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応接室に入り、お茶等歓待の準備を終えると、玄関ホールで待機する事にした。

お出迎えとご挨拶をしなければならなくて、今から緊張してしまう。

「お嬢様、よろしければ控えの間でお茶でもいかがですか?」

アイビーの言葉に、お兄様の顔を窺うと、笑顔と頷きが返ってくる。

「お願いするわ、アイビー。」

にこりと微笑んで、アイビーが下がる。

お兄様と控えの間に移動する。...なんだか、やっぱり緊張してしまうわ。

「ねぇ、お兄様。お兄様は、お父様にお会いしたことがあるのでしょう?どのようなお方なの?」

「そうだな。父上は政に厳しい反面、家族には優しい方だ。」

「私にも優しくしてくださるかしら。」

「大丈夫。父上は、事情があってここに来られないだけで、ロゼのことも大事にしてくれているよ。」

お兄様の言葉にほっとする。

アイビー淹れてくれたお茶を飲んで少し落ち着いた頃。

「旦那様が乗られた馬車がまもなくご到着です。」


玄関ホールから外に出て、もう遠くに見えている馬車を迎える。

領主の到着ということで、使用人も総出でお出迎えだ。

「「おかえりないませ、旦那様。ようこそおいでくださいましたツユリリー様。」」

ツユリリー様とは伯母様のことだ。


馬車から壮年の男性が降り、その男性にエスコートされて女性が降りてくる。お二人がこちらを向く。

「ご無沙汰しています、父上。お初にお目にかかります、ツユリリー様、アルケリーと申します。」

「お初にお目にかかります。ロゼと申します。」

兄に続いて出来るだけ優雅に、丁寧にドレスを持ち上げお辞儀をする。

「私はツユリリー・ソルマリーヌ。これからよろしくね。」

思いの外優しい声音に驚いて、顔を上げる。

柔らかな笑顔を浮かべる、貴婦人の鑑のような方だ。...少しも気を抜いてはならない方だわ。

「よろしくお願い致します、ツユリリー様。」

「久しいな、アルケリー。そしてはじめまして、ロゼ。」

柔らかな声に視線を向けると、男性が穏やかな顔をしている。そっとお兄様が私の背を押す。

「あの、お父様とお呼びしてよろしいでしょうか。」

ドクドクと心臓が鳴る音がする。

「勿論だ。ロゼは、アインベリー...、お前の母親に、よく似ている。」

懐かしそうに目を細めるお父様に、私の存在を受け入れて頂けたと安堵する。

「お父様、ツユリリー様、歓待の準備は整っております。ご案内致しますわ。」


今回は私が主催者の立場になるので、私、お兄様、お父様、ツユリリー様の順で応接室に向かう。

その道中、ビシビシと視線を感じる。一挙手一投足を見定められているような、テストの日の教師からの目線よりもっと厳しい視線だ。

応接室に着き、使用人に合図してお茶の準備をさせる。

「ツユリリー様、こちらのお席にお掛けくださいませ。」

「その前に、ロゼ。アルケリーも。わたくしの事は伯母と呼ぶようになさい。社交界で他人行儀な関係を見せる事はできませんからね。」

思わず目を瞬かせてしまった。ツユリリー様から見たら、確かに姪で間違いないけれど...。

「私が、本当に、伯母様とお呼びしてよろしいのでしょうか。」

使用人たちも、お父様やお兄様も驚いている。

「えぇ、構わないわ。あなたの立ち振る舞いはとても上品だし、ノルバルトの娘としてデビューするのだから、わたくしのことも伯母と呼んで貰わねばならないわ。わたくしの矜持と、ミネツタックの事情が釣り合わない、という現実的な問題もあるわ。」

その辺りはお茶を頂きながら話しましょうか。

その伯母様の言葉で、使用人が一斉に動き出した。

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