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孤児になった私が貴族⁉ 事故死した父が公爵家、母が男爵家出身だった。  作者: 田舎娘


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 16 ナイシール伯爵邸の秘密

 学院は、入学の始まりが春の終わりだ。秋の終わりに一年が終わる。冬は地元に戻る。寮にいても大丈夫だが食堂とかは開いていない。図書館は開いている。冬の間は住居は提供するけど、他は自分で何とかせよということだ。生徒たちは、この間にアルバイトとかに精を出す。王都の方が稼げるので下位貴族はほとんどが帰宅せず寮生活をしている。子爵家令嬢のリーリもアルバイトに精を出している。

「家に帰りたいけど帰りにもお金と時間がかかるから寮で頑張るの。このままだと家のお荷物になりそうで。」



 かくいう私は冬の間にナイシール伯爵邸に引越予定だ。すでにリフォームも終わりそうだ。


 リフォームは家政婦長にお任せ。丸投げと言っていい。だって鍵をもらって伯爵邸を見に行ったら、

「まあ、まだあの絵があったんですね。」

「これは、フローラ様がお座りになっていたソファです。」

 とうとう何を見ても感激してしまい、最後には泣いてしまった。

「あ~。時が遡ったようです。」

 だからレイラさんにフローラ様のいた頃の仕様にしてとお願いした。渋っていたし、興奮したのを反省したのか。

「ここはヴィアンカ様の家です。」

「私もおばあ様の雰囲気を感じてみたいの。私の好みに合わなかったら少しずつ変えていくから。」

 その結果、家政婦長の思うフローラ様仕様に仕上がっていく。貴族の屋敷なんて詳しくないので私に文句はない。


 ジャズに聞いても、

「俺は男爵家出身だぞ。俺に聞くな。」

 ただ自分の部屋は自分好みにしてもらったらしい。私の部屋は家政婦長に丸投げした。私はサインするだけだ。後日リフォームも終わったと報告を受けた。


 確認しに向かうと次男様もいた。聞けば公爵夫妻は既に確認済みだという。あとは絵画とかの装飾品だけらしい。家は申し分なかった。絵画とか花瓶とかがないのでちょっとさびしい気はしたが、飾りを飾ればずっと華やかになる。


 庭もすでに整っている。侯爵家の庭師頭が弟子にその地位を譲って、最後の仕事だと伯爵家に来てくれたらしい。あの別宅で過ごしていた時、庭のことで相談に乗ってもらっていたおじいさんだった。フローラ様や父様のことも知っていて、

「伯爵邸の庭は、任せてください。後人も育てます。」


 厨房も、侯爵家から副料理長が名乗りをあげてくれた。

「おやじさん(料理長)は、当分隠居しないようですから、伯爵邸で思う存分腕を発揮します。それに、ヴィアンカ様は、今や新しい料理の発信者ですからね。」

 ナイシール伯爵家の料理長の弁だ。


 あの五年間は、私にとって必要な年月だった。



 不思議なことに私の部屋のクローゼットにはドレスやら帽子やらが揃っていた。

「母上がね。姉上と一緒に嬉しそうに用意していたよ。君に任すと必要最低限のものしか用意しないだろうってね。」

 その通りです。ありがたい。

 装飾品(絵とか)もフローラ様と父様の肖像画を持ってきて良いことになっている。フローラ様はご夫君とご一緒だ。私のおばあ様とおじい様だし、楽しみだ。

 父様は一人だけの絵だ。母様との肖像画は無いからね。母様の絵が実家にあるんだったら欲しいと思った。落ち着いたら、二人で寄り添っている絵を描いてもらおう。


 家政婦長レイラ、ジャスとリリーはすでに引っ越している。あの商会から引き抜いた人はまだ公爵家で見習いをしている。貴族の対応はできるけど、貴族の習慣をしらないから、学んでいる最中だ。

 ただ、私が移るには問題があるらしい。その問題は使用人だ。ジャスが執事として仕事をするなら、私の護衛がいなくなる。それに女性の護衛も必要だ。だからといって信用できない人間ではダメ。使用人が整うまで寮生活になる。


「お休みが終わるまでには引っ越しできるようになるでしょう。」

 家政婦長の言葉だ。


 でも、私の確認にギデオン様が立ち会うことなど、必要ないと思うのだけど、誰も何も言わない。

「ギデオン様?」

「シー。後で。」

 何か、あるらしい。


 一通り、確認し終わったので、応接室でお茶をいただく。まだほかの部屋は殺風景な部屋だが、ここだけは公爵家に見劣りすることなく整っている。

「誰がいつ来るか分かりませんので、ここだけは先に整えました。」

 いろいろ考えていてくれて助かる。



 応接室にいるのは私とジャズにレイラだ。一息ついてから次男様が口を開く。

「実はフローラ様の肖像画の裏から、ここの裏の設計図が発見された。」

「裏の設計図?」

 レイラとジャスを見れば知っているようだ。

「さすがの従妹殿も分からないかな。」

 笑っている。その笑顔は、子どもの宝探しのような、期待した顔だ。

「あッ。もしかして、隠し通路ですか。」

「あたり。さすがだね。」

 次男様がいる理由は、隠し通路を調べることだった。この事実を知っているのは公爵夫妻と次男様、私とジャス、レイラだけだ。リリーは知らない方が彼女のためだからと知らせていないらしい。


 ギデオン様が調べたところによると、あからさまな通路が二つ。一つは厩に、一つは行き止まりだそうだ。

「他にもあるってことですか。」

「ある。ドアの場所はわからないが、地下で入り組んでいて迷路みたいだよ。私でも全容はわからない。が、おそらく設計図通りのようだ。入り口はうまく隠してある。」

「王宮みたいですね。あっ……。」

「そういうことだろう。だから父上も母上も全てを調べなくても良い。だいたいでいいと言われてね。」

「後は、私がですね。」

「そういうことだ。地下に何があるかわからない。しかし、公爵家としては、これ以上この家の秘密を知るわけにはいかないということさ。」

「わかりました。」

 そう言ってギデオン様の調べたことは全て教えてくれて帰っていった。


 私とジャスとレイラは

「使用人が増える前に調べておいた方がよろしいですね。」

「でも、誰が調べるの。私とジャスしかいないよね。」

「俺、いや私が調べましょう。大丈夫。迷子にならないようにします。」

 心配そうな私に、

「忘れたのか、俺は冒険者だったんだぞ。」

 たくましい。


 ジャズはちゃんと調べてくれた。

 通路の入り口は家の中に五つ。二階に二つ、一階に三つ。

 二階はフローラ様が寝室にしていた部屋の暖炉だ。暖炉の奥と思いきや違った。暖炉の中ではなく、外側の側面だった。。

 もう一つは広いバルコニーにあった。二つともうまくカモフラージュしてある。


 一階は図書室。これは定番よね。本棚の裏とか思うけど、本棚じゃなかった。図書室のドアを開けたドアに隠れる壁だった。そこに絵をかけられるようになっていて、絵が扉になっていた。開けると金庫になっている。その金庫の奥が隠し通路の入り口だ。


 あとは階段の下の道具置き場。


 それと執務室らしき部屋だ。


 ダミーは寝室の暖炉と階段の下だ。ただこの二つは嫌らしい構造になっていたらしい。この二つは途中で合流する。合流してすぐに分岐点があり、一方は行き止まり、一方は、くねくねと結構長い通路になっているんだとか。行き着くところは厩だ。それも厩のドアを開けると馬のおしりあたりなんだとか。開けた途端、馬に蹴られてしまう。


 本命が図書室の金庫だ。腰高の入り口なのでそこを開けると滑車がついている。ロープが上の方にありそれを利用して向こう側に行くらしい。逃げる時ロープを切ってしまえば追っ手を足止めできるようだ。だが、今は、下がどうなっているのかわからないので、一人では挑戦できなかったらしい。ロープも劣化している可能性があるので、新しくしてからの探索のようだ。


「まるで忍者屋敷ね。」

「忍者屋敷?」

「からくり屋敷ってこと。」

「なるほど。」


「執務室は、半分おとりだな。あそこの隠し通路は、すぐに外に出る入り口があるんだが、その手前にもう一つドアがあるんだ。そこをたどると厩につながっている。」


 バルコ二ーは庭に面した壁が入口らしい。そこは、中が滑り台になっていて気をつけないと最後は壁に激突するらしい。


「これって……。」

「ああ。ますます、お嬢の身分が確定だな。」

「王族は、裏の設計をご存じなのかしら?」

「多分、知らないだろう。知ってたら、よその大使館になんて貸し出さない。」

「そうだよね。報告した方がいいかしら。」

「う~ん。・・・。お嬢の身分が確定してからで良いんじゃあないか。」


 フローラさまを守るために、こんな屋敷を作るなんて……。

 政変時だったから?フローラ様は、生れた時から人生が決められていたんだ。

 おじい様と結婚して、幸せだったらいいな。


 でも、ちょっと冒険ぽくっておもしろそう。

「お嬢、詳しいことは後だ。行くんだろう、押し付けられた領地へ。」




読んで頂いてありがとうございます。

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