25 王都帰還
王都へ帰る日が来た。
出発時にはアデリアに激しく泣かれた。アデリアの旦那様には今日出発と連絡してあり、迎えに来てもらっている。そうしないと付いてくると言いかねない。やっぱり、
「私もついて行きます。離婚してでも行きます。」
駄々をこねるアデリアを旦那様に預け、
「アデリア。気持ちは嬉しく思います。私も手紙を書きます。だから手紙をください。それとお願いがあります。アレク地区とアンビー地区の様子をあなたならではの視点で教えてください。」
「はい。ヴィアンカ様のご命令しかと承りました。」
納得してくれたみたいで、ホッとした。
レイナードには、
「私もしばらくしたら王都に戻ります。ご協力ありがとうございました。」
いい笑顔で挨拶された。
だから、私も、
「我が領の不祥事でお手数をお掛けして申し訳ございません。とことん、調査をお願いいたします。」
いい笑顔でかえしておいた。
前領主一族の中には、不承の人たちもいるようだ。だが、私のブレーンは頼もしい。
「大丈夫、心配しなくていい。実は、影の数人が協力してくれている。安心して学生生活を送ってくれ。」
「そうです。マジックバックは期待してますよ。」
ダンカンとランディーにはくれぐれもよろしくとお願いした。
帰りの馬車には一般客はいない。メイド候補の六人もいるし、荷物が増えることは必然で、私ももう腹をくくっているのだ。使える者や使える物は使う、少し図々しくなった。
「お嬢の護衛が2人少なくなった。荷物も負担も増えるだろうが、よろしく。」
ジャスが言っている。
荷物の中には絹糸も積んである。ドレスを作るには足りないが、できたものは全て見本として持ってきた。王都で布にして何かを作ってみようと思っている。
あと、繭の綿で作ったクッションもいくつか馬車内に鎮座している。お尻は大事です。
出発前に、御者と馬車の護衛の冒険者が挨拶に来てくれた。御者は、来た時と同じ人だ。馬車の護衛も同じ顔だ。ほっとする。一様に
「今度の事件で、俺たちの働きが認められて、冒険者ランクが上がったんだ。お嬢のおかげだ。」
「俺も、会社から金一封がでることになってる。」
「「ありがとうございました。」」
感謝された。私こそ、
「ご協力、ありがとうございました。」
だわ。
馬車は快適に進む。王都への距離が短くなるほどに荷物が多くなっていく。挙句に馬車が増えてしまった。そんなに買った覚えはないのに、おかしい。
「ジャス先生、やっぱりマジックバッグ欲しい。」
「買いすぎだ。」
「これでも我慢したのに~。」
ジャスに怒られながら、リンダと言い合った。
私とジャスの会話に慣れている者は、笑っている。
新しい女性陣は増えていく荷物にぽかんとしている。でも王都のことや言葉遣いなど、少しずつ注意されつつ期待は膨らんでいるようだ。
いよいよ王都へ着くとなったとき、ふと疑問が、
「ジャス。今、気がついたんだけど。」
「何に気がついたんですか。」
「私ってどこに帰ればいいの。」
「あっ、どこだろう。」
「「「「「えっ。」」」」」
みんなズッコケた。だって伯爵邸はまだ引っ越しの許可が出ていないし、公爵邸で、いいの?
「公爵邸と伺っています。」
思わぬところから答えが返ってきた。御者だ。前日の宿泊地で定期馬車会社から通達があったらしい。私たちも承知済みと思い報告しなかったようだ。でも王都に入ってから右往左往しなくて良かった。
「あの公爵邸ですか。」
女の子の一人がつぶやいた。そこで私の家系に関し、レクチャー開始だ。
私の母はボルトケ前領主の娘であるヴィヴィアンだ。それは皆知っている。母の夫つまり私の父は、アールベアル公爵家現当主の兄である。
「公爵家すごい。」
父は母と結婚するため次期当主の座を弟に譲った。
「真実の愛ですか。素敵です。」
弟に公爵家は譲ったが、父の母が公爵へ嫁ぐ時に、伯爵家と領地を持参金として持ってきた。弟は異母弟なので伯爵位は父が継いでいた。そして両親が事故で亡くなったため、叔父夫婦である現公爵家に引き取られた。その後、王室管理になっていた伯爵位と領地を返還された。しかし、まだ未成年のため、私の後見人は叔父様の公爵になる。
「ちなみに父の母の名はフローラ様よ。」
「だからフローラル領ですか。」
「でも、ご両親の事故って、あの男の次男のせいですよね。」
「知ってる。あちこちで、領主、違う、あの男が『濡れ衣だ~、冤罪だ~。』って、騒いでたもんね。」
「話は、一方だけの主張を聞いて、それを信じ込まないこと。」
出戻り夫人が、ハッキリ忠告していた。
因みに、あの誘拐事件のことはみんな知らない。公になっていないしね。嫡男の処刑は、領民になんて説明したんだろ。後で、聞いてみよう。
新しい家もリフォームが終わっていて、学院が始まる前に引越がある。
新しい伯爵邸はフローラ様が嫁ぐ前に住んでいた家。さらにメイド長はフローラ様とともに公爵家へ御供してきた人の娘でレイラ。公爵家でメイド長をしていた人だ。
「みんな心してご教示頂きましょう。」
ジャスは私が公爵家に引き取られてから、すぐに家庭教師兼護衛として私を支えてくれた人。
「メイド長は家内のことを、ジャズは私の仕事や対外的なことを補佐してくれます。私の言葉だと思ってください。ジャスは、私の学院の先生でもあります。それから、もう一人、ジャスと同時期に私を支えてくれたメイドのリリーがいます。多分リリーの方が年下で平民ですが、リリーの指示に従うようにね。」
「はい。」
「リンダは護衛兼侍女です。夜会とかは貴族家令嬢として、私に付きそうのと家の守りの責任者です。リンダには家の守りを高めるために指導もお願いしています。あなたたちも指導してもらっていいのよ。」
「えっ~。」
「へえ、面白そう。」
ひとりたくましい人がいる。
「あとは勉強したい人は言ってね。読み書き計算は大事よ。」
そんなこんなで馬車は公爵邸へ一直線だ。
その間にも、王都初めての者たちは、馬車から外を覗いて、
「やっぱり、王都ね。人がいっぱい。」
「しばらくは、一緒に行動ね。一人だと、迷子になりそう。」
「お買い物が楽しみ~。」
「皆さん、王都には、観光に来たのではありません。仕事を覚えるためです。」
「わかってま~す。」
やっぱり、アリサを雇って良かったわ。引き締め役をしてくれてる。アリサは夫に子供を売られた被害者の夫人だ。お子さんが見つかるといいな。
「おかえりなさいませ。」
「ただいま。」
門番を皮切りに、家に入る前に声をかけられる。玄関ドアは自動ドアではないのに、手を触れる前に開いた。
「ヴィアンカお嬢様。お帰りなさいませ。皆様お待ちです。」
「ただいま。またお世話をかけます。よろしく。」
執事さんと一緒にレイラとリリーもいた。
レイラがリリーに六人の使用人候補を使用人棟へ案内させ、注意事項を教えるよう指示を出す。六人は使用人棟と聞いてあからさまにホッとしている。
「長旅で疲れたでしょう。今日はもう休んでちょうだい。私はこれから公爵家ご一家にご挨拶だから、あなたたちの紹介と細かいことは明日にします。」
リリーに、あとはまかす。レイラには、あらかじめ六人のメイドの教育をお願いしたい旨は、前もって知らせてある。レイラは、さすがだ。抜かりなく準備をしていてくれたらしい。
私は、叔父様たちの待つ応接室へ急ぐ。
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