環状を睨む番犬 — 変化 —
それからも、残党を狩り続けた。
腐った牙は、ある夜を境に、ふっと姿を消した。
いつもなら遠くで漂っていた安い煙草と鉄の腐臭が、潮風にかき消されていた。
だが、ブルの鼻の奥には、消えたはずの匂いがかすかに残っていた。
底で燻ぶる、腐った煙。
——消えちゃいねぇな。
走りは楽になった。
誰も邪魔をしない。
アクセルを踏めば、ただ速さだけが夜を駆けた。
だが、それが逆に喉の奥に引っかかった。
あいつらが、そう簡単に環状を明け渡すはずがない。
どこかで、牙を揃えている。
夜のどこかで、まだ歯を研いでいる。
だからこそ、奴らは輪から姿を消した。
ブルはコンビニの駐車場に腰を下ろし、冷えた缶コーヒーを握った。
鼻先に残る鉄とオイルの匂いを確かめる。
仲間が一人、何も言わずに隣に腰を下ろした。
誰も言葉はかけない。
だが、全員分かっていた。
奴らはまだ、どこかにいる。
ブルは鼻を擦り、立ち上がった。
空き缶を足元に置く。
「……集めるぞ。」
誰にでもなく、夜に落とした声。
その声に応えるように、誰かが頷く音がした。
キーをひねる乾いた音が遠くに滲んだ。
「信用できるやつだけだ。腐った群れを噛み砕くために、もう一度ここで足並みを揃える。」
冷えた空気が微かに動いた。
潮風に混ざって、環状に小さな火が灯る。
決起の噂が、夜に染み込んでいった。
この輪を腐らせないために。
潜んだ牙を、まとめて引きずり出すために。




