23 フローラル領のアレク地区とアンビー地区
明日はゲルツン領に出発だ。その前に、ダンカン、レオと意思疎通を図っておく。ランディーは、ここに居ないから、二人にだ。
「レオ、私はまだ学生の身です。一応、指導係として、国から領地経営に詳しい者が派遣されるはずです。代官のダンカンとゲルツン領の副代官のランディーと一緒に学んでください。ダンカン、あなたには、慣れない土地で申し訳ないけど、よろしくお願いします。あと、あと……。何が必要……。」
ジャスたちに笑われながら、決めていった。
ゲルツン領の領主館は副代官屋敷とする。ダンカンとランディーはそこに住む。
現領主館は、繭の作業所とする。繭は重要秘密事項だ。これは、すでに動き出しているので、作業しながら効率を考える。
機織り機作成が、急務だ。もちろん、ここにあった機織り機はゲルツン領に持っていく。
ゆくゆくは、出来た絹を染めたい。
ボルトケ領は、国から塩の交易が認められるまで、何もできない。だが、船を使っての事業は考えているので、それに添った計画をしていく。今は待機で、船の整備等をお願いした。それと、上流の川の状況も調べてもらう。
もちろん、ボルトケ領でも、ダンカンが、領主館に入る。レオに、代官屋敷に住むことを勧めたが、断られた。
「自分の家から通います。代官屋敷に住んだら、勘違いしそうで。代官屋敷は、仕事場です。それに、今のままの方が、みんなの声が聞こえるから。」
フローラル領の領都は、今は、あえて決めない。将来的には両領地の中間地が良さそうだ。ダンカンは、代官として当面は一か月の間隔で領地を行き来する。ただ、妹さんを呼び寄せるため小さい家が欲しいそうで、テルンの街に用意することになった。テルンは、フローラル領のほぼ真ん中だし、ダンカンも行き来するのにちょうどいい。それに、アデリアの宿屋があるところだ。頼りになるだろう。
そうなると、テルンの街が新領都になる可能性が高い。人身売買の賠償金がどのくらいになるか判らないが、落ち着いたら考えようとなった。
ダンカンに、テルンにかかわらず、良さそうな場所を探してもらおう。
「ダンカン、レオ。私は二つの領地が対立するのは好みません。便宜上、区別していますが、どちらもフローラル領民として手を取り頑張って欲しいのです。その辺はよろしくお願いします。」
「「もちろん。」」
「レオは、ボルトケの姓を継いでもよろしいですよ。その権利もありますから。」
「いえ、父が健在でしたら、考えたでしょうが、フローラル領にとっては、ボルトケの名は必要ないでしょう。むしろ、無い方がいいのです。」
「領のことを考えてくれて、感謝します。では、ゲルツンもボルトケも我が領から消してしまいましょう。」
「では、どんな名を?」
「フローラ様の子はアレックスよ。アレックスの妻はヴィヴィアンよね。」
「なるほど。」
「フフフ。アレク地区とアンビー地区よ。領とは言わないわ。ここは、フローラル領だもの。」
「そうなると、前公爵様の名はどうするので。」
「おじい様は叔父様に任すわ。」
やっと、フローラル領の基礎が固まった。
話し合いがひと段落ついたところに、アデリアがお茶を用意してくれた。いいタイミングだ。彼女のような侍女かメイドが欲しい。
「私から、よろしいでしょうか。」
うなずけば、アレク地区とアンビー地区の代官屋敷、さらに新しく出来るであろう領主館の侍女やメイドのことだった。
「男の使用人は、皆さまが指導できるでしょうが、家政婦、侍女、メイド、下働きの者とか、諸々考えなくてはいけません。」
軽く、注意を受けた。
領地の管理もそうだが、屋敷の管理も良くわからない。そこで、質問だ。
「家令と執事。家政婦長とメイド長って、絶対必要なの。」
「下位貴族家では、兼任してますね。うちは男爵家ですから、兼任してますね。ダンカンの家でもそうだったんじゃないか。」
「ああ、家は、母が管理してたな。」
「いけません。ヴィアンカ様は領地持ちの伯爵様です。きちんとしてください。」
アデリアの叱責が飛ぶ。
「でも、アールベアル公爵家では、メイド長しかいなかったわよね。それに、執事さんしかあったことがないわ。」
「あの家の方針だそうだ。」
ジャスも不思議に思い聞いたことがあったそうだ。
「何代か前に、派閥ができてしまい、仕事に差しさわりがでてきたため、男女の使用人のトップは一人と決めたそうだ。今は、二人とも優秀だから問題ないが、今後は、分からんな。正直、オレ…私もお嬢の…イヤ、伯爵家の執事と家令を兼任しろと言われたら、きついな。」
ジャスの言葉の合間に、アデリアの咳払いが聞こえる。オレとかお嬢はいけないらしい。
「伯爵邸に帰ったら、レイラも交えて相談しましょう。問題は、フローラル領ね。」
王都の伯爵邸は、メイド長のレイラに任せればいい。それなら、何人かこちらから連れていき、王都でレイラに教育してもらうことにした。レイラには、事後承諾になるが、伯爵邸も人手不足だ。一石二鳥だ。今まで、領主館で働いていた人は、信用できないからね。
ダンカンとランディー、レオには、信頼のおける人を新しく雇っても構わないと伝える。ただし、調査は必ず入ることになる旨は伝えておく。
「私が、大丈夫と言っても、過保護な人たちがいっぱいいるから。ネエ、ジャス。」
「まあな。」
ゲルツン領、もといアレク地区に出発する時、レオに、三人の女性を紹介された。
「メイドとして、こき使ってください。」
アデリアも、満足そうにうなづいている。聞くと、人質になっていた三人だった。上から、二十一歳、十九歳、十六歳だ。昨日、リストを渡してくれた人の孫にあたる。つまり、私とは、又従妹だ。一応、読み書き計算はできる。三人には、早速アデリアの指導が飛んでいる。
レオを先頭に、ずらりと並んだ領民に、挨拶される。
「いってらっしゃいませ。」
列の最後尾には、おばあ様の一族の顔もある。あの人たちなら、交易を任せても大丈夫そうだ。
殿下には、頑張ってもらおう。
新人メイド三人は、恐縮しながらも私の乗る馬車にいる。馬車の中は、アデリアの独壇場だ。ただ聞いていた私は疲れた。ガタガタとゆれる馬車だけのせいではないと思う。けど、三人は、疲れもせず、アデリアに質問さえしている。
「私は、メイドや侍女って、向いてないかも。」
口に出てしまったようだ。
「安心してください。ヴィアンカ様は、ご領主です。メイドになれません。私たちはヴィアンカ様が領地経営に専念できるよう、生活をお支えすることです。ああ~、私がもっと若かったらヴィアンカ様について行くのに……。」
そこは家族優先で。
機織り機が荷物にあったので、ゆっくりの進行になっていたが、暗くならないうちにテルンに着くことができた。宿はもちろんアデリアの宿だ。アデリアの顔を見た途端ほっとした顔をしたアデリアの夫には申し訳がない。
「ヴィアンカ様が王都へお帰りになるまで、私も付き添います。」
着く早々、旦那様に宣言していた。私は助かるけど……。
部屋は前と同じ。居心地はいいのだが、アデリアの指導が飛び交っている。
「部屋に着いたら手や顔を洗う用意をして。お茶の準備はこうやって。食事は・・・。髪は・・。ドレスは・・・。」
私だったら覚えられないが、三人は楽しそうだ。
21歳のケリーは手が器用らしく、アデリアの教える髪型を熱心に聞いて、さらに研究している。
「ケリーはセンスがあるわ。王都の流行も参考にして頑張ってね。」
褒められていた。
19歳のケイトは色の遣い方が独特で、ドレスにこれを合わせて、この髪飾りにリボンを飾れば~とか。私はあまり、いえ、全然装飾品をもっていないので、アデリアがアンビー地区の館からかき集めたものを持ってきていた。あの同級生の女の使った品だし、私の好みに合わないと思っていた。けど、
ケイトが組み合わせると、あら不思議。
「これはヴィアンカ様が普段使いにするのは大丈夫ですが、お茶会とか夜会とかの時は見劣りがしますね。王都に行ったらきちんと揃えてください。三人も見る目を養わないといけませんよ。」
「「「はい。」」」
私もです。でも私って鑑定があるから大丈夫よね。
食事のあとの会議だ。出席者は私とジャスとダンカンとリンダだ。ほかの人は退席してもらった。その時にもアデリアから指導が入る。
「通常はメイドか侍女を一人残すべきですが、そう言ってもいられないようなので、これで失礼させて頂きますが、メイド候補の三人はきちんと常識を学んでくださいね。ご本人が結構、無頓着らしいですから。では、リンダさんお願いします。」
出て行ったあと、ため息が出たのはしょうがないと思う。ほかの三人も、苦笑している。でも、
「今までのような気軽な接し方は、控えないとですね。」
私は、全然OKだけど、仕方ないのかなあ。
とにかく時間がない。
あと十日で王都に戻らなければならない。
読んで頂いてありがとうございます。




