26 公爵家一家にご報告
案内された応接間には、皆さん勢ぞろいだった。
「ただいま戻りました。いろいろご心配をおかけいたしました。」
「本当にね。」
全員から頷かれた。護衛もどきの人たちは王家と公爵家がいり乱れていたらしい。それぞれが事件を報告していて、私より詳しく事件のことを知っていた。
「君が帰って来たら、早々に陛下にご報告に上がるよう申し遣っている。明日、王宮に伺う。後ろの二人も呼ばれているからそのつもりで。」
「「はい。」」
「それより新しい布ですって、とっても楽しみにしていたのよ。」
シャーロット様に促されて、絹糸とハンカチをドーンとテーブルに乗せる。さすが公爵家だ。まず当主の叔父様が手にとる。
「ホウ。」
すぐに叔母様へ。また長男様、次男様とリレーされ最後は長女のシャーロット様だ。シャーロット様は布を手にとっても無言だ。すると母親の隣に座り直した。残念そうな顔をする。何が悪いのか分からず、絹はこの世界では受け入れられないのかと落胆していたら、
「ヴィアンカ、すごいわ。この布の手触りすごくいいわ。頬ずりしたいほどよ。でもね。私はすっごく残念なの。この布がもう少し早くでき上がっていれば、私の結婚式のドレスを作ったのに。うーん。悔しいわ。結婚式を延期したいほどよ。」
シャーロット様を皮切りに叔母様が参戦された。ただ、まだ量産できないことに落胆されたが、
「いいえ、量産できないことも付加価値が付くのよ。それにアレク地区でしか取れないのでしょう。」
女二人で盛り上がっている。そこへ長男おルーカス様が
「父上これは公爵家も投資致しましょう。なんといってもヴィアンカは家の被後見人ですから。」
何やら腹黒い笑みを浮かべている。
そこからフローラル領についての説明と相談となったのだが、叔母様とシャーロット様が
「私たちはこの布で作るドレスを考えます。ヴィアンカ。もちろん私たちに優先的に譲ってくださるのよね。」
「もちろんです。」
「ふふ楽しみだわ。」
母子であれやこれやと話しながら退室してしまった。次男のギデオン様も
「私には領地に関しては素人だし、ビアンカの無事な顔も見られたから、別邸に帰るよ。」
次男はすでにひとり暮らしをしていた。
ここからが本番だ。
公爵様の承諾をもらい、ジャスとリンダに隣に座ってもらう。
「既にご存知だと思いますが・・・」
一応、事件の説明だ。
ゲルツン領では前領主が平民になったにもかかわらず、幅を利かせていた。その原因が、国より任命された代官にあった。代官は前領主の庶子だったのだ。
父親であることを大義名分に、そのまま領主館に住み続け、あろうことか代官を新領主だと嘘を広めていった。
代官も父親なので強く出られず、人身売買も止められなかった。
その人身売買は母の実家であるボルトケ領も加担していた。事件の解明の折、ひょんなことから現ボルトケ領主一族が前領主(祖父)の血を受け継いでいないことが判明した。そこで前領主の唯一の孫である私が、ボルトケ領を相続することになった。これは第二王子の采配によるもの。
なら、二領地を統合してフローラル領と改め、フローラル領の代官をダンカンに任命した。ゲルツン領はアレク地区と改名しランディーを、ボルトケ領はアンビー地区とし前領主の私の祖父の甥であるレオを、副代官として登用したことを報告する。
その過程でアレク地区にしかいない害虫からさっきの絹ができることが分かった。
さらにアンビー地区の川を下り、海のある国まで攫った子供たちを船で運搬していた事に目をつけた。そのノウハウを生かし、海にある国と塩の交易ができるよう第二王子に要請している。
また国内でも川を使った運送を考えている。
私には公爵家のおかげでレシピ登録もある。さらに絹の取引が増えると、個人で扱うのは、規模が大きくなりすぎる。なので、商会を立ち上げようかと話し合っている。
「ジャズは執事より私の補佐をしてもらいたいのです。ただ商売のことは未経験なのでどうしたら良いかわかりません。助言をお願いしたいのです。また、ジャスの代わりの執事か家令をご紹介いただけたらと思っております。」
「大まかなことは第二王子より聞いてはいた。だが塩のことは聞いていない。今、王太子が、かの国へ視察に伺っている。急なことで皆戸惑っていたが、そういうことか。」
「塩の交易がダメでも海水を頂ければと思っています。」
「ヴィアンカは塩の精製方法を知っているのか。」
「詳しくは存じません。ですが少々粗悪な塩になりますが、海水さえあれば塩はできます。」
「父上。これは絹どころではありませんよ。一枚も二枚も噛ませてもらわなければ。ヴィアンカ、商会の立ち上げに伝手はあるのか。」
「実は伯爵家で雇った者の中に元商会の従業員が何人かおります。その一人が経営に携わったことがあるようなのです。絹も塩もすぐにはできませんので、その者で様子を見ようかと思っています。」
「リリーがいた商会の者か。大丈夫か。」
「わかりません。わかりませんが、伯爵家で雇った者はリリーをかばってくれた者たちです。私はそれを信じようと思います。ただ塩は国の扱いになるのか、フローラル領の扱いになるのかわかりません。塩に関しては私では心もとないのです。」
塩は王太子の帰国を待って相談することになった。
執事の紹介は、心当たりを当たってくれるそうだ。
「多少、経験不足でも、レイラが居れば何とかなるだろう。」
「しかし、父上、フローラル領は、元子爵家と元男爵家を合わせた領地です。それなりの人物を探さないといけませんね。」
なんだか、悩ませてしまったようだ。
「よろしくお願いいたします。」
私は、この言葉しか言えない。頼れるのは、この家しかないからね。
「ヴィアンカ。覚悟ができたのだな。」
「はい。領地に行く前は、まだ現実が見えていませんでした。でも、私は既に領主だったんです。それを、あちらで突き付けられました。もう、逃げません。」
「うん。いい顔をしている。成長したんだな。」
「成長したかは、わかりません。でも、私には、頼りになる仲間がいます。」
「よき旅だったようだな。」
「はい。でも、叔父様。叔父様や叔母様を一番に頼りにしております。これからもよろしくお願いいたします。」
「「もちろんだよ。」」
叔父様もルーカス様も頷いてくれた。ジャスもリンダも頷いてくれている。
私の貴族としての人生は、始まっていたのだ。
読んで頂いてありがとうございます。
今日は、夜にもう一話投稿します。
いよいよ、謎解き開始です。




