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孤児になった私が貴族⁉ 事故死した父が公爵家、母が男爵家出身だった。  作者: 田舎娘


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 13 リリーが仲間になった

 ナイシール伯爵邸は鍵がまだ公爵の手元にないので用意ができたら連絡してもらう。その後、内装を確認してリフォーム開始となる。何気に家政婦長レイラさんが張り切っている。

「50年以上ぶりでしょうか。懐かしいですわ。用意するものを考えませんと。」

 家政婦長はやることが満載のようだ。


 一方ジャズは私の護衛がない時は公爵家で執事の教育だ。

「俺が一番苦労しそうだ。」

 ジャスと話しながらお墓まで歩く。

 父様と母様に散々文句やらを愚痴って、

「でも、頑張る。」

 と言っておいた。



 学院に帰る前にリリーに会いたいと言えば、

「リリーはあの店にいないぞ。」

「どうして。」

 リリーの勤務先は結構大きな商店だったので、従業員も多数いる。そこに公爵家で勤務の傍ら、勉強礼儀作法を習ったとの触れ込みのリリーは、辛く当たられたらしい。


「本人は詳しく言わないが、孤児院出身者が自分より良い待遇なのが許せない奴はいっぱい居るからな。それに孤児が貴族の家の使用人になれるはずがない。だいたい体を使って…いや何でもない。」

「リリーは男たちに言い寄られたってことよね。許せない。ジャス行くわよ。」

「どこへ。」

「そのお店よ。リリーはね。私にいつか働いてるお店に買い物に来てくださいって言ったのよ。」

 ニヤリ。

「なるほど、御供しましょう。」

 ニヤリ。



「リリーなんて女はこの商会にはいません。お買い物でないなら、お帰りください。」

「そんなことはないはずだ。リリーはこの商会で働くことになったと、公爵家を辞する時に申していた。」

「公爵家って、とんだ大口をたたく方ですね。衛兵を呼びますよ。」


 そこへ身なりの良い男性が奥から出てきた

「何を騒いでおる。これからモントール子爵家令息がいらっしゃるのに、お迎えの準備はできているのか。」

「はい、できております。ですが、こいつらが言い掛かりをつけて来ましてして。」

 男性は商会の長らしい。じろりと私たちを見ると、見下したように

「営業の邪魔ですので、お帰り願いませんか。早く帰ってもらえ。」

「私はリリーに会いに来たのです。リリーを出しなさい。」


「なんだか騒がしいな。忙しいなら後日にするぞ。」

 私の後ろの方から声がした。

「滅相もありません。お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」

 私を押しのけて声の主に挨拶している。ちょっと大げさによろけてみた。ジャスがニヤリ。

「お前、お嬢様に何をする。」



「えっ、ヴィアンカ様じゃないか。」

「えっ。モントール子爵家令息こんにちは。こちらにはお買い物ですか。」

「うん。この店はうちの領と取引があるんだ。ヴィアンカ様は。」

「私は前にメイドをしていたリリーが、こちらのお店に就職したと聞いたので、顔を見がてらお買い物をしようと思ったのです。ですが、リリーなるものはいないというのです。ですから帰るところです。このことは叔父様にもご報告しないとですね。ジャズ、報告はよろしくお願いします。」

「かしこまりました。先ほどお嬢様を押しのけ、危うくをお倒れになりそうでしたので、しっかりとご報告させていただきます。」

「では、モントール子爵家令息アンリ様。ごきげんよう。」

「ああ、学院でお会いしましょう。」


「彼女に何をした。」

「リリーになるものはいるかと尋ねてきたので、いないと対応しました。そんなはずはないと使用人とちょっと言い合いになったようです。子爵家令息様を煩わせるようなことはありません。あの~、あの娘…いえ、あの令嬢はどなたでしょうか。」

「彼女はナイシール伯爵家令嬢でアールベアル公爵様の姪にあたる。学院では、第二王子とも親交がある方だ。」

「そんな…。」

 店主真っ青である。


「リリーというメイドを、本当に知らないのだな。」

「いえ、先日辞めていったものです。」

「伯爵令嬢に嘘を言ったのだな。これは父上にも報告せねばならない。今日はこれで帰る。失礼した。」


 子爵家令息がうそを言うはずもなく、また、子爵家にとりなしをお願いしても相手は公爵家と伯爵家だ。やっと大店と呼ばれるようになり、もっともっと大きくしようとした矢先に、なんとしたものか。愚案した店主は、ある侯爵家に繋ぎをお願いした。


「これこれこうなので、アールベアル公爵家とナイシール伯爵家へのお口添えをお願いに上がりました。」

「アールベアル公爵家とナイシール伯爵家だと。頂いた品は返すゆえ、我が家のことは忘れてくれ。取引も中止だ。早急に帰ってくれ。」

 それ以降、この商会は細々と営業するしかなかったとか。

 ヴィアンカも公爵家も、何もしてない。


「子爵令息はグッドタイミングで登場してくれたわね。ちょっとスカッとしたわ。叔父様には報告しなくてもいいわよ。」

「でも、執事さんには報告しますよ。」



 今、リリーは孤児院でシスターのお手伝いと内職や子供達に勉強を教えているらしい。ジャズは数日前に、ばったりリリーと再会した時に、なかなか職が決まらず肩身が狭いと聞いていた。リリーに会いたかったが、寮に帰るのが遅くなるので、ジャズに止められた。それなら

「ねぇ、ジャス。家政婦長のレイラさんにリリーを伯爵家で雇えないか聞いてくれる。やっぱり信用のおける人とか、気心が知れている人って貴重だと思うのよね。」


 リリーが仲間に加わった。

 平民だろうが、孤児だろうが、ナイシール伯爵家に今必要な人は、信頼できる使用人だ。


 リリーも伯爵邸に引っ越すまで公爵家で経験を積むことになった。ジャスとリリーがいると思うと、ちょっと引っ越しが楽しみになった。



 後日、例の商会から、公爵家にお詫びの手紙やら品々が届けられたようだ。執事さんが、

「当家はそんなことで、一庶民の店へ圧をかけることはありません。ご安心ください。ただ今後、そちらの品を購入することはありません、他家に関しては各々の自由です。」

 そう言って、持参した品を受け取らず、手紙も封を切らずに突き返し、早々にお帰りいただいたと、ジャスから報告を受けた。


 私はちょっと仕返しのつもりだったのに、かなりあの商会には痛手だったらしい。

「お嬢、あまいぞ。お嬢はやんごとなき一族だと上位貴族の間では暗黙の認識だろうと公爵様も言っていただろう。そんなお嬢を門前払いをしたんだ。それを子爵家令息に目撃され、あまつさえ侯爵家に助けを求めた。自分で自分の首を絞めたんだ。あのまま大人しく何もしなければよかったものを、情報を集めずに保身に走った結果だ。ただ、今後は自分の影響力を考えてだなあ…。でも、ちょっとスカッとしたけどな。」


 それをオロオロ聞いていたリリーは、

「あの商会の人が全員意地悪だったわけではないんです。優しくしてくれた人もいました。数人ですが。」

 ならその人たちを引き抜こう。私も、一応、商業ギルドに登録している。今後、レシピ等で忙しくなるかもしれないし、商いにたけた人も必要になるかもしれない。それに、貴族との対応も基本はできているだろう。

 家政婦長に相談だ。相談はジャスとリリーにお任せだ。ジャスもリリーも公爵家で修行の身だ、すぐ相談できるからね。



 ある日モントール子爵家令息アンリ様に声をかけられた。あのお店ぶりだ。

「ナイシール伯爵家令嬢ヴィアンカ様。こんにちは。今よろしいですか。」

「はい。こんにちは。モントール子爵家令息アンリ様。この前は失礼いたしました。」

「そのことなのですが、当家の関わりのある商会が申し訳ございませんでした。あの商会との取引は考え直すことにいたしました。」

「令息に謝ってもらうことではありませんし、取引までお辞めになるなんて。なんだか責任を感じてしまいますわ。」

「いえ。あの商会長は嘘をつきました。あの時、ヴィアンカ様はちゃんと護衛を連れ、貴族として来店されていました。貴族に嘘をついたのです。今後、当家も嘘をつかれる可能性がありますので、見逃すことはできませんでした。将来のことを考えれば、父よりご挨拶させていただき、お礼を申し上げるべきなのです。」

「お気持ちは大変ありがたいのですが、現在伯爵家は私一人だけです。未熟者上、令息のご挨拶だけでお願いいたします。」

「ありがとうございます。わかりました。」


「・・・・。ああ、ちょっと緊張した。」

「ちょっとアンリ様。どうして緊張するのよ。私怖くないわよ。」

「知ってる。でも、貴族然としたヴィアンカ嬢は、なかなかお目にかかれないからさ。」

「あなたが貴族然とした会話を始めたんですからね。」

 アンリ様とは、光属性クラス以降、時々話したりして親しくしている。

 二人して苦笑してしまった。


 そして、こんな会話も慣れなければならないんだと、思い知った。

読んで頂いてありがとうございます。

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