環状を睨む番犬 — 会合 —
深夜のパーキングエリアに、鉄と煙草の匂いが滲んでいた。
光の届かない隅々まで、群れの牙たちが息を潜めている。
夜の輪を睨む目が、闇の奥で光っていた。
ブルはEG6のボンネットに腰をかけていた。
冷えた鉄の感触が背を伝い、鼻の奥に潮と古い血の匂いが混じった。
——来る。
遠くで、古びたマフラーの咆哮が裂けた。
腐った残党が、次々に駐車場へ滑り込んでくる。
安いホイール、剥がれかけたステッカー。
みかじめで肥え太った欲望を引き連れて。
冷えた路面で、タイヤが軋む音が夜を削る。
ブルは目だけで数を数えた。
見知った顔。走りで叩き折ったはずの顔。
まだ牙を隠したままの顔——すべてが揃っていた。
笑い声と怒声が、冷たいコンクリに滲んだ。
腐った牙が、吠えた。
「調子に乗りやがって……!」
「てめぇ一人で環状が変わると思うな!」
息巻く声を、ブルは黙って聞き流した。
潮風が鼻を刺す。
親鳥の夜を思い出す。
背中に遠い熱が灯る。
群れの奥から、一人が歩み出た。
背は低いが、纏う空気だけが澱んでいなかった。
目が腐っていない。
ブルはわずかに鼻を擦った。
——お前か。
「……久しぶりだな。ブル。」
声が低く割れた瞬間、残党のざわめきが遠巻きに止んだ。
「このまま腐ったままじゃ……笑われるだけだ。」
男は一歩、前に出た。
残党の群れの中で、ただ一人背筋を伸ばして立つ。
その空気に、腐った牙たちの息がわずかに揺れた。
かつて、走りだけを求めて環状に入った男だった。
鉄と夜に真摯で、狂気のように環状を攻めた。
ブルも走りを認めていた。
だが蛇の毒を浴び、欲望に牙を曇らせた。
それでも——
まだ、獣の芯は消えていなかった。
男の瞳が、夜の光を宿した。
「次の総長は……走りで決める。」
ブルは小さく息を吐いた。
鼻の奥に滲む鉄の匂いが、喉を焦がす。
静かに笑った。
「……いいだろう。」
ボンネットから腰を下ろすと、足元の夜露が弾けた。
「速さを欲しがって集まった獣だ……輪の上で決めてやる。」
風が抜けた。
無数のマフラーが小さく唸った。
——牙を剥いた獣だけが、環状に残る。
それだけのことだった。
夜がまた、回り出す




