環状に舞う狩人 — 鷹の爪 —
アルトは走った。
潰れた足回りを古豪が繕い、痛むリアを引きずりながらも環状を降りなかった。
金は払わない。
「獲物はまだここにいる」と蛇に思わせるためだ。
ミラーに、銀のS14が滲むのは思ったより早かった。
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「来たな……」
深夜の輪。
照明に銀の牙が浮かぶ。
蛇はテールを揺らし、ふわりと間合いを詰める。
事故を誘う。前と同じやり口だ。
だが今度は違う。
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親鳥は数百メートル後ろで息を潜めていた。
環状仕様のMR-S。
タイトな峠脚を捨て、足を固め直し、直進の伸びを詰めた。
数週間、昼の輪で体に叩き込んだ走り。
ドアポケットの煙草が燻ぶる。
——来い。
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蛇がアルトの鼻先を潰す。
アルトが軽くブレーキを踏む。
その瞬間、親鳥はギアを落とした。
排気が低く吠える。
夜が裂ける。
蛇のミラーに、鋼の影が滲んだ。
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「……誰だ?」
蛇のラインが乱れる。
親鳥はすぐ背を詰める。
煽らない。横に並ばない。ただ張り付く。
ブローオフを吐くたびに、蛇の尻に爪を立てる。
蛇は右へ振る。親鳥は一拍遅れてなぞる。
蛇が事故を誘って減速する。
親鳥の目は読んでいた。
ピヨのカプチーノが脳裏に重なる。
——負けない。
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親鳥は背を押す。
開くラインに鼻先をねじ込む。
しかし抜かない。
ただ喰らいつく。
背に爪を立てたまま、コーナーに飛び込む。
タイヤが環状を削る。
蛇が焦る。
親鳥は吐息を落とす。
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コーナーを抜けた直線。
蛇は踏む。
親鳥も踏む。
排気が、ピヨの羽音になる。
——喰うのは、俺だ。
蛇のラインが乱れた瞬間、親鳥は横に並んだ。
ミラーの奥で蛇の目が凍る。
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「次は……貴様が喰われる番だ。」
MR-Sの爪が、蛇のテールを裂いた。
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