12 貴族生活まっしぐら
叔父様によると国王からは、ヴィアンカの更なる保護とナイシール伯爵への伯爵邸の返還だけの通知だったらしいんだけど。
「叔父様、私は学園の図書館で調べてみました。ナイシール伯爵家に関しての情報が少なすぎて、何も分かりませんでした。」
「私も調べてみたが、やはり情報が少ない。ただ歴代の当主はすべて末席とは言え王族だ。さらにあの領の生産物はすべて王宮が買い上げている。毎年一定額でだ。不作豊作に限らずだ。」
「領地の特産品は酪農ですよね。」
「表向きはな。うまく隠されているが小麦とかもある。他にもあるはずなんだが特定できなかった。」
「意図して隠されているのですか。」
「そうだ。ヴィアンカ。この際疑問に思ってる事を言ってみよ。この場のみの話だ。」
見渡せば皆が頷いている。
「私はフローラ様のご実家も調べてみました。フローラ様の叔母様にあたる方が、当時の側妃として王宮に上がられていました。その方はあの政変の折り亡くなっております。そして、フローラ様が養子となられたのは一年後です。フローラ様の生母様は出産時に亡くなられ、すぐに親戚だった伯爵家に引き取られたとなっています。けれどフローラ様はナイシール伯爵邸で育ち、こちらに嫁ぐまで過ごされました。それにコンスティ伯爵家が養女のフローラ様に持参金としてナイシール伯爵位を持たせる事も不思議です。伯爵家が伯爵位を二つ持つことはあるのでしょうか。あったとしても、その一つをご養子にとは考えられません。」
「して、出した答えは。」
「フローラ様は、王女殿下であり、現王の叔母上様ではないかと考えました。そうしたらすべてが納得がいきます。」
「私たちもそう考えている。」
「ヴィアンカ。あなたはこれからが大変になります。」
「おそらく王は君を王族として認めるだろう。それに他の公爵家、侯爵家と一部の伯爵家は気づいているはずだ。フローラ様のご実家も知っているか気づいているかだろう。だから、君に関わらず静観しているのだ。」
「私は先日の夜会で、ある御婦人にあなたのことを尋ねられました。皆さま、どう出るかわかりません。警戒する必要がありますよ。」
「ただ、これは憶測でしかない。陛下に聞くわけもいかないし、王子たちは、ご存知なのかもわからない。」
「どなたか、ご存じの方は?」
「あの方ならご存知かもしれん。」
「あの方は?」
「学院長だよ。あの方は元王族だ。政変には国外にいて、すべて終わってからの帰国となったはずだ。父上が前王の弟だ。クーデターに関わり処刑されたが、学院長はご存じなかったと聞く。彼は幼少の頃から自分の兄たちより現王と仲が良かったらしく、国内にいなかったので咎めなしになったらしい。しかし、本人がそれでは示しがつかないと、王族を離れ王位継承も放棄され、子もつくらぬと独身を貫いているようだ。学院長ならフローラ様のことも覚えているだろう。」
やっぱり学院長はご存じのようだ。聞く機会があるかなあ?でも……。
「でも、これって私は王族に取り込まれる未来しか、思い浮かばないのですけど。」
「そういうことだな。がんばれ。メイド長もジャズも心して遣えるように。」
二人は、神妙な顔でうなずいている。
「それなら、あなたにはマナーも教え直さなければなりませんね。覚悟してください。」
「叔母様、お願いします。」
「ウフフフ。」
叔母様は、たのしそうに笑った。
どんどん自分の意思にもかかわらず、将来が決められることに反発を覚えながら、貴族として、また王族として考えれば仕方がないとは思える。思えるが、元日本人としては、せめて1回ぐらい私の意志を聞いてくれと思ってしまう。
もし王族や貴族としても拒否できるのだったら、と考えたが、答えは死だった。
「君は正式な王族の血を引く者だ。クーデターにより、ほとんどの王族が亡くなった。他にも王族の血を継ぐ者はいるにはいる。だがフローラ様が前王の妹君なら王宮に認められた王族となる。現王もご存じで、アレックス兄上とも親しかったので、いずれ公にするつもりだったんだろうと思う。さらに君は新しい料理や鑑定の真実まで発見してしまった。もはや一市民一貴族にしておくには不可能だ。国に取り込めないとわかれば、他国へ去られるくらいならと暗殺も考えられる。陛下が許しても周りが許さないだろう。だから諦めろ。それに、まだ王族と決まった訳ではないぞ。まあ王族でなくても同じだろうがな。しかし、王族の前に、お前は我が公爵家の一員だ。」
寮に帰る前に、父様とお母様のお墓参りをして、父様に愚痴を言ってから帰ろうと決めた。
明日はクレープ作りだ甘いもの食べて気分一新しよう。
目覚めは良かった。昨夜は眠れないかと思ったがぐっすりだった。強いメンタルでよかった。朝食を軽めに頂いて、いざ厨房へ。
厨房には公爵家の調理長たちの他に、見知らぬ偉そうな人がいた。
「ヴィアンカ様、彼は侯爵家の調理長とその補佐だ。」
シャーロット様の嫁ぎ先の料理長だった。
「よろしく。」
ご挨拶され、レッツクッキング。
日本ではホットケーキミックスで代用していたけど、ここには無いから。まあ、卵をよく泡立てればなんとかなる。できなかったら他を考えよう。まずは卵を泡立てて、小麦粉や砂糖等を混ぜ混ぜして薄く丸く焼く。
「作り方は簡単ですね。」
うまくいくかドキドキだけど、成功してしまった。こんな簡単でいいのと思うが成功したならオッケー。異世界チート万歳だ。
味見程度と思ったけど、公爵家御一同勢ぞろいだ。長男の婚約者や長女の婚約者もいる。厨房の人たちには申し訳ないけど、十枚ぐらいしか焼けなかった。厨房の皆さんは後で作って食べてとお願いした。ああ、調理長二人の分はあるよ。
焼いた生地をお皿に乗せてホイップクリームできれいにデコレーション。ホイップクリーム必然のギザギザは、即席だけど用意した。厚い紙をギザギザして丸めただけだけど、調理長に感激された。あとで金具で作るそうだ。クリームを入れる袋が布なので、イマイチだがこれも料理長が考えてくれるって。
丸投げで本当に助かる。
そのクリームの上に果物やジャムを美しく配置して、見た目きれいにした。本当は生地で包みたかったけど、この世界の貴族はナイフとフォークが基本だから、包まず中身オープンだ。出来具合に満足して、実食だ。
「ほー。これは美しいな。婚姻のディナーにはぴったりだ。」
「ええ、見た目もきれいだし、これなら申し分ないわ。」
「食べるのがもったいないわ。このクリームの模様の綺麗なこと。」
等々、初見のつかみは良好だ。
「では、いただくとしよう。」
全員でいただきます。でも、どう食べていいのか分からないらしい。
「これは、本来なら下の生地に包んで食べるのですが、今日は華やかにデコレーションしてみました。なので生地ごと切り分けて召し上がってください。」
私が最初に食べて見せると、次々と食べ始めた。女性陣は
「美味しい。止まらないわ。」
好評だ。だが、男性陣は
「美味しいが、甘すぎないか。」
「私もちょっと甘すぎるかと。コーヒーや紅茶が進みます。」
「このままは、女性に認められやすいと思います。けど中をサラダ風にしたり、お肉を入れたりしたら、色々と楽しめます。あと砂糖の分量を控えるとか対応はできます。」
「調理長、どう思う。」
侯爵家の調理長は
「初めて見たデザートで、多様な味が楽しめるのは画期的であり、話題になるのは間違いなしでしょう。さらに自領の特産を使って創意工夫もできるので、おめでたい席にぴったりのデザートになります。」
力説していた。
その結果、シャーロット様の晩餐会のメニューに加わった。
クレープは**家風となり広まることになる。さらに公爵家の調理長も
「公爵家の特産を生かし研究します。」
宣言して、それはアールベアル公爵家風クレープとなる。以後、ご当地の**風クレープがお目見えした。レシピは私なのに、すぐに手を離れて、風船のように空に飛んでいってしまった
試食会後、公爵家をおいとました。ジャズの護衛付きだ。ジャスの護衛は久しぶりで、なんだか嬉しい。




