楽しみですね。」

 なんて、会話が弾んだ。

 その時、キャサリン様からお願いされた

「クレープフェーリンゲ風を作りたいの協力して。」

 もちろんいろいろなクレープが食べられるようになるのは大歓迎だ。食は大事よ。

 和やかに終わったお茶会だった



 小腹も満たされ本題だ。王族、キャサリン様、公爵夫妻、私以外は退出させた。思わず唾を飲み込んだのは仕方ないことだと思う。緊張しているのが伝わったのか、叔母様が手を握ってくれた。嬉しい。席も私の両隣は叔父様と叔母様だ。正面に国王陛下。陛下の隣に王妃様。王太子は陛下の隣だ。王太子様の隣は婚約者様だ。第二王子は王妃様のお隣りだ。


 私の手には父様の小箱がある。みると陛下も王太子も持っている。第二王子はもっていない。陛下は小箱をテーブルに置き、

「これは私の小箱だ。王太子も持っている。第二王子は未成年なので渡していない。ヴィアンカ嬢の小箱は、もともとフローラ様のものだ。」

 陛下が淡々と話すそれを全員黙って聞いている。


「そもそも、この小箱は王位継承を証明するものの一つだ。」

 驚いているのは誰もいない。


「フローラ様は、私の叔母上にあたる。父である前王の妹だ。フローラ様がお生まれになった時、王族は兄弟で王位を争い一触触発の事態だった。フローラ様の父前王はそれを憂い、万一王族が取り返しのつかないことになったときを考え、フローラ様は死産とした。そして秘密裏に母親の実家であるコンスティ家の養女として預けた。万一の時はフローラ様を擁立し、コンスティ家とアールベアル公爵家が協力して国の安定を図ると計画したのだ。幸いにも万一はなくなった。しかし王族は前前王と前王のみとなり、フローラ様にも王位継承権を持たせることにした、この箱は、昔より王位継承者に与える証だ。ただし男子のみ。だが特例としてフローラ様にも与えられた。それがアレックスに渡り、今はヴィアンカ嬢のもとにある。」


「この箱は開くのですか。」

 思わず質問してしまった。

「開く。開け方は後で教えよう。君は未成年だが、アレックスの後継者だ。開ける権利はある。」

「ありがとうございます。嬉しいです。」

「陛下、兄上はいつその事実を承知だったのですか。」

「現公爵夫人と婚約した時だ。同時に私も教えられた。」

「なら権力を使ってヴィヴィアン様を正妻にすることは、容易かったはずです。」

「そうだ。ヴィヴィアン嬢は貴族だ。無理をすれば可能だ。だがアレックスはヴィヴィアン嬢に苦労はさせたくない。それに今更王族だと発表しても意味がない。さらに弟が婚約者を慕っているから、自分が平民になればヴィヴィアン嬢の苦労もなくなる。公爵家は弟夫妻が盛り立ててくれる。全て解決すると申してな。私と宰相の説得を一笑したよ。」


 叔父様は顔が真っ赤だ。叔母様はそんな叔父様を戸惑いながら凝視している。けど、その瞳は暖かい。

「そんな前から旦那様は…。」

「私は兄上の奥方になるのなら諦められた。だが婚約が解消されたのならと…。」

「悪いがその続きは家でやってくれ。」

「はい。」

 二人して恥ずかしそうだ。


「ということで、ヴィアンカ嬢はフローラ様の直系の孫と認める。箱の所有者でもある。箱は国王の男子に成人すると与えられる。ただ成人前に問題を起こすと与えられず、王位継承権もなくなる。王位につかなかった箱の所有者は不思議なことに五代目で箱があかなくなる。」

 この箱は国王の子が成人する時に王墓の奥にあるごくごく小さい神殿に本人が箱と共に祈りをささげると完成するらしい。

 完成しなかった場合は、その者が王位継承者にはふさわしくないと先祖が判断したとされる。フローラ様の場合は赤子のフローラ様と箱を神殿に置いたら完成したらしい。

 今でも何の価値もなくなった箱を、意味も知らず大事にしている家があるとか聞く。


 現在は箱が有効なのは、陛下、王太子、私の三つだけ。王の持つ箱は崩御した時一緒に棺に入れるらしい。悪用しようとしてもあかなければ意味がなく、国王以外は五代目以降が正確に魔力を注いでもあかなくなる。多分最初の所有者の魔力に反応して、代々婚姻により血が薄くなり、あかなくなるだろうということだ。ただ解明はされていない。

 小箱の開け方は魔力を、あるところに注入する。すると不思議なことに箱が開くのだ。


「父様はこの箱だけはなくすな、と最後に言い残しました。平民になっても心のどこかで王族としての誇りは忘れなかったんですね。」

「そう思う。あの事故がなかったら公表し、アレックスを王族に戻すことになっていた。それもあるのでヴィアンカ嬢のことはついつい王族として扱っていた。事情も知らせぬまま悪かったな。」


「でも公爵令嬢、あなたは陛下の話に驚かなかったわ。知っていたの。」

「いいえ、存じていたわけではありませんが、父から憶測だがと教えられておりました。上位貴族は多分そうだろうと思っているようです。」


「ヴィアンカも驚いていないな。」

「はい調べれば調べるほど結論は一つでした。恐ろしかったです。平民として生まれ七歳まで育った私です。でも不安定な私を支えてくれたのは叔父一家です。数年は別邸で過ごしましたが、その数年が私には重要だったと思います。あのまま貴族としてなんて言われたら、素直になれず皆様にご迷惑をおかけしたと思います。両親の死から少しずつ立ち直れたのはあの数年が必要だったのです。本当に叔父様叔母様には感謝しかございません。」


 叔父様も叔母様も涙ぐんでる。その叔母様の手にを握ると握り返してくれた。叔父様なんて、陛下の前で鼻までかんでる。叔父様って泣き虫だったんだ。


「別邸に住みだしたと聞いた時には、アレックスの子になんという仕打ちだと思ったが、表立って動けず見守るだけになってしまった。」

「見守っていただいていて嬉しいです。ですが、私が王族として資質があるのか見定めていらっしゃったんでしょう。」

「ほう。賢いな。さすがだ。」

「私を認めてくださったのは、学園に入ってからですか。」

「そうだ。お前には悪いが、足を引っ張る王族はいらない。だが全属性といい鑑定の新発見といい想像以上だった。もはや他国への移住や婚姻は認められぬ。何しろ今度は魔法袋らしいな。大いに結構。」

「私はすでにフローラル領の領主です。多少の理不尽を感じますが、今はスッキリした感じです。それに父様の遺志を継いで精進いたします。よろしくお願いいたします。」


 やっと、私の出生が明らかになった。予想はしていたとは言え、グっと胸にくるものがある。私だけではなく、国王夫妻以外の者も同じらしい。

 フローラ様って、重要機密事項だったんだ。


 その衝撃が落ち着かないうちに、王太子による視察結果の報告だ。

 塩は、どうなる?



読んで頂いてありがとうございます。

あと八話です。

最後まで見届けていただけたら嬉しいです。

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