10 二年の魔法実技
魔法の実技の授業の後に授業はない。魔力を使うので回復に努めるようにだ。余裕のある者は好き勝手に過ごしている。私はリーナとテラスでお茶をしながら休憩だ。
「リーナは風魔法よね。どうだった。」
「ひたすら一定の魔力で発動させ続けただけ、ちょっと飽きちゃった。」
「それって自分の魔力量を把握するためじゃないの。リーナはどのくらい続けられたの。」
「一時間ぐらいだけど。」
聞けば大体が一時間程度で魔力が尽きたらしい。中には自分勝手に魔力を込めすぎたり、適当にやり過ごそうとした生徒は明日に居残り授業があるという。
近くにいた他の属性の生徒も
「私たちもそうだったわ。」
全属性以外、同じだったらしい。
「飽きた」とか「何の意味があるの」
疑問だったらしいが、
「それってそういうことなの。」
「あれって大事なことなのね。」
「自分の力量や魔力量の把握ね。真面目に受けてよかったわ。今ならわかるわ。私の限界値。」
私は翌日の居残り授業に参加させてもらった。自分の魔力の把握は大事だよ。そしたら殿下もいた。目が合ったら思わず笑い合っていた。魔法の実技は二日おきに行われる。魔力は一日で大抵が回復するが、稀に二日かかる時があるからだ。私は魔力の回復力は、良い方で一日で全回復する。ジャズに驚かれたからね。
光魔法のクラス担当は教会関係者だった。人数は私と殿下を含め五名だ。少ないけど、二名は教会関係者の生徒だ。他一名は、他にやりたいことがあるのに、光魔法の属性がちょっとあったために受けさせられている男子だ。
光魔法は、それほど貴重なのだ。
彼の得意魔法は無属性。さらに騎士になりたくて、剣の腕も磨いていた。
「無属性の筋肉強化を剣術に活かしたくて、魔法と剣に頑張ろうと思っていたのに。」
嘆いていた。本当に一人ぶつぶつと。
「俺は教会なんかに入りたくない。癒しより剣を振りたいんだ。なんでこうなったんだ。」
彼の名は、モントール子爵家令息アンリ様。
「光魔法は貴重だぞ。それに癒しが行なえる剣士なんて、最高じゃないか。自分で自分の傷が治せるんだぞ。より活躍できるだろう。努力は裏切らないぞ。頑張れ。」
思わず声をかけてしまった殿下だ。私もうんうんとうなずくしかなかった。
教会関係者の生徒は、教会で光魔法を教えてもらっていたようだ。掠り傷とかは難なく直してしまう。それに比べ私と子爵家令息は、ほとんど光魔法を使ったことがない。殿下は時々王城の岸の訓練場へ赴き、怪我人を治療してきたようで、結構スムーズだ。それなのに担当教師は、私たち三人に教えるつもりがないようで、私たちを置き去りにして、どんどん授業を進めていく。殿下が見かねて、
「おい。私たち三人は光魔法をきちんと教えてもらうのは初めてだ。もう少し噛み砕いて教えて欲しい。」
「殿下。お言葉ですが、光魔法はそんな簡単な魔法ではありません。この二人だって、小さい頃から努力して習得したのです。それをちょっと属性があるからと、しゃしゃり出ていただいては困ります。」
さすがにカチッと来たらしい。私もきたけど。
「我々には教えるつもりがないということだな。おい。ヴィアンカ嬢、モントール子息行くぞ。」
私とモントール子息は殿下について行くしかない。慌てて殿下の後を追う。
着いた先は学院長室。コンコンコン。
一応ノックはしたが、返事を待たずに
「学園長。無礼は承知だ。話を聞いてもらおう。」
「何がありました。」
殿下が今起きた担当教師が私たち生徒三人の授業をボイコットをした話をする。ため息の学院長は
「光魔法の実技は教会のたっての願いで、担当教師は教会関係者になったのです。今年は二人の光魔法の生徒が入学するからと。まさか殿下まで蔑ろにするとは思いませんでした。本日は間に合いませんが、次回の実技にはきちんと対処致します。モントール子爵家令息は、光の他に無属性でしたね。申し訳ございませんが、本日は三人で無属性の自習と致します。」
戻った練習場で殿下は、光魔法組をまるっと無視。
王族と教会で仲が悪いのかと疑問に思っていると、モントール子爵家令息が
「教会は、教会の信仰を国教指定してくれない王国に不満を持っているらしいぞ。」
教会って一つじゃないんだ。
「ふん。わが国にはいくつかの神を崇めている団体がある。あ奴らの協会は聖女信仰だ。信仰するのは勝手だが、それを国や人々に強いるのはおかしいだろう。」
いろいろあるらしい。
「無属性の実習って、何をすればいいのでしょう。」
「そうだなあ。何をする。」
男二人は融通が利かなそうだ。
「あのう。私は無属性の魔法って、すぐもう思いつくのはシールドです。けれど、筋肉強化とかいろいろありますよね。不思議だったんですがシールドを張ったまま攻撃でできるんですか。あと、筋肉強化って全身にかけるだけでなく部分的にもかけることもできるんですか。」
「シールドはわかりませんが、筋肉強化は部分的にも可能ですよ。」
「部分的にかけた場合って、全身にかけた場合と効果は違うんですか。」
「それは試したことがないですね。」
「やってみるか。」
三人ともできました。あくまで自分のシールドだけの限定でだ。更に魔力を相当使う。他人のシールでは、剣は通らない。攻撃魔法は危ないので試していない。光魔法は通った。その他に試したかったことや、こう攻撃したら面白いと言い合い、実習は半ば遊びとなってしまった。
アンリ様は身体強化を全身と部分に分けて試してみた。結果は同じだが、部分強化の方が魔力が少なくて済むようだ。状況に応じて使い分ければかなり有効だと喜んでいる。
三人で騒がしくしてしまったらしく、近くの担当の先生が注意に来た。
「どのクラスだ。担当は誰だ。」
「光魔法ですが、担当の先生から教授を拒否されました。今は三人で無属性の自習です。学院長の指示は仰いでいます。」
ちらりと光魔法方面を見る。
「そうですか。事情は分かりました。しかし、何かあってはいけないので、今からは無属性のクラスで一緒に学んでください。」
楽しい自習時間は終わってしまった。
無属性クラスは自分に合った無属性の魔法を探すことが最初の課題だ。無属性が各属性の中で一番魔法の種類が多い。その中から探すのは結構ハードだ。どうするかと思ったら、いろいろな無属性の魔法をどんどん使ってみることだった。私がジャスに教わったのは、シールドとか自分を守るための無属性魔法だ。自分の欲しい魔法なんて聞いてくれなかった。ちょっとジャスに怒っていると、
「ヴィアンカ嬢はどんな魔法が希望なのだ。」
「無属性魔法って他の属性に比べると魔法の種類がいっぱいありますよね。色々試してみたいですけど、どう試したらいいのでしょう。例えば鑑定とか使えたら光魔法にも有効かと思うんですけど。」
「どういうことだ。」
「例えば骨を折ったら光魔法で癒します。でも骨の欠片が体内に残ってしまったらどうなんでしょう。それに傷は治っても、目は目に見えない場所で血管がちぎれていたりとか、神経の道が切断されていたら大変ですよね。誰かが光魔法の前に鑑定をして詳しい状況を把握できれば、より早い回復になると思うんです。光魔法の癒し後に後遺症が残った人とかいないんでしょうか。」
「まれに居るなぁ。そうか複合魔法か。それを二人でか。」
「はい。得意な魔法を協力しあい、より良い結果を出します。あと攻撃面では鑑定ができれば弱点とかわかりますよね。それと薬草とか毒のある食材とか鑑定できれば、安心して食事ができます。食用の可否が分かるだけでも便利かと。」
周りが不思議なくらい静かだ。
「あの~、先生」
「ああ。君の意見は斬新だな。」
だけど鑑定を取得するのが難かなり難しく取得方法もわかっていないことから鑑定を率先して取得するものはごくまれらしい。いてもすべてがわかるわけではなく、人によって鑑定結果が違うらしい。
「先生。鑑定ってどう取得するんですか」
「とりあえず、じっと見ることだと言われている。それでも鑑定は取得の難しい魔法にはいる。鑑定を持つ者に聞いても、一人一人、取得方法はまちまちだ。きっと合う合わないがあるんだろうと思う。私も使える無属性の魔法は多いが鑑定はもっていない。」
「そっか。剣に役立つ魔法しか興味が無かったけど、可能性が広がるんだ。よし。」
なんだかモントール子爵家令息がやる気になっている。殿下は私を見て、呆れたようにため息をついている。私、またやっちゃった?
でも、鑑定っていいよね。元日本人としては鑑定とマジックバッグに憧れてるんだよ。
鑑定はじっと観察か。ちょっと頑張ってみようかな。マジックバッグって今まで見たことがない。ジャズに聞いてみたら、あることはあるが、見たことはないって言ってた。遺跡とかで発掘するとかで、国宝級のものだって。
過去に時間を止められる人とか重力を扱える人もいたけど、それはある魔法に特化した人で魔力量とかもすごかったらしい。伝説になっていて、現在はいないらしい。それでもマジックバッグは作れていない。製造方法もわからない。でもそんな者がいたなら、一生、国のお抱えだって。それは嫌だ。でも、秘密だよって教えてくれた。ジャスって、空間をちょっとだけ拡張できる。けど、魔力が少ないし維持できない。
突如、無属性クラスは観察会が始まってしまったようで、草や木をじっと見つめている。私は先生に質問だ。
「シールドの強化ってどうやるんですか。」
「シールドは、その時の発動者の意識に左右される。例えば、シールドを張る前に魔法攻撃を意識してしまうと物理的な攻撃に弱くなる。その反対もある。ただ自分のシールドの魔力量を超える魔法攻撃には無効になる。剣らの攻撃は、経験で相手の力量を測るしかない。だから初心者は無駄な魔力でシールドを貼ったりする。ヴィアンカ嬢は、魔力量が多い方だから全力でシールドを貼れば、学院の生徒の魔法攻撃なら防げると思うぞ。一対一の場合にだがな。」
「先生。剣に対する私のシールドの弱さを試してみてください。」
先生は剣ではなく、ナイフで実験に付き合ってくれた。先生の全力の突きはシールドが壊れた。全力でシールドを張ったんだけど、
「身体強化した剣等は、威力が向上する。魔法攻撃とはみなさないからな。今のがあなたの全力シールドなら、騎士や上位冒険者の剣は防げない。ただ、まだシールドは強くできそうだ。頑張るんだな。それより鑑定の練習はしないのか。」
「物の観察はいつでもできます。せっかく先生がいらっしゃるんです。先生から学べることを優先致します。」
ハッとなる周囲だ。乾いた笑いをする殿下。
「先生。シールドを強化するのはどうすれば言いのですか。」
自分を守るためのシールドだし、遠慮なく質問した。機会は有効活用しないとね。
こうして二回目の魔法実技授業が終わった。
終了した後も、ほとんどの生徒が一人観察会を行っていた。
ただ、誰も鑑定魔法を取得したとの報はない。
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