第99話 告白(その弐)
『竜の仮面の魔導士』がマルグリットだったこと。
彼女がセシリアとアランを罠にはめ、身に覚えのない罪を着せようとしたこと。
それらを私がレオンに伝えてから、しばらく経った。
もちろん、この情報によって新たな捜査が必要となり、騎士団は大忙し。レオンの足も店から遠のいていた。
その間、私は考える。
私はどうするべきか――と。
そして、久しぶりにレオンが店を訪れたとき、私は覚悟を決めたのだった。
*
閉店後、店の奥の部屋で私はレオンと二人きりになる。
レオンから捜査の進捗状況を教えてもらい、それが終わると、何とも気まずい空気が流れた。
私もレオンも、互いに言いたいことが中々言い出せずにいるような雰囲気である。
――このままじゃ、埒が明かない。よしっ!
私は腹をくくって、口を開いた。
「あの、レオン様」「あの、ジャンヌ」
見事に声が重なってしまう。なんて間の悪い。
「……レオン様からどうぞ」
「……いや、ジャンヌから」
そんな譲り合いまで発展し、私はますます居たたまれない気持ちになった。
ただ、ありがたいことに、「じゃあ、俺から」とレオンの方から話を切り出してくれる。
「前にも言おうとして、結局言い出せなかったことなんだが……個人的にどうしてもジャンヌに確かめたいことがあって」
「はい、何でしょう?」
「その……前に俺が――君に告白したことがあっただろう?かなり、どさくさに紛れたものに、なってしまったけれど…」
「ああ!」
私はポンと手のひらを打つ。
そして、思った。渡りに船だ、と
「それで君が俺のことをどう思っているか……その、聞きたくて……」
「あ、はい。私もレオン様が好きです」
「別に返事を急かすわけじゃないんだが……って、え?」
「実は私もその件をハッキリさせたかったんです。ちょうど良かった」
「……」
言いたいことが言えて、私はスッキリする。
しかし、レオンの方はなぜか固まっていた。
「レオン様?」
彼の目の前で手を振って見せる――が、反応がない。
目を開けたまま眠ってしまったような塩梅で、彼は微動だにしなかった。
「えっと……」
私は戸惑う。
こういう場合、どういう対応をすればいいのだろうか……と、考えあぐねていたとき、突如レオンが動き出した。
私は彼に腕を掴まれる。
「ちょっと、待て!今、君なんて言った?俺のことをス…」
「好き、と言いました」
「えっ、えっと……えぇっ!?」
「いや、何もそこまで驚かなくても……」
というか、最近のレオンへの態度で、私の気持ちはおおよそバレていたと思うのだが……。
「ジャンヌ!君はちゃんと恋愛的な意味合いで、そう言ってくれているんだよね?まさか、ここで友人としての好きだなんて言われたら、俺は立ち直れないぞ!」
「えっ、そこまで疑いますか?」
わざわざ、そこまで言わないといけないのだろうか。
なんだ、ソレ。面倒くさい。
「だって、君があまりにもアッサリ言うから!!」
「なるほど。つまり、レオン様は私の告白のやり方がご不満だった……と」
「いや、そういうわけでは……」
ダメ出しを食らった気分で、私はがっくりとなる。
しかし、どう告白すれば良かったのだろう。
お芝居のような雰囲気を作り出す必要があったのだろうか。
私はもっと可愛らしく装うべきだったのか?
頬を赤らめ、体を震わせ、目に涙を溜めて……もっと必死な感じで――?
いや、無理だ。私は女優じゃない。
「そんな高度なことを求められても困ります。私、誰かを好きになったのはレオン様が初めてなんですから……」
恋愛経験値ゼロの女にそこまで要求するな。
そういった抗議の想いで、レオンを恨みがましく見る――と、なぜか彼は顔を真っ赤にし、口元を手で押さえていた。
「レオン様?」
「君は最高だ……」
「はぁ?」
どうやら何かがレオンの琴線に触れたようだ。
その琴線がいったいどこにあったのか、私には全く分からなかった。




