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第99話 告白(その弐)

 『竜の仮面の魔導士』がマルグリットだったこと。

 彼女がセシリアとアランを罠にはめ、身に覚えのない罪を着せようとしたこと。

 それらを私がレオンに伝えてから、しばらく経った。


 もちろん、この情報によって新たな捜査が必要となり、騎士団は大忙し。レオンの足も(うち)から遠のいていた。

 その間、私は考える。


 私はどうするべきか――と。


 そして、久しぶりにレオンが店を訪れたとき、私は覚悟を決めたのだった。



 閉店後、店の奥の部屋で私はレオンと二人きりになる。

 レオンから捜査の進捗状況を教えてもらい、それが終わると、何とも気まずい空気が流れた。

 私もレオンも、互いに言いたいことが中々言い出せずにいるような雰囲気である。


――このままじゃ、(らち)が明かない。よしっ!


 私は腹をくくって、口を開いた。


「あの、レオン様」「あの、ジャンヌ」


 見事に声が重なってしまう。なんて間の悪い。


「……レオン様からどうぞ」

「……いや、ジャンヌから」


 そんな譲り合いまで発展し、私はますます居たたまれない気持ちになった。

 ただ、ありがたいことに、「じゃあ、俺から」とレオンの方から話を切り出してくれる。


「前にも言おうとして、結局言い出せなかったことなんだが……個人的にどうしてもジャンヌに確かめたいことがあって」

「はい、何でしょう?」

「その……前に俺が――君に告白したことがあっただろう?かなり、どさくさに紛れたものに、なってしまったけれど…」

「ああ!」


 私はポンと手のひらを打つ。

 そして、思った。渡りに船だ、と


「それで君が俺のことをどう思っているか……その、聞きたくて……」

「あ、はい。私もレオン様が好きです」

「別に返事を急かすわけじゃないんだが……って、え?」

「実は私もその件をハッキリさせたかったんです。ちょうど良かった」

「……」


 言いたいことが言えて、私はスッキリする。

 しかし、レオンの方はなぜか固まっていた。


「レオン様?」


 彼の目の前で手を振って見せる――が、反応がない。

 目を開けたまま眠ってしまったような塩梅(あんばい)で、彼は微動だにしなかった。


「えっと……」


 私は戸惑う。

 こういう場合、どういう対応をすればいいのだろうか……と、考えあぐねていたとき、突如レオンが動き出した。

 私は彼に腕を掴まれる。


「ちょっと、待て!今、君なんて言った?俺のことをス…」

「好き、と言いました」

「えっ、えっと……えぇっ!?」

「いや、何もそこまで驚かなくても……」


 というか、最近のレオンへの態度で、私の気持ちはおおよそバレていたと思うのだが……。


「ジャンヌ!君はちゃんと()()()()意味合いで、そう言ってくれているんだよね?まさか、ここで()()としての好きだなんて言われたら、俺は立ち直れないぞ!」

「えっ、そこまで疑いますか?」


 わざわざ、そこまで言わないといけないのだろうか。 

 なんだ、ソレ。面倒くさい。


「だって、君があまりにもアッサリ言うから!!」

「なるほど。つまり、レオン様は私の告白のやり方がご不満だった……と」

「いや、そういうわけでは……」


 ダメ出しを食らった気分で、私はがっくりとなる。


 しかし、どう告白すれば良かったのだろう。

 お芝居のような雰囲気を作り出す必要があったのだろうか。

 私はもっと可愛らしく装うべきだったのか?

 頬を赤らめ、体を震わせ、目に涙を溜めて……もっと必死な感じで――?


 いや、無理だ。私は女優じゃない。


「そんな高度なことを求められても困ります。私、誰かを好きになったのはレオン様が初めてなんですから……」


 恋愛経験値ゼロの女にそこまで要求するな。

 そういった抗議の想いで、レオンを恨みがましく見る――と、なぜか彼は顔を真っ赤にし、口元を手で押さえていた。


「レオン様?」

「君は最高だ……」

「はぁ?」


 どうやら何かがレオンの琴線に触れたようだ。

 その琴線がいったいどこにあったのか、私には全く分からなかった。




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