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ミネツタックは水の国だ。
国の中央には広大な湖があり、そこから流れる川は交通の要となっている。
今ロゼは父と伯母と共に、生まれ育った屋敷を出て馬車と船で移動している。馬車に乗ったことはあれど、船を使うほどの遠出は初めてで、流れていく景色をみるのは楽しい。
だけれど、その心中は複雑だ。物心つく前から共に過ごした使用人も、いつも頼りにしていた兄も、もう数える程しか会えなくなるのだ。郷愁の想いは消しようがない。
「アルケリーはたまに都に呼んでいたが、ロゼは初めてだね。」
父の声に勢いよく振り向く。
「えぇ、お父様。私が体調を崩してしまうと、旅程まで崩れてしまうのですもの。無理に伺おうとは思えませんでした。」
「評判の良い医者を手配しているわ。この道行も、具合が悪くなったらすぐに言うのですよ。」
「まぁ。ご配慮に感謝します、伯母様。」
指先まで丁寧に、指先までコントロールされたお辞儀をする。ツユリリーはその仕草に満足気に頷くのだった。
そうして、1日かけてようやくソルベリーヌ邸に着いたロゼは、それだけでくたくたに疲れていた。
「「お帰りなさいませ、旦那様」」
「皆、今日から世話をかけるロゼだ。」
「どうぞよろしくお願い致します」
人間、最初の印象が肝心だとロゼはきちんと心得ている。疲れを見せない笑顔と礼で、館に勤める使用人から好感を得ることが出来、父も伯母も満足気だった。




