第9話:支えていたのは君だったんだ
ダンジョン第五層の守護者を、ついに撃破――
だが、その勝利の裏には、見えない支援と魔法の連携があった。
仲間たちは少しずつ気づき始める。
あのとき、あの一瞬、自分たちはひとりで戦っていたんじゃなかった。
支えていた"誰か"が、ずっとそばにいたことに――
「はぁ……疲れた……」
「もう、今日は無理……何も考えたくない……」
第5層守護者"鉄鎧のグローム"との戦闘を終えた直後。
パーティー全員が、安全地帯の床にバタバタと崩れ落ちた。
トーレスですら、無言で寝転がったまま動かない。
ラクトは剣を放り出して、ひっくり返った。
ミナは弓を抱えたまま、呼吸を整えている。
アキだけは、ひとり焚き火の前に座っていた。
静かに、問いの書を開いて記す。
Q:見せてしまった"力"は、もう隠せない?
A:見せたことは、信頼を築く第一歩になります。
「ChatGPT、みんなの筋肉疲労値と精神緊張の回復速度、計測お願い」
『了解。ラクト:体力回復率36%。ミナ:精神緊張高止まり。トーレス:深層休息中。アキ:魔力使用量78%。回復に48分推定。』
「……OK。じゃあ、軽い回復魔法は展開しても大丈夫そうだね」
アキは周囲に小さな癒しの結界を展開した。
光がふわりと流れ、メンバーたちの体にやさしく染み込んでいく。
ラクトが半分目を閉じながらつぶやいた。
「……なあ……アキって、あんな魔法、最初から使えたのか……?」
「うん。まあ、色々とね」
「隠してた?」
「……というか、見せる機会がなかっただけ」
「ふーん……まあ……ありがとな」
声は小さかった。でも、確かに聞こえた。
*
その夜、寝袋にくるまりながら、ミナが小さくつぶやいた。
「……あの瞬間、矢が届いたの、今でも信じられない」
誰かの補助がなければ、あの精度では当たらなかったはず。
でもアキは、「援護したよ」と言っていた。
――たぶん、ずっと前から、いろんな場面で"支えてくれてた"のだ。
気づかなかった。
いや、気づこうとしてなかったのかもしれない。
「……ありがとね、アキ」
ミナの声は、誰にも聞こえないほど小さくて、でも火の灯りの中で、確かにアキの頬を緩ませた。
「……どういたしまして」
アキはそう返して、空を見上げた。
空には、ダンジョンの天井が、静かに広がっていた。
でも、心の中には――少しだけ、明るい光が差し込んだようだった。
*
翌朝、みんなが起きると、焚き火のそばにパンと干し肉が分けられていた。
「これ……ラクトが?」
「いや? 違う……いや、違わないけど……その、なんとなくな。食える量、ちょっとずつ確保してた」
「へぇ……」
トーレスがパンをかじり、うなずいた。
「悪くない。……うまい」
その日から、少しだけ、言葉が増えた。
少しだけ、視線がやさしくなった。
そして、少しだけ、みんなの中で――"アキ"という存在が、"仲間"として根を張りはじめていた。
支援魔法も、問いの魔法も、気づかれなければ"無名"のまま。
でも、一度でも「ありがとう」と言われたら、それはもう"つながり"になる。
次回、新たな階層、そして新たな冒険へ――
本当のチームとして、パーティーが動き出します!




