環状に舞う狩人 — 狩りの輪 —
蛇は路肩に逃げ込んだ。
足を引きずるように、銀のS14は暗い隅へ溶けた。
足回りが潰れ、タイヤはわずかに内に食い込んでいる。
親鳥は止まらなかった。
ミラーの奥で蛇の影が小さくなると、ライトを落とし、MR-Sは輪に戻った。
翌週、蛇はまた出てきた。
古びた足を繕い、同じ牙を環状に浮かべた。
だが、親鳥は待っていた。
数百メートル後ろの影。
油の匂いと鉄の手で仕上げられたMR-Sが、銀の牙をなぞる。
テールを揺らす蛇。
事故を誘う。
だが親鳥はもう、一拍も遅れなかった。
一度、背を裂く。
二度、ラインを潰す。
三度目には蛇は自分で路肩へ逃げる。
蛇の足は、直しても直しても折れた。
何度も繰り返すうちに、親鳥の走りは冴えた。
昼に仕込んだライン。
峠で磨いた勘。
群れの牙が、親鳥の翼をまた一つ強くする。
——ピヨ、お前はこんな景色を見ていたのか。
ミラーの奥で、小さな羽が鳴く。
蛇はまた出てくる。
無理に直した足で。
違うライン、違う夜、違う仲間を連れて。
だが結果は同じだった。
親鳥は抜かない。
背を喰い、足を折り、心を削る。
蛇が群れごと消えるまで。
群れの仲間は黙って見届けた。
工具を握る手、缶コーヒー、吐き出す煙草。
「今日も折ったか。」
「折った。」
ただそれだけ。
輪は静かに染まっていく。
蛇の毒が抜け、親鳥の爪跡が環状に刻まれていく。
夜の奥に、まだ止まらないブローオフの音が響いた。
——輪の奥で、狩りはまだ終わらない。




