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第95話 真相(その弐)

 いったい、何に()()()()()を覚えているのだろうか。

 私は自分の考えを一度、整理してみようとする。

 そのとき、ふとアランがうちの店に「お金を貸してくれ」とやって来たことを思い出した。


 アランの催促は二回あった。


 一度目は……そう、セシリアが騎士団に入団する前の話だ。

 では、二度目は?

 二度目はセシリアが入団して以降で……。アレは『眠り姫』の店の事件の後ではなかったか?


 『眠り姫』の店の件は、『魅了の香』が明るみに出た最初の事件である。

 これが一連の事件の()()だった。

 友人が怪しい魔法で洗脳されていると、危惧したララが、私に潜入調査を頼んで来たのが始まりだ。


 そうだ、そう。

 あの事件の後、アランの二度目の訪問があったのだ。

 シモンを雇った後のことだから間違いない。そのシモンがアランを追い返してくれたのだ。


 私は己の記憶の時系列を整理し、そして首をひねる。


――でも、ソレっておかしくない?


 『眠り姫』の店の事件当時、すでに『魅了の香』は完成していた。

 『竜の仮面の魔導士』は『魅了の香』を売って金銭を得ていた。レオンの話では、そのお金はアランの事業失敗を補填(ほてん)するため、使われたらしい。


 つまり、自らの借金を返済する当てがすでにあった状態で、アランはわざわざ私の所へ「金を貸してくれ」とやって来たことになる。

 一度目の訪問の際、問答無用で母に叩きだされ、アランも私たちからお金を借りるのは難しいと分かっていたはずだ。

 そんな状況で、他にお金の当てが見込めるにもかかわらず、わざわざ二度目の訪問をするだろうか。




 私が黙って考え込んでいると、おずおずとレオンが声をかけてきた。


「事件のことは、とりあえずここまで。ジャンヌ、個人的に君に確かめたいことがあるんだが……」

「……はい」


 考え事で頭がいっぱいだった私は、思わず生返事をする。


「その……俺が以前、君の店に行ったときのことを覚えているかな?」

「……以前?」

「マリアのことを君に頼むと、お願いした時のことだ。えっと……俺が……君に告……」


 心ここにあらずの状態だった私だが、妙に奥歯に物が挟まった言い方をするレオンをさすがに不審に思う。

 私は彼をジッと見た。


 図らずしも、レオンと見つめ合う形になったとき、私の脳裏に(よぎ)ったのは、レオン自身が被害者になってしまった事件である。


 ダニエルと言う騎士団の元団員が、私を人質にとってレオンをおびき寄せたことがあった。しかし、その人質は真っ赤な偽者。ダニエルの仲間が魔法薬で私に化けていたらしい。


 この魔法薬について聞いたとき、私は幻術系の(たぐい)だと思い込んでいた。なぜなら現代魔法では、人体の構造を作り変えるような、真なる変身薬はまだ開発されていないからだ。

 その代替手段として、幻術系の魔法が使われる――と、確かアニーにも説明したことがあったっけ。あれは、私が『眠り姫』の店に潜入しようとしたときの話だったか……。


 そこまで考えて、私はとある()()に気付く。

 それはレオンに関してのこと、だ。


 レオンは洗脳や幻術といった精神に作用する魔法への耐性が常人よりもはるかに高い。そんな彼が、果たして幻を見たのだろうか?


――じゃあ、偽物が使っていたのは幻術じゃない、()()()()()での変身薬?でも、そんなものを作れる人間がどこに……。


 「あっ」と私は口に出す。


 一人だけ、思い当たる人物がいた。

 それは、現代魔法よりも高度な古代魔法を(たく)みに操る魔導士の存在だ。


――もしかして、あの人質事件にも『竜の仮面の魔導士』が関わっていた?


 自分の思い付きに、私の心拍数は跳ね上がる。

 一方で、あの件に例の魔導士が一枚噛んでいるのだとしたら、「らしくない」とも私は考えた。


 そもそもレオンがダニエルの要求に応じたのは、当時私の所在が分からなかったからだ。私がどこにいるか不明で、本当にダニエルにさらわれた可能性があったからこそ、レオンは犯人の指示通りに単身で敵地に乗り込んだのである。


 裏を返せば、私の居所が分かっていた場合、ダニエルの計画は成り立たなかった。

 当時はタイミングが悪かったと考えていたが、『竜の仮面の魔導士』が関わっていたのだとしたら、あの魔導士がそんな運頼りなことをするだろうか?


――(あらかじ)め私の行動を知っていた?私が街にいないと分かって、そのタイミングでダニエルに仕掛けさせた?


 ドクン、ドクン――私の心臓が激しく音を立てる。

 あの時、私は街を出て東の森に出かけていた。

 それはある人物にそう誘われたからで……。



「――ンヌ、ジャンヌ!」

「レオン様……」

「どうした?突然、ぼうっとして。って、君!顔が真っ青だぞ!?」


 私の顔色を見て、レオンが驚きの声を上げる。

 どうしよう。嫌な考えが頭にこびりついて、離れない。


 冷たい汗が頬を伝った。




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