21 ブレーン誕生
私のブレーンが決まった。そこで、四人に今後の構想を話す。
「では、ダンカンあなたにフローラル領の代官をお願いしたいのです。ランディーにはダンカンに従ってゲルツン領の副代官をお願いします。」
「いきなりはちょっと。」
「俺も……。」
二人とも、自信がなさげだ。
「でも、今度こそ国からまともな指導役を派遣してもらうことになっています。」
と言えば、了承してくれた。
ただボルトケ領は一族の中から探すことにした。いなかったら、ダンカンに委ねるしかない。ただ、ダンカンも、ボルトケ領を束ねる人がいないのは、心細いそうだ。良い人がいるといいな。
ジャスには護衛兼執事。リンダには護衛兼侍女だ。ダンカンたちはパーティーを組んでいないので別れても差し支えない。
そして重要なことを発表する。第二王子から報告を受けている事柄だ。
「四人は今回の功績により昇爵されます。ジャスは準男爵から男爵へ、ほかの三人は準男爵になります。でも、ほかの報酬が良ければ考慮されます。どうしますか。」
驚いたようで、
「何もしていませんが。」
遠慮しようとしたので、
「それだけ、今回の事件の解決が重要だったということです。これ以上、被害が拡大しなかったことへのご褒美です。私が依頼していない影の皆様にも何らかの報酬があるそうです。素直にいただきましょう。ダンカンにはアギーレの家名を復活させることも許可が出ました。新しい家名にするかよく考えてください。それとフローラル領に妹さんを呼びよせてあげてね。」
「それは…。ありがとうございます。よく考えます。本当にありがとうございます。」
ダンカンもそうだがランディーもリンダも一応公爵家で身体検査はしている。その報告書はジャス経由で私も読んでいた。
ダンカンは元男爵家嫡男。妹さんが運悪く、ある子爵家当主に見初められ愛人として差し出すよう強要された。もちろん、それを拒否。拒否したら貴族でいられないような嫌がらせをされた。それでも拒否続けていたら、とうとう冤罪を吹っ掛けられ爵位を返納せざるをえず、平民になるしかなかった。学院に在学中だったダンカンは卒業まじかだったのに退学した。それ以降冒険者として一家を支えてきた。ダンカン15歳の時だ。
現在、妹は親族の家に預けられている。ダンカンはずっと妹のため、生活費を送っている。両親は何年か前に他界している。
貴族なら大なり小なり聞く話だが、私が許せなかったのは、妹がわずか八歳だったのだ。婚期が早いこの世界でもありえない年齢だ。ダンカンの報告書を読んだとき、叫んでいた。
「この変態男はどうなったの。」
幸いなことにすでにこの世にはいなくなっている。死亡の原因は病となっているが、本当は虐待していた女の子に刺されたらしい。刺した女の子は修道院へ送られたと書いてあった。ダンカンも知っていたらしく、
「私が殺したかった。」
ダンカンの気持ちはよくわかる。
ランディーは他国からの移住者だ。移住といっても正規ではない。冒険者として入国し、そのまま住み着いた。祖国で何かあったか分からないが、入国以前のランディーの足取りはつかめず、たぶん名も捨ててきたんだろうとあった。しかし、貴族であることは間違いなしだそうだ。報告書に書けないことがあるようだ
リンダは子供の頃から騎士に憧れていた。でも家族は女の子らしくと剣を持つことを禁止し、女の子らしく育てようとした。リンダはそれに反抗して、学院の三年次で親には内緒で騎士課に変更した。それが実家にばれないわけもなく、強引に退学させられ、結婚を決められてしまった。それも夫となる人は、親より年上だ。夫となる家には裕福であったらしく、結構な金額を結婚準備金として実家に支払っていた。お金に目がくらんだ家族に見切りをつけ、逃げ出したのは結婚式当日。逃げただけでなく、式を挙げる教会へ『これこれしかじかで結婚はしません。』と手紙まで送りつけていた。
リンダの実家は賠償金が課せられたり、娘を売る家と陰口を叩かれ没落してしまった。しかし、今も貴族籍をなんとか維持しているらしい。
逃げた後、リンダも冒険者となる。ジャスと違い貴族だったことは伏せていたが、仕草や教養で貴族とかかわりがある事は、誰が見ても明らかだったらしい。
なんだかんだで貴族出身の冒険者は結構いるし、自然と元貴族同士でパーティを組むことが多いそうだ。貴族っぽい冒険者には、平民の冒険者は近づかないらしいから、しょうがないことではあるようだ。
「私はあなたたちを信頼しています。公私において、理不尽なことをされたり強要されたりした時は私を利用しなさい。腐っても伯爵です。私はあなたたちを守ります。」
なぜか四人とも涙をためている。部下を守るのは、当たり前のことだよね。上の役目だよ。悪いことをしなければだけど。だから頑張って働いて。
私のブレーンの役割が決まったところで、今後のフローラル領の話だ。
「私はボルトケ領で塩の交易をしたいと思っています。それで人身売買に参加させられていた船乗りを雇いたいと思います。どうでしょう。」
さすが、四人とも私の意図は伝わったようだ。
「なるほど、彼らなら夜でも川を下ることが可能なほど水路は熟知している。さらにいつもの船着き場は海のある町だったな。」
その国との交渉は、国に頑張ってもらおう。
「なら、商会を作った方がいいのでは。」
忘れていたけど私は商業ギルドに登録済みだ。これも説明する。誰か丸投げできる人はいないのかしら。
「お嬢。丸投げはだめだろう。だがリリーの商会で働いてやつがいただろう。任せられるかもわからないが、少しは役に立つだろう。」
「塩がだめなら、定期船とかもいいかもですよ。」
「塩の作り方を知っていれば海水をもってくるだけでいいですよね。元はただですよ。」
「あの川の上流は、どこにつながっているんだろう。国内の定期船も考えられる。」
五人集まるとなかなかおもしろい案が出る。国の出方によって方針を考えよう。
ゲルツン領は現状維持だ。特産物もなく農村地帯だ。焦らず考えることになった。
「私は、この国の生まれではない。けど、爵位をいただくのなら、心してゲルツン領の発展に力を尽くそう。ダンカン。よろしく頼む。」
「もちろんだ。」
二人して、やる気があるようだ。頑張って欲しい。
私は、どうしても気にかかることがある。四人に相談だ。
「ゲルツン領とボルトケ領の名前を変えたいのです。これまでの負の財産を払拭できるような名前ってないでしょうかね。」
「名を変えても、事実は変わらないぞ。」
「分かってます。でも、ゲルツンだけはイヤ。思い切って、ダンカン領とかランディー領にしようかしら。」
「お嬢。イヤ、領主。それこそ愚かなことだ。名前でつけるんだったら、領主の名だろう。」
それも、イヤ。
「急がないので、いい名前があったら、提案して。」
明日も殿下との会談だ。
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