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孤児になった私が貴族⁉ 事故死した父が公爵家、母が男爵家出身だった。  作者: 田舎娘


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19/19

 19 第二王子殿下、登場

 その日ジャスとダンカンは帰ってこなかった。心配な私に、

「大丈夫。こんなこと想定内よ。お嬢のやることは、見つからないようにおとなしくしていることよ。」

 そうなんだけど、心配ぐらいさせてよ。


 ジャスとダンカンは翌日も帰ってこなかった。


 そして私は、夕食に招待していない人からの報告を聞いている。報告によると二人は、代官屋敷に出向いた直後、前領主と鉢合わせになった。現領主の使いだと伝えると、

「偽物だ。現領主は私の息子だ。この者らを牢に入れよ。」


 入れられた牢は、なんと町民らしき人たちが十人以上いたらしい。小さい子は五歳ぐらいで、大人もいる。詳しく話を聞くと

「奴隷として売られる。」

 話を聞き終わる頃に、慌てて代官が前領主と共に現れた。


「使者様をこのような牢に入れて申し訳ございません。」

「何、珍しい体験をさせていただいた。誤解は解けたようですので、出して頂けますか。」

「出すわけにはいかん。」

 前領主が吠えた。

「こうなったらこの二人も売ってしまおう。二人には隷属の魔道具をすぐに着けるんだ。」

 幸い予備が無かったらしい。

「予備がないだと。なら殺すか。だが、それもまずい。殺すならこの国を出てからだ。それよりどうしてこの二人をこの牢に入れたんだ。普通は一般牢だろう。」

「しかし、領主様が牢に入れろとおっしゃいましたので、領主様の牢はこちらのことと思っておりました。」

 ちなみに代官は何も言えず、おろおろしてるだけだったそうだ。優秀でもダメな人だね。人身売買をしているのに、報告もせず黙ってるんだから。


 報告を聞きながらゾッとした。もしかして私も奴隷として狙われていた。何か大事になってしまっている。


 今のところ死なない程度に面倒は見てもらえているらしい。それにすでに王都にも報告は済んでいる。

 でも、でも、やっぱり心配だよ。心配なんだけど、

「アホすぎない。」

「ジャスもダンカンもアホばっかりで仕事が楽だ。と言ってたぞ。でも、こんな奴らが国の一大事になるような組織が作れるかって、首をひねっていた。」


「お嬢。これはもう国の問題だ。下手に手を出さないほうがいい。それに攫った者を移動するまでジャスとダンカンは大丈夫だ。」



 ジャスとダンカンが帰ってこなくなって五日目の朝。朝から騒がしい。でも私意外平常運転だ。私は、心配で……。

 昼ごろになってランディーが

「お嬢。出かけるぞ。」


 連れてこられたのは代官屋敷だ。領主館は代官屋敷の奥にあるので同じようなものだけどね。すんなり中へ入る。なんだかいつもの門番とは違うようだ。今までは、やる気が無さそうにだるそうにしていたのが、ぴしっとしていかにも仕事してます、って感じだ。案内されたのはこじんまりとした応接室みたいな部屋だ。ランディーとリンダが警戒してないので大丈夫だとは思っているけど、ちょっと不安で怖かった。


 そこにいたのは、なんと第二王子ジョルジュ殿下だ。

「元気そうで良かった。心配したぞ。」

 リンダに促されて挨拶して、殿下の向かい側に座る。出されたお茶を飲み、心を落ち着かせる。

「殿下、ジャスとダンカンと他の人たちは無事ですか?」

「ちゃんと保護した。ジャスたちには身綺麗にして、少し休ませている。安心しろ。」

「ありがとうございます。」

 一応、私からも話を聞く必要があったらしく雑談のように今回のことを聞かれた。


「かくかくしかじか。」

「なるほど。なるほど。」

 事情聴取が終わるころジャスとダンカンが入ってきた。二人の顔を見た途端涙が出てしまった。二人の顔を見たら緊張が解けたみたいだ。

「…。ごめんなさい。グズ…。無事でよかった。」

「殿下。御前を失礼致します。お嬢、そんなに危険ではなかったんだよ。調子抜けするぐらいにな。牢でもすぐに影と接触できたし。」

 ダンカンも頷いている。既に二人への事情聴取は終わっているようだ。ただ殿下の顔が険しい。


「ヴィアンカ嬢に伝えにくいことなんだが、前領主が集めた者たちは、隣の領地を通して他国へ売られたようだ。」

 先をなかなか口にしない。隣の領地は母の実家で、今は準男爵家だ。私が言葉を続ける。

「母の実家が関与している可能性があるってことですね。」

「そうだ。さらった者たちをボルトケ準男爵領に流れている川から船で運んでいたようだ。これから ボルトケ準男爵家へ調査に入る。そこでジャスとダンカンを借りたい。」


 私は終わったら呼ばれるようだ。私が行っても足手まといだしね。ジャスもダンカンも体調は問題ないようだ。

「無理をしないように。」

 送り出したあと、私は領主館に入った。一応、現領主だし牢の鍵も預かった。現時点で、誰が関わっているか分からないから、下手に鍵を預けられないからね。前領主や代官も牢に入っている。

 そして、国王の命でゲルツン領へのすべての出入りが禁止されている。それほどの事件なのだ。だからからか、王都から第二王子がゲルツン領まで来るのが早かった。


 後で、殿下は

「あれほど乗馬を習っていてよかったと思うことはない。」

 と言っていた。何でもゲルツン領だけでなく他領の者もさらっていたようで、王都から殿下に追随したものは、五名。兵は行く先々で協力を求め兵を集めながらの強行軍だったとか。

 のちに国王が家族内で

「ヴィアンカ嬢が領地へ行くと聞いて、影を付き添わせたのは我の功績よの。さすが儂。」

 自分で自分を褒めていたらしい。

 この件で一番称賛されたのは、第二王子の五日でゲルツン領まで馬で駆け抜けたことだった。


 殿下からすぐに連絡があり、ボルトケ準男爵領に出かけることになった。現ゲルツン領主として乗り込むので、馬車は領主館にあった馬車を使った。従者は定期馬車の従者だ。良い笑顔で手を振ってくれた。馬車は贅を尽くしたものだったが、乗り心地は最低だった。思わぬところでクッションが役に立った。あれがなかったら私のおしりは…。考えただけでゾッとする。

 リンダとランディーには裏切られた。二人は馬に乗り馬車と並走したのだ。 

 ボルトケ領にはその日のうちに入った。領都にはあと一日馬車に揺られるらしい。


 その街の一番の宿に泊まった。宿屋のオーナーが挨拶に来た。来たんだけど、

「ヴィアンカ様~~~。」

 と叫びながら抱きつかれてしまった。リンダとランディーなんて動けなかったようだ。しまったと思ったのか剣の鞘に手をかけている。

「お待ちください。妻が申し訳ございませんが、これには事情があります。剣をお納めください。妻はヴィアンカ様のお母上のヴィヴィアン様の……。」

「ヴィアンカ様、ヴィヴィアン様。…ヴィヴィ…様…。」        

 母様の名を言いながら泣いている。わたしはそっと奥方の背中を撫でつつ

「母様をご存知なのですか?」


 やっと落ち着いたのか、

「は…い。私メは、ヴィヴィアン様のメイドをしておりました。アデリアでございます。」

 なんと、母様のメイドですって。

「ヴィヴィアン様がアレックス様とご結婚する時に、私もお屋敷をやめて主人と結婚いたしました。ヴィヴィアン様が亡くなられたことは残念ですが、お子様のヴィアンカ様に会えるとは思っておりませんでした。嬉しくて、嬉しくて。」

 また泣き出した。私はアデリアの手を握り

「母様のことを教えてください。」


 一晩では、足りなかった。二人して寝不足の顔をして馬車に乗りこんでいる。

アデリアは

「メイドも侍女もお付けになっていないなんて私が臨時にメイド兼侍女に入ります。」

 さらには、いつの間にやら私に合うドレスまで用意していた。リンダなんて

「私は護衛です。やっと元の仕事に戻れる。」

 と歓迎していた。

「では、旦那様あとはよろしくお願いします。」

 旦那様には有無も言わず言わせず、手を振って私と馬車に乗り込んでいた。心なしか旦那様が寂しそうだ。必ずお返ししますからと、心で思う。


馬車内は母様の昔話と、時々のうたた寝と有意義な時間だった。が、乗り心地は悪いままだった。

「平民の馬車なんてこんなものです。ただこれは見えばっかりで貴族の馬車としては最低ですね。前領主の性格が分かります。」

 馬車は新しくしようと決めた。


アデリアは外を指差し

「あそこでヴィヴィアン様が・・・。」

お母様はかなりお転婆だったようだ。

「地方の男爵なんて平民にちょっと毛が生えたもんですよ。私なんて箔をつけるためにお金を払って働いてたんです。」


「最初はどうしてって思ったんですが、ヴィヴィアン様と年が近いからヴィヴィアン様付けになってこの人だったらお仕えできるって思ったんです。王都にもご一緒したんですよ。もちろん実家のお金でね。実家は裕福な商会でしたし、どっかの貴族とネンゴロになるのを期待してたようですけど、あの宿に泊まった時に旦那様と知り合って結婚したんです。アレックス様にお会いしたこともございますよ。」


 父様のことも話してもらった。

「アレックス様はヴィヴィアン様をあの家から救い出してくださったんです。あの後妻や連れ子、息子はヴィヴィアン様に辛く当たってました。早く助けるため、駆け落ちみたいになってしまいました。アレックス様にお会いしたとき、ヴィヴィアンは私が必ず幸せにする安心してくれ、それと今までヴィヴィアンを支えてくれてありがとうって、メイドごときの私に頭を下げられたんです。ヴィヴィアン様は絶対幸せになるってそう思いました。ヴィヴィアン様のいないお屋敷にお勤めするのも嫌なので、その時に結婚を理由にやめさせてもらいました。」

アデリアは遠くを懐かしむように語る。


「何年かしてヴィヴィアン様からお手紙をいただきました。その時にアレックス様が公爵家から籍を抜いて平民になられたと書いてありました。でも二人で寄り添って生きていけるのがものすごく幸せだと。もっと幸せなことはヴィアンカ様がご誕生して、生活に花が咲き誇っているとありました。」

「父様と母様は私を愛してくださいました。あなたの話は私の宝になりました。ありがとう。」

 二人して目を赤くしている。



 母様の生家に着いたようだ。この時はのんきに母様の絵姿が残っていればいいなぁなんて思っていた。

 本日は、旅の疲れを癒すため報告も話し合いも無く就寝だ。実のところ、涙目の私に、ジャズが過保護を発揮しただけだった

読んで頂いてありがとうございます。

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